
今週より「SPAT4」にてコラムを掲載させていただく、浅野靖典です。
役に立つかもしれない情報、まったくそうではないネタなどがごっちゃになると思いますが、
南関東のことを中心に展開していきたいと考えていますので、どうぞよろしくお願いいたします。
さて、このコラムがスタートする7月第1週といえば、クラス編成が変わる時期。
地方競馬は「勝ち上がり」で昇級するJRAとは違うシステム。
主催者ごとにその仕組みは違っているが、南関東の4競馬場は同じモノサシで競走馬のクラス(格付け)が決められている。
南関東では、1月1日と7月1日が季節の変わり目。【nankankeiba.com】のデータBOXにある「格付け基準表」で確認できる。
それを少しアレンジしたものがこちら。
JRAは基本的に勝利するとクラスが上がるが、南関東は一部の例外を除いて、
5着までに入って獲得した賞金総額によって所属するクラスが決められる。
たとえば、6月17日(水)の最終レース(B3戦)で3着に入ったエリモブリーズ(船橋・6歳)は、
前走のC1戦で4着に入ったことで、B3クラスに昇級していた。
これを番組賞金額で表すと、
☆前走出走時(5月のC1)の番組賞金=1,387万円
☆4着に入線=21万6千円を獲得→番組賞金としては21万円が加算=番組賞金が1,408万円に増加。
☆6歳上半期のC1は番組賞金が1,100~1,399万円なので、9万円オーバーしたためB3に昇級。
となったわけである。
でも、7月になったらC1は[1,200~1,499万円]という区切りになるので、ここで負ければ降級することになる。
そしてその6月17日、私と一緒に船橋競馬場で勝負していた友人から、
「なんでエリモブリーズは昇級しているの?」と、質問があった。
「前走の4着でちょっと稼いだから昇級しちゃったんだよね」と答え、
ついでに「ここで勝たなければ、7月からC1に下がると思うけど」と言ったわけですわ。
14頭立ての単勝オッズはサクラシェンロンが1.7倍で断然の人気。で、エリモブリーズは46.9倍で7番人気。
パドックの気配は上々と判断したので、私は3連勝式の相手にマークしておいた。
1,700m戦のゲートが開くと、サクラシェンロンが先手を取り、2番手は2番人気のドミヌス。
そして3番手がエリモブリーズ。おお、2コーナーですでに当たっている。
よしよし、そのままそのまま……と念じていると、4コーナーでも順番は変わらず。
よおし、本格的にそのままそのまま!
と、ゴール地点付近で気合を込めて唸っていると、それが天に届いたのか、結局そのままでのワンツースリー。
みんな、馬券取ったでしょ!?
「エリモブリーズ買ってない……」
なんで!?
「ここで負ければ7月から降級するって言っていたから、ここは来ないんじゃないかと思って……」
いや、あの、そのー。そりゃ確かに言いましたけれど、勝たなければですから……。
この結果、エリモブリーズは3着賞金の44万円を加算して、番組賞金は1,452万円になった。
ちなみに2着でも1,474万円なので、7月からはC1クラスに降級することになるわけだ。
ハズレてしまった友人は深読みしすぎたというか、私が余計な情報を与えてしまったからというか……。
でも、番組賞金の仕組みを把握していると、予想の役に立つことは確か。
たしか昨年の春に「あとちょっと稼ぐとクラスが上がる」
というB2級の馬が、自己条件に出ないでB1下のレースに出走していたことがあった。
これはおそらく「休ませたくはないが、自己条件だと5着以内に入る可能性が高いから、相手が強いレースに出す」という
陣営の作戦だろうと読んだのだ。
そしてその馬は6着以下に敗退。穴人気になっていたので配当的にも妙味があった。
それ以来私は、しっかりと馬券勝負をするときには、番組賞金が記載されている専門紙を買おう、というスタンスでいる。
実は、6月17日は無料でもらえる出馬表だけで勝負していたのだけれど、
高度な情報は投資をしないと手に入れられないものなのよね(友人は専門紙を持っていた……)。
日本は「水と情報はタダ」みたいな風土があるけれど、それに甘えていてはイカンのよ。
しかし改めてクラス分けの表を見てみると、いろいろなことに気がつく。
ときどき、C3クラスを何連勝もする馬が出現するが、そういう馬の多くは
「素質はあるもののなかなか順調にいかず、ようやく実力を出せる体になってきた」
という結果が連勝記録、ということになるのだろう。
そこまで我慢して待った馬主さんの勝利でもあるわけだ。
また、JRA交流戦を3連勝する馬もときどきいる。
偶然そうなったという馬もいれば、厩舎側がそうなるようにマネジメントしたという馬もいることだろう。
そういう面を含めて、上半期、下半期の変わり目は予想の要素がひとつ増え、それが宝の山に結びつく可能性がある季節なのだ。
ただし、7月最初の開催(川崎)と2週目の開催(大井)に出走する馬は、上半期の格付基準が適用されるので、
クラス分けの妙技を使って勝負ができるのは3週目の浦和開催から。そこはひとつご注意を!
さて、7月1日のメインレースはクラス分けとはあまり関係がない「スパーキングレディーカップ」。
サンビスタは58㎏での出走となるが、4月のマリーンカップでも58㎏で圧勝の実績ならば、ここも問題なく対応できそう。
サウンドガガは昨年のこのレースを逃げ切ったが、今年も競り合う相手がいないというメンバー構成ならば、粘り込みが期待できる。
上位争いに加わってきそうなのが、愛知から参戦のピッチシフター。
大畑雅章騎手、川西毅調教師がともに「馬の調子が良い」と口を揃えていて、
慣れない左回りでもインにこだわる競馬をすればチャンスがありそうだ。
トロワボヌールは善戦が続いているが、ひと押しに欠けるのは否めないところで、今回も善戦までとみるのが妙味だろう。
カイカヨソウは馬体が回復すれば昨年の4着以上も考えられそうだが、3連勝式の穴で少々……というところまで。
◎サンビスタ
○サウンドガガ
▲ピッチシフター
☆トロワボヌール
△カイカヨソウ
6月17日(水)船橋ハートビートナイター
浅野 靖典
1969年8月1日生まれ
1998年にグリーンチャンネル「中央競馬中継」のキャスターから競馬関係のキャリアをスタート。
現在は各種媒体に原稿を寄稿し、競馬関係のメディアにも出演。
JRA、青森、九州のセリ市場の司会進行役も担当している。
ときどきグリーンチャンネルの番組「競馬ワンダラー」で、ワゴン車の運転手として全国を放浪。
各地の地方競馬場には1~2年に一度以上は訪問している。