
5月5日の船橋競馬場。
かしわ記念では9歳のワンダーアキュートにしてやられ、しかし最終レースはギリギリのところで3連複を引っ掛けて、深い傷を少し修復。
その日は大阪から友人が来ていたので「一杯やっていきますか」と、最終レース後に開放される通用門に向かった午後5時すぎ。
「和食さと」と「よみうりランド船橋事業所」の建物の間に集まっている人がいる。なにをやっているんだろう、この人たち。
そのなかには知り合いが2~3人。そして足元には大きなトングとビニール袋が置いてあった。もしかしてゴミ拾いですか?
そういうことに気づいてしまったら百年目。これはもう、参加せざるをえないですわ。
ここで「頑張ってね~」と言い残して飲み屋に行ったとすると、「薄情者」「裏切者」と、孫の代まで認定されてしまう可能性もなくはない。
……ということはまったく思わなかったんですけどね。
じつは私、こういうタダ働きって、けっこう好きなんですよ。学園祭実行委員会的なノリみたいな。
というわけで、ビニール手袋とビニール袋を受け取って活動開始。で、どういう感じでやるんでしょうか?
「JRの南船橋駅方面と、京成の船橋競馬場駅方面に分かれます」
このあとは錦糸町あたりで二次会という話をしていたし、ならば南船橋駅までゴミ拾いをしながら歩いて、そのまま武蔵野線に乗りますか。
そういう方針で出発し、通行人のジャマにならないように気を配りながら吸殻などを拾い集める。
船橋競馬場はとなりが日本有数の大規模ショッピングセンターだから、いわゆる「オケラ街道」が専用道状態にはなっていない。
オケラ街道といえば、昭和40年代に廃止になった競馬場関連の新聞に、「開催日の夕方にはコソ泥が多発し」とか
「無一文になった競馬帰りの客が民家の呼び鈴を鳴らし、“着ているものを買い取れ”と強要」……などと出ていたことを思い出す。
それから半世紀近くが経ったが、今でも最終レースが終わると寒色系の服を着た人々がゾロゾロ……
というイメージは、今でも競馬場の存在を良しとしない人たちのみならず、一般的によく思い描かれる風景になっているような気がする。
しかしながら、実際にゴミを拾い集めてみてビックリ。馬券やマークカードって、道路や歩道にほとんど落ちていないのね!!
7月20日(習志野きらっとスプリントの日)にも活動に参加したのだが、このときに私が現認したのは、オートレースの車券1枚だけ。
むしろレシートとか吸殻とか、そういうもののほうが多かった。
でも世間的には、そういうゴミも競馬場のせいにされてしまうんだろうなあ。それって大半がぬれぎぬ、冤罪ですよ。
でもそういう状況だからこそ、競馬場の周辺を美化するのは重要なことなのかもしれない。
この活動を始めたのは、船橋競馬で調教師補佐を務める、大津剛さんを中心としたグループ。
「ナイターも始まることですし、地域にもっと貢献できないかなと思って、まずは周辺美化から始めようと考えました」
という活動は、今年の春からスタート。主に船橋開催の重賞がある日の最終レース終了後に実施している。
「馬主会さんにその話をしたら、そういう活動はどんどんやりましょうと後押しを受けて、
今回(7月)からスタッフジャンバーが用意されることになりました」
ということで、参加者は紫色の装いでゴミ拾い。でもかなり暑そう……。
私も5月のときにビニール手袋を使用してゴミを拾ったが、手袋のなかがヒタヒタになってメチャメチャ汗くさくなったなあ。
ちなみに現在は、軍手と大型トングという装備で実施。10名ほどで船橋競馬場の外壁沿いをそぞろ歩き、歩道橋で道路を渡って反対側の歩道もゴミ拾い。
いやあ、本当にゴミが少ない。最近の競馬ファンはマナーがいいなあ!
と笑顔でそんな感想を言い合ったのも束の間、京成方面から帰ってきたチームのゴミ袋は大漁状態になっていた。
なるほど、そっちのほうが競馬場としてはメインストリートなのね……。
今の時代はネットの普及によって、マイナス情報やクレームなどがまたたく間に広がってしまい、
それがたとえ間違いや誤解だったとしても、打ち消したり訂正したりするのが難しい。
それだけに、競馬場のイメージを悪くしないようにという活動は重要だ。
8月の活動日は4日(火)なのだが、9月以降も実施する予定。船橋競馬場に来てゴミ拾い集団を見かけ、
そしてナイター終了後でも家路を急がなくていい状況だったら、ぜひご参加ください!!
さて、ゴミ拾い活動の翌日となる8月5日のメインレースは、A2下で争われる1600mの千葉日報賞。
ここでポイントになるのは、B1クラスに在籍する馬が、なぜここに出走してきたかという推理。
前日に行われる桑島孝春記念はB1B2クラスのレースなのだ。
もちろん、前日の1200mとこちらの1600mを天秤にかけてのことなのだろう。
しかしそれをじっくりと考慮すると、浮上してくる馬がいるんですよ!
◎ツルオカハチマン
○ナイトバロン
▲ドリームキングダム
☆ハードクラップ
△グレートチャールズ
ツルオカハチマンの現在の格付けはB1。
JRA時はコーナー2つの1400mを主戦場としており、火曜日の1200mでもと思えるタイプだ。
しかし陣営の判断は格上のこちら。それを信じて中心視!
浅野 靖典
1969年8月1日生まれ
1998年にグリーンチャンネル「中央競馬中継」のキャスターから競馬関係のキャリアをスタート。
現在は各種媒体に原稿を寄稿し、競馬関係のメディアにも出演。
JRA、青森、九州のセリ市場の司会進行役も担当している。
ときどきグリーンチャンネルの番組「競馬ワンダラー」で、ワゴン車の運転手として全国を放浪。
各地の地方競馬場には1~2年に一度以上は訪問している。