2025 Dirt Triple Crown
2025.9.2 盛岡 2,000m不来方賞(JpnII)【1着馬】ジャパンダートクラシック 出走権付与

2024年優勝馬 サンライズジパング号
Road to ジャパンダートクラシック

不来方賞とは
“不来方(こずかた)”という言葉は、盛岡市を指し示す古称として使用されてきた。
本競走も50年以上もの歴史を誇り、岩手競馬では岩鷲賞とともに最も伝統のある重賞競走だ。
不来方賞は当地3歳の根幹重賞としての役割を担ってきたが、
2024年からは「3歳ダート三冠」創設に伴い、「ダートグレード競走」として実施されており、
1着馬には、3歳ダート三冠最終戦「ジャパンダートクラシック(JpnI)」への優先出走権が与えられる。
2024年の1着馬サンライズジパングは「ジャパンダートクラシック」で3着に好走したほか、
ダートグレード競走3勝、「フェブラリーS(JRA・GI)」でも2着に入るなど、ダートグレード戦線で大活躍している。
予想<岩手競馬記者・松尾康司>
「不来方賞の読み方を一昨日(おととい)分かりました」。
昨年、ウイナーズサークルで行われた優勝インタビューで武豊騎手が発した言葉に、詰めかけたファンからどっと笑いが起こった。
まさに正論。“不来方”とは『来ず方』。元々が漢文で日本順で読むため返り点が入る。
盛岡市周辺の古称で地元岩手では“こずかた”とごく普通に読んでいるが、一歩外に出れば“ふらいかた”。
この場を借り、不来方の読み方を広めてくれた武豊騎手に感謝を申し上げます。
昨年、岩手伝統の3歳重賞・不来方賞はJpnIIへ格上げ。JRAから4頭、北海道から2頭。
さらに岩手からデビューから圧勝に次ぐ圧勝で無敗8連勝。岩手二冠も順当に制したフジユージーンが挑戦。
全国から多くのファン、地元マスコミなども大挙押し寄せた中、岩手競馬初のJpnIIファンファーレがOROパークに鳴り響いた。
優勝は冒頭に記した武豊騎手=サンライズジパング。
1番人気は逃げたカシマエスパーダに譲ったが、好位を追走して残り100mで捕らえ、あとは豪快に突き放して3馬身差。
ホープフルS3着、皐月賞、日本ダービー出走の貫禄を見せつけた。
この勝利でダート三冠目・ジャパンダートクラシックの優先出走権を獲得。
2着カシマエスパーダ、4着フジユージーンも大一番にチャレンジしたが、フォーエバーヤングが完勝。
世界トップクラスの実力をまざまざと見せつけた。フォーエバーヤングを一言で称すれば“規格外”。
では今年、羽田盃、東京ダービーの二冠を制したナチュラルライズは?と問われれば、私は“常識外”と答える。
型破りの強さに舌を巻いた。
今年の不来方賞はJRA5頭、地元7頭の計12頭によって覇を競うが、JRA5頭はすべてノンタイトルホルダー。
何が何でもジャパンダートクラシックの切符を手にし、ダート三冠目にチャレンジしたい面々がそろった。
ナルカミは4戦3勝。すべて1番人気に支持され、期待値の高さは推して知るべし。デビュー戦を2秒の大差で圧勝した。
2戦目はダッシュひと息だったため押し上げて先手を主張。ロードラビリンスと激しくやり合い、前半1,000m1分1秒6の超ハイペース。
さすがに直線一杯7着に沈んで3ヵ月半休養。
復帰後は2連勝を飾り、前走の2勝クラス・いわき特別(福島ダート1,700m)を抜群のタイムで圧勝した。
不安は敗戦を喫した中京と同じ左回りだが、三冠目の出走権を獲得するためにもクリアーするべき課題。陣営も力が入るに違いない。
メイショウズイウンはデビュー戦4着に終わったが、2戦目から3勝2着4回。
重賞初挑戦のGIII・ユニコーンステークスでもカナルビーグルの0秒2差3着を確保した。
前々走・加古川特別はハナ差2着に屈したが、前回快勝で軌道修正。鞍上は昨年の優勝ジョッキー・武豊騎手。
ロードラビリンスはデビュー戦の京都芝1,600m7着後、ダートへシフトして即快勝。以降4戦は2着2回にとどまったが、2連勝マーク。
前々走はメイショウズイウンとの激しい叩き合いを制して快勝した。
レパードステークスは3番人気10着だったが、内有利の不良馬場に泣いたと解釈。
ダメージは少なく反撃に転じる。
ルヴァンユニベールはデビュー戦3着で2戦目から連勝。
前走・レパードステークスでは中団キープからインを鋭く突いて2着に突っ込んだ。
前走馬体重560キロ。成長を続けているのは確かだが、当日の体重はしっかりチェックしたい。
重戦車ならパワーの要る地方ダートは望むところ。
ハグは好、凡走の落差が激しいタイプ。
3走前・バイオレットステークスは最内枠に入り15着に大敗したが、続く鳳雛ステークス1着で雪辱。
前走・レパードステークスは初の不良馬場だったが、4着に善戦した。今回は12頭立ての7番枠。手ごろな枠順を引き当てた。
リケアカプチーノは高知8戦5勝2着3回から岩手入り。初戦のダイヤモンドカップはシーソーゲームに完敗だったが、2着を確保。
地元同士の東北優駿を順当に制し、岩手古馬の最高峰・一條記念みちのく大賞典に挑戦。史上初の3歳馬優勝を果たした。
昨年のフジユージーン4着より上を目指す。
◎12.ナルカミ
〇11.メイショウズイウン
▲ 8.ロードラビリンス
△ 5.ルヴァンユニベール
△ 7.ハグ
△10.リケアカプチーノ
馬単 12→11.8.5.7
3連単
1着 12
2着 5.8.11
3着 5.7.8.10.11
有力馬紹介
●メイショウズイウン
父ホッコータルマエ
母アクアブルーハート(母父エンパイアメーカー)
通算成績:9戦3勝
JRA2勝クラスを快勝しての参戦。
ダート界の一線級を相手に好勝負を続けており、「ユニコーンS(JRA・GIII)」では2番人気で3着に好走している。
メイショウ+武豊騎手のコンビ。
所属する本田優厩舎はオーナーにJRA通算2,000勝をプレゼントしている。
1着馬には「ジャパンダートクラシック」の優先出走権が与えられるだけに是非とも勝ちたいところだろう。
●ルヴァンユニベール
父ホッコータルマエ
母シントーアサヒ(母父ストロングリターン)
通算成績:7戦2勝
「レパードS(JRA・GIII)」2着馬。
水の浮く不良馬場の中、馬群を割って最内を突いてきた脚は見ごたえ十分の内容と言っていい。
春先はオープン特別で善戦止まりだったものの、古馬混合の自己条件2着で上昇気流に。
前走の馬体重560kgと走るたびに増えているが、文字通りパワーアップした印象だ。
鞍上の内田博幸騎手にとっても古巣大井の「ジャパンダートクラシック」に向けて落とせない一戦。
母シントーアサヒは船橋デビューで3連勝を果たし“大物”とも謳われた牝馬だけに夢を繋ぎたいところ。
●ナルカミ
父サンダースノー
母オムニプレゼンス(母父ディープインパクト)
通算成績:4戦3勝
デビューから4戦3勝の素質馬。
唯一の敗戦は3歳1月の2戦目だが、直線半ばまで先頭をキープするスピードを見せている。
重賞初挑戦でメンバー強化は否めないものの、新潟リーディングを獲得した戸崎圭太騎手とともに更なる高みを目指したい。
●リケアカプチーノ
父トランセンド
母ブラウンテヌート(母父シンボリクリスエス)
通算成績:11戦7勝
高知デビューから11戦連続連対中。
岩手に移籍するまではノンタイトルだったが、岩手移籍後は重賞のみ走り2勝、2着1回と完全に軌道に乗った印象だ。
同世代のライバル相手に完勝した「東北優駿(水沢)」、古馬の一線級を負かした「一條記念みちのく大賞典(水沢)」とインパクトは十分。
唯一2着となった盛岡コースが舞台となるが、今の充実ぶりなら強豪JRA勢を迎えても好勝負に持ち込めて良いだろう。
参考レース
-
- 5/4
- 盛岡
- 1,800m
- ダイヤモンドカップ
- シーソーゲーム
-
- 6/8
- 水沢
- 2,000m
- 東北優駿
- リケアカプチーノ
-
- 6/11
- 大井
- 2,000m
- 東京ダービー(Jpn1)
- ナチュラルライズ
-
- 7/20
- 盛岡
- 1,800m
- やまびこ賞(不来方賞TR)
- サンロックンロール
レース回顧<岩手競馬記者・松尾康司>
9月2日(火)、盛岡ダート2,000mを舞台にJpnII「第57回不来方賞」が行われた。
当日昼12時あたりから断続的に豪雨が盛岡競馬場を襲い、第1Rは良馬場発表だったが、7R以降のダートは不良馬場。
メイン10R前から雨が上がり、時折り雲の合間から強い陽が差し込んできたが、高速決着が確実となった。
有力各馬が様子を見ながら先手をうかがい、大外からナルカミがハナに立った。
2番手インにルヴァンユニベール、その外にハグ、4番手外にメイショウズイウン、5馬身ほど離れてロードラビリンス。
隊列が決まった1コーナーで早くも超縦長の展開となった。
先行グループの隊列はほとんど変わらず4コーナー手前でハグ、メイショウズイウンがナルカミに接近を図ったが、
鞍上・戸崎騎手は手綱を持ったまま。
直線を向いてゴーサインを出すと鋭く反応。着差は2馬身半だったが、余裕でゴール板を通過した。
次走へのメモ的にハロンラップを見てほしい。
12秒0-11秒5-11秒6-12秒8(1コーナー入り)。以降、12秒9-12秒4-12秒7-11秒8-10秒6-12秒9。
前半3ハロン35秒1、上がり3ハロン35秒3。
このラップで逃げられたら後続はお手上げ。
2014年、JBCクラシックでコパノリッキーが樹立した盛岡ダート2,000mのレコード2分00秒8に
0秒4迫る2分01秒2の破格タイムでナルカミが逃げ切った。
戸崎圭太騎手「この馬はフットワークが大きい馬。ごちゃつくと心配があったが、今回は大外だったので問題なかった。
ポジションはゲートを出てから。ほかの様子を見ながら併せる形よりもリズムを優先させたら、いいペースで行けた。
道中の手応えが良かったし、仕掛けてもまだまだ余裕があったので、強いレースだったと思う。
まだ揉まれた経験がないのでそこだけが未知だが、左回りも2,000mも特に問題ない。次走も楽しみです」
続いて田中博康調教師「デビュー2戦後にうちのきゅう舎に来たが、左右のバランスが気になった。
それが左回りでパフォーマンスを出せなかった要因だったのではないかと思った。
不来方賞を選んだのは左回りでも盛岡なら走りやすいだろうと考えたから。
思った以上にしっかり応えてくれた。スタミナ、ストライドとも最後まで力尽きなかった。
新馬戦をあれだけの勝ち方をするのだから、ポテンシャルが相当高いと思っていた。
今回はジャパンダートクラシックから逆算して臨んだローテーション。無事に権利を取りましたから、大井へ行きたいと思っています」
田中博康調教師はレモンポップでマイルチャンピオンシップ南部杯2連覇、チャンピオンズカップ2連覇などG/JpnI6勝。
昨年チャンピオンズC優勝後に引退して種牡馬入り。
200頭を優に超す繁殖を集めたが、現役時代の重賞初挑戦がデビュー9戦目の武蔵野ステークス(2着)。
すでに8戦6勝2着2回の成績を残していたが、レモンポップの成長度合いに合わせたステップだったに違いない。
田中博康調教師いわく「克服すべき課題はまだある」とのことだが、
“遅咲きの大器”ナルカミがダート三冠目でナチュラルライズを相手に、どのようなパフォーマンスを見せてくれるのか。
一個人としても楽しみで仕方がない。

第57回不来方賞(JpnII)優勝馬ナルカミ号
(岩手県競馬組合提供)
レース概要
実施日 | 9/2(火) |
競馬場 | 盛岡競馬場 |
距離 | 2,000m |
出走条件 | サラ系3歳 |
負担重量 | 牡馬56kg 牝馬54kg |
優先出走権 | 1着馬に「ジャパンダートクラシック(JpnI)」の優先出走権付与 |