2025 Dirt Triple Crown
2024.10.2 門別1,800mサンライズカップ(H1)【1着馬】雲取賞or京浜盃 指定競走

2023年優勝馬 パッションクライ号
2歳&3歳ダート体系図

サンライズカップとは
JBC競走の前哨戦に位置するH1重賞「サンライズカップ」。
「JBC2歳優駿(JpnIII)」と同じ「門別1,800m」で行われることもあり、JBCを見据えた若駒の参戦が期待できそうだ。
また、本競走には翌年の南関東クラシック戦線をにぎわす素質馬が多く参戦している。
近年ではヒガシウィルウィンの南関東二冠、ヤマノファイト、タービランスの「羽田盃(旧SI)」制覇が代表的なところ。
2024年より3歳ダート三冠路線が整備されたこともあり、全国統一を狙う有力馬たちにとっても非常に重要な意味を持つレース。
三冠初戦「羽田盃(JpnI)」のトライアルレースでもある「雲取賞(JpnIII)」及び「京浜盃(JpnII)」の指定競走となっており、
1着馬は「雲取賞」または「京浜盃」の出走馬選定にあたり、その成績を重視される。
今年はどの馬が勝ち名乗りを挙げて羽ばたいていくのか!?
ホッカイドウ競馬を代表する2歳馬たちによる見応えのあるレースに是非ご注目頂きたい。
予想<競馬ブック・板垣祐介>
◎ソルジャーフィルド
ベストパフォーマンスは2走前のウィナーズチャレンジ3競走。
1,700m1分49秒9という走破タイムは、その時点で例年の重賞水準を優に超えるものだった。
デビュー時から特長として見えているのが、追われての反応の良さ≒瞬発力である。
もともと長い距離での活躍を見込まれながら、あえて短距離を連戦して勝ち上がり、
適度な間隔でレース数を積むことで、その特長を磨き、競馬を覚えさせてきた。
ここへのステップであるブリーダーズゴールドジュニアカップは2着に敗れたが、
逃げたリコースパローがイーブンラップを刻み、4角過ぎまで引っ張る淀みないペースの中で、十分にタメを作り切れなかった感がある。
2走前は、3角からレースラップが自然減速し始めたことで楽に動き出せたわけだが、これがオープンと重賞のペースの違いと言えよう。
ただ、戦績からもわかるように学習能力の高い馬であり、これを経験できたことは大きい。
タメを作るという点において、距離が100m延びるのも好材料だろう。
もちろん今回の結果次第ではあるが、JBC2歳優駿でも本命にしたいと思っている。
◯リコースパロー
とにかく筋肉量が豊富な馬で、ともすれば少し重く見えるような、
まだ幼さの残る体型だが、ポテンシャルの底知れなさは随一と言ってもいい。
ブリーダーズゴールドジュニアカップ勝利を含めたこれまでの3戦3勝はいずれも、
能力だけで押し切っている内容で、基礎体力とスピードの絶対値は近年でもトップレベルだ。
ソルジャーとは対照的に、出走レースを絞ったローテーションで使われているわけだが、
その点、砂をかぶる経験や、周りに馬がいる形で運ぶレースはまだしたことがない。
激しい展開になりがちな本番を見据える上で、今回でそういった課題をクリアできれば理想だろう。
ただ、最内枠を引いたことを考えると、ここも自分でペースを作る形になるかもしれない。
何にせよ、4連勝でここも突破するようなら、JBC2歳優駿はもちろんのこと、来年のダート三冠競走への視界も一気に開けてくる。
△ナンパセン、エイシンキャプテン、カセノタイガー
まだ心身とも成長途上の2歳馬にとって、不意なパフォーマンス低下はつきものだ。
それは承知の上だが、重賞実績やタイムレベルなどを総合すると、上位馬2頭は少し抜けた存在だろう。
あえて単穴評価は置かなかった。
相手候補として3頭名前を挙げたが、なかでもナンパセンは、着実にキャリアが身になっていることがわかる1頭だ。
デビュー2戦目の1,700m戦ではソルジャーフィルドに大差をつけられて敗れているが、
その後短距離に切り替えて力をつけ、再び距離を延ばした前走のオープン戦Vで、改めて距離適性を示した。
タイム短縮は課題だが、今ならソルジャーとの差ももう少し詰まるだろう。
エイシンキャプテンは、コスモス賞への遠征も含めたこれまでの4戦で、一度も3着を外しておらず、先行して渋太い走りが魅力的だ。
3走前にはソルジャーと0秒2差の2着もある。
難なく自分のポジションは取れそうなメンバー構成で、狙いは立つ。
カセノタイガーは今回が初の1,700m戦となる。
距離実績は重要なファクターだけに、その点の割引は必要だが、短距離戦でいつも後手に回りながら、末脚不発はない。
距離延長で良さが引き出される可能性もありそうである。
有力馬紹介
●リコースパロー
父シニスターミニスター
母リコーデリンジャー(母父スウェプトオーヴァーボード)
通算成績:3戦3勝
5月のデビュー戦「フレッシュチャレンジ競走」を8馬身差で完勝。
距離延長も苦にしておらず、門別1,700mの「ブリーダーズゴールドジュニアカップ(H2)」を制して3戦全勝としている。
ゲートを出てからの二の足が速く、自分のポジションを取れるスピードが魅力。
能力検査を含めて実戦形式では砂を被った経験がなく、サンライズカップは1枠1番からの出方にも注目だろう。
シニスターミニスター産駒というのも魅力があり、JBC2歳優駿を占う意味でも重要な一戦となることは間違いない。
●ソルジャーフィルド
父ルヴァンスレーヴ
母アイルゴーバック(母父アッミラーレ)
通算成績:5戦3勝
デビュー戦から全て控える競馬ながら連対率100%の安定感。
2着に敗れた2戦はデビュー戦とブリーダーズゴールドジュニアカップだが、ともに逃げ切りを許した形だ。
前に付けるスピードは見せていない反面、後方から競馬が出来るあたり、競馬に幅を感じる1頭。
リコースパローとは同厩舎となるが、タイプの違う2頭がどのような競馬を見せるのか楽しみは尽きないところ。
初年度産駒のルヴァンスレーヴから大物候補の誕生となるだろうか。
●エイシンキャプテン
父カレンブラックヒル
母アゼナーマ(母父Pivotal)
通算成績:4戦1勝
デビュー戦を6馬身差で勝利した素質馬。
距離を延ばしてからも力を見せており、1,700mの「パール特別(OP)」ではソルジャーフィルドから0.2秒差の2着に好走している。
その実力はJRAの「コスモス賞(芝・OP)」3着でも証明済みだ。
●ナンパセン
父アドミラブル
母キーチケット(母父ダンカーク)
通算成績:5戦3勝
1,700mの「サードニクス特別(OP)」を快勝。
同距離はパール特別で大きく負けていたが、距離2度目で見事に巻き返してきた。
通算3勝はリコースパロー、ソルジャーフィルドと同じくメンバー最多タイとなる。
参考レース
-
- 6/19
- 門別
- 1,200m
- 栄冠賞(H2)
- ベラジオゼロ
-
- 8/22
- 門別
- 1,700m
- ブリーダーズゴールドジュニアカップ(H2)
- リコースパロー
レース回顧<競馬ブック・板垣祐介>
サンライズカップの第一のテーマは、JBC2歳優駿の前哨戦として、地元馬の勢力図を明らかにすることにある。
ブリーダーズゴールドジュニアカップを終えた段階で、
その上位3頭であるリコースパロー・ソルジャーフィルド・ベラジオゼロが、この路線の中核を形成していた。
ベラジオゼロの戦線離脱で、様相は“2強”となったわけだが、結果から言えば、今回を終えて、その構図はより確固たるものになった。
3番手評価の裾野は広いものの、地元勢の勢力図はほぼ固まったことになる。
この重賞のもうひとつのテーマは、そうして定まった地元のトップランカーが、JRA勢に対抗しうるレベルであるかを推測することだ。
レースを振り返りながら、これを進めていこう。
確たる逃げ馬不在のメンバー構成のなか、積極的にハナを切ったのはエイシンキャプテンだった。
前半3ハロンは38秒程度で、1,000m通過は64秒3。
ペースはやや遅めだが淀みはなく、ほぼ13秒のイーブンラップで流れた。
これまでのレースで砂を被る経験をしたことがないリコースパローにとって、
1番枠はひとつの試練であり、本番を意識する意味でも、できればハナに行かずにどう立ち回るかがポイントだった。
レース後のインタビューで、鞍上の落合騎手も「今回の勝負の決め手」として挙げていたが、ハイライトは1コーナーの入りである。
やや掛かりながら1コーナーへ向かっていったところを、外から先頭へ出ていったエイシンの外に切り替えて、2番手につけた途端にピタッと折り合った。
1番枠の試練はここで見事にクリアしたことになる。
その後はエイシンキャプテンの1馬身後ろをリズム良く追走し、
後ろからソルジャーフィルドが並びかけてきた直線入り口で、これを突き放すように先頭に立ち押し切った。
イーブンラップの継続性を遺憾なく発揮した内容で、今日は着差以上の完勝といってもいいだろう。
管理する川島洋人調教師はこの馬について、
とにかく競馬が上手だということ、また、並ばれてから抜かせない強さを特長として挙げていたが、
類まれな競馬センスと、高い心肺機能に裏打ちされた勝負根性、これがはっきりと見えたレースだった。

リコースパロー&落合騎手(提供:山口写真工房)
本番ではもう少し速い決着タイムが想定されるが、まだ負けなしの4連勝であり、タイムを詰める余地は十分にある。
課題があるとすれば、内に押し込められるような形になった場合だろうか。
ただ、スタートの速い馬で、すぐにポジションを取りに行けることはその点で強みになる。
フォーエバーヤング級が参戦するとなると話は別だが、例年レベルであればJRA勢と互角に渡り合えるはずだ。

リコースパロー(提供:山口写真工房)
ソルジャーフィルドは、ブリーダーズゴールドジュニアカップに続き、
僚馬でありライバルのリコースパローにまたもや届かなかった。奇しくも、当時と同じ0秒3差である。
その前走では、スタート後の位置取りが後方になってしまったことで、早めに押し上げる形を取らざるを得なかった。
それを踏まえて、今回は1コーナーまでに中団前の位置を取り、そこで脚をタメて運んだ。
前半はやや力み加減だったものの、3~4コーナーで一瞬のうちにリコースパローへ並びかけた瞬発力には、十分な見どころがあった。
テン乗りだった鞍上の小野騎手は、
「まだ道中ハミを取ったり取らなかったりと、少し若い部分がありました。
ただ、調教での感触からも、かなりの能力を感じますし、もっといい走りができる馬だと思います」とのこと。
実戦で改めて見えた課題は次に繋がるはずだ。
川島調教師は、
「この馬の競馬はやってくれましたが、ずっと外に他の馬がいる形で、
3コーナーでは捲りかけてきた馬に蓋をされ、ワンタイミング仕掛けが遅れたのが痛かったです」と振り返った。
これは個人的な見方だが、じっくり脚をタメて味が出るタイプのこの馬の場合は、
前走や今回のようにじりじりと引っ張られる平板なラップ構成よりも、
もっと強弱のついたペースになった方が、良さが生きるように思う。
ベストパフォーマンスだった3走前がちょうどそういう形だった。
スピードのあるJRA勢が参戦して激しい展開になりがちな本番では、条件が好転する可能性もあるだろう。
この馬にもチャンスはある。
3着のエイシンキャプテンにも触れておきたい。
マイペースに持ち込めたとはいえ、終始、リコースパローの気配を後ろに感じながらの逃げであり、
直線入り口で早めに交わされる、逃げ馬にとっては苦しい形だった。
それでいて0秒6差に踏みとどまっているのだから、渋太さを評価できる内容だ。
これまでも相手なりに走る印象だったが、初の重賞挑戦でこれだけやれたのは、地力強化の証と言えるだろう。
昨年のJBC2歳優駿は、JRA勢のワンツーだった。
ただ、フォーエバーヤングとサンライズジパングのその後の活躍を考えれば、
別次元にその馬たちのレベルが高かったことは事実である。
現時点で今年の相手関係を語ることは難しいが、各地の地方馬同士の交流戦で、
門別からの遠征馬が勝利を重ねているように、今年の門別2歳馬は例年通り全国級である。
リコースパローとソルジャーフィルドは、なかでも例年以上のレベルと言っていい。
決断は先に持ち越すにしても、地元勢の戴冠は、十分に期待できそうである。

レース写真(提供:山口写真工房)
レース概要
実施日 | 10/2(水) |
競馬場 | 門別競馬場 |
距離 | 1,800m |
出走条件 | サラ系2歳 |
負担重量 | 牡馬56kg 牝馬55kg |
優先出走権 | 1着馬は「雲取賞(JpnIII)」または「京浜盃(JpnII)」出走馬の選定にあたり、その成績を重視される |