コラム”

「着順の重み」
2015年7月28日

今年も世界の名騎手と同じ舞台に立てるチケットを手に入れるための戦い、
『スーパージョッキーズトライアル(SJT)』の時期がやってきた。

昨年までは秋に実施されていたのだが、
今年は本番となる「ワールドオールスタージョッキーズ」が8月末に札幌競馬場で行われるため、
予選となるこのシリーズもそのぶん前倒しされることになった。

まずは、SJT本選の前に「ワイルドカード」が実施される。
各地区のリーディング2位+南関東5位+特別枠3名の計11名から、
2戦で得たポイント数の上位3名が本選に出場できるルールだ。

ということで、5月26日に金沢競馬場で行われたワイルドカードからは、
兵庫のレジェンド・川原正一騎手、金沢の昇り龍・青柳正義騎手、
岩手のスナイパー・山本聡哉騎手が本選への出場権を獲得した。
あっ、騎手名の前につけた文字は私が勝手に考えたものなので、あまり深く考えないでくださいな。

その3名に加え、各地区のリーディングジョッキーと、
南関東の1位から4位までの14名の騎手が一堂に会した7月7日の大井競馬場。
ここでは、獲得したポイント下位の2名が第2ステージに進めない。
その2名に該当したのは森泰斗騎手と岡部誠騎手。このあたりはクジ運という面もありますが……

続く最終決戦は7月23日の園田競馬場。一昨年も最終決戦はこの舞台だった。
そのときは、第1ステージで森泰斗騎手と真島大輔騎手が脱落。
このシリーズは過去10回実施されているが、
南関東で優勝したのは2009年の的場文男騎手だけだから、南関東勢とは相性がいまひとつ?

 
出場騎手の集合写真

 

(出場騎手の集合写真)

そして今年も優勝争いは大混戦となった。
このシリーズに勝つための最大のポイントは「大きい着順を取らないこと」。
4戦を通じて、どれだけ「セコく」乗ってこられるかがカギなのである。

それは過去3名の「シリーズで未勝利だったけど優勝した」騎手がいることからも明らか。
まして各騎手には「勝ちたい」という意識が普段以上に強くあるわけで、
そうなると株式相場の格言「人の行く裏に道あり花の山」の、まさにそのとおり。
力量的に劣勢という馬に乗ったとき、いかにさりげなく流れ込むかなのだ。

 
ファンプレゼント用に寄せ書き中

 

(ファンプレゼント用に寄せ書き中)

しかし、今年は運不運が結果に大きくつながった。
優勝した金沢の藤田弘治騎手は3番人気と5番人気の馬に騎乗したのだが、どちらもパドックでの気配が抜群。
そして2戦とも1着となって、第1ステージ12位からの大逆転優勝となった。

逆に1ポイント差で2位となった村上忍騎手は、10着だった最終戦で8着だったら優勝していた。
そこから1ポイント差の山本聡哉騎手も、2回あった6着のどちらかが5着なら優勝。

   
騎手紹介イベント後の笠松・吉井友彦騎手と金沢・藤田弘治騎手

 

(右から笠松・吉井友彦騎手、金沢・藤田弘治騎手、[奥]金沢・青柳正義騎手)

いちばん口惜しいのは真島大輔騎手で、園田での初戦が2コーナーで競走中止。
10番人気馬だったが、これが完走して8着にでも入っていれば、優勝していたのである。
ああ、なんてもったいない……

「そうなんですよね。でも競走中止だもんなあ」と、
真島騎手はやり場のない悲しみを自分のなかで消化させるしかない、というような表情をしていた。

的場文男騎手は真島騎手と2ポイント差、優勝騎手とは4ポイント差の5位だった。
昨年は名古屋で「もうこれが最後のチャンスだろうから、渾身の騎乗をしたよ」と語っていたが、
大井の帝王は今年もこの舞台に帰ってきた。
的場騎手は2009年に園田競馬場で2戦とも勝利して優勝。
しかし今年は、そのミラクルを別の騎手にされてしまった。

競馬でもっとも重要なのは「運と縁」。
これは調教師をはじめとする競馬関係者からよく聞かれる言葉である。
「もっとも運のいい馬がダービーを勝つ」という言葉があるが、
SJTで優勝する騎手も「出場騎手のなかでもっとも運がいい人」なのかもしれない。

確かに藤田騎手はそういう面がある。
そもそも昨年の金沢リーディングは吉田晃浩騎手で、藤田騎手は2位。
たまたま吉田騎手がケガで戦線離脱をしていたために、藤田騎手がこの舞台に出る権利を得たわけだ。
そして、そのチャンスを活かし切って優勝。この運のよさはただモノではない!

とはいえ逆に言うと、そのステージに立った人なら、誰でも優勝するチャンスが十分にあるということ。
的場騎手も「また世界の舞台に出たい」という強い思いを持っている。
その的場騎手は、7月26日現在で南関東のリーディング第3位。来年も世界への扉の前に立ってくれるはずだ。

 
表彰式の写真

 

(優勝は金沢・藤田弘治騎手、2位は岩手・村上忍騎手、3位は岩手の山本聡哉騎手)
各レースのポイント表はこちら

さて、水曜日はSJTに出場した騎手が5名出ているサンタアニタトロフィー。
16頭のうち15頭が「○○.5kg」となっているのが謎なハンデ戦だ。
でも上下差がそれほど大きくない設定ならば、マイル戦で快進撃が続くソルテが断然。
相手探しの一戦とみていいだろう。

その筆頭には転入初戦のケイアイレオーネを抜擢。
2歳時には兵庫ジュニアグランプリをレースレコードで勝つなど、
個人的にコーナー4つのマイル以下が合っているような印象があるのだ。
おお、その2頭の鞍上は、ワールドスーパージョッキーズシリーズ(当時)に出たことがある吉原寛人騎手と的場文男騎手!

そこに割って入りそうな存在としては、大井のマイルで7戦7連対のグランディオーソ。
叩き2走目のガンマーバースト、堅実タイプのトーセンアドミラル、
前走で強気に先行して最下位に沈んだセイントメモリーも侮れない。

◎ソルテ
○ケイアイレオーネ
▲グランディオーソ
☆ガンマーバースト
△トーセンアドミラル
△セイントメモリー

プロフィール

プロフィール

浅野 靖典

1969年8月1日生まれ

1998年にグリーンチャンネル「中央競馬中継」のキャスターから競馬関係のキャリアをスタート。
現在は各種媒体に原稿を寄稿し、競馬関係のメディアにも出演。
JRA、青森、九州のセリ市場の司会進行役も担当している。
ときどきグリーンチャンネルの番組「競馬ワンダラー」で、ワゴン車の運転手として全国を放浪。
各地の地方競馬場には1~2年に一度以上は訪問している。

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