
「鎌倉記念」で思い出すのは2011年。
雨にもかかわらず現地に突撃して、私の川崎における定位置である2階ベランダ席から見ていたのだが、かなり衝撃的なレースだった。
スタート直後に勢いよく先手を取った北海道からの遠征馬が、
1コーナーでうまく左に曲がれずに、その馬の外側に並びかけていた3頭を一気に外ラチ近くにまで追いやってしまったのである。
曲がれなかった馬も含めて、落馬まで至らなかったのが不幸中の幸いというぐらいの状況。
その4頭はそこで勝負権がなくなってしまい、あとは馬群の後ろを追いかけただけだった。
それを見てからというもの、2歳馬で初めての左回り、という馬には用心してしまうクセがついてしまった。
2009年のスパーキングサマーカップで笠松のマルヨフェニックスが勝ったとき、そのときの同馬は川崎が2回目だったのだけれど、
レース後の尾島徹騎手は「笠松では左回りの練習がほとんどできなかったんですよ。いや~、けっこうきつかったですねー」と言っていた。
もちろん、人ではなくて馬が、である。
日本でいちばん急な弧を描く川崎競馬場のカーブは、それなりに準備してかからないと厳しいのかもしれない。
とはいえ、2009年に初川崎、初ナイターで全日本2歳優駿を勝ったラブミーチャンもいるのだから、気にしすぎるのは体に毒なのだろうけれど。
でもやっぱり気になってしまうんだよなあ。
その2011年の鎌倉記念を観戦したあと、スタートやコーナーワークに不安がある馬は外枠から出られるようにすればいいのになあ、と思った。
もちろん、外枠のほうが有利というコースもあるので、どの競馬場でもというわけにはいかないのだが。
それでも川崎競馬場はどちらかというと内枠のほうがベターという傾向があるし、
コース形態がほかの競馬場に比べると特殊なので、一考できるのではと思ったのだ。
という考えが浮かんだのは、マカオのドッグレースでは、
コーナーワークが下手な犬は「ワイルドランナー」という注釈がついて、外枠指定されることを知っていたから。
犬は騎手が乗らないけれど、カーブで他犬を巻き添えにする事故を減らすためには、外を回ってもらうのが最善だろう。
(マカオのドッグレース。スピードが速すぎてうまく撮れていません……)
競馬でも同様のやりかたをしているのが韓国。
事前に厩舎側から外枠を希望する旨の申請があった馬は、外枠からスタートできるのだ。
韓国は育成技術が日本に比べるといまひとつという面があって、実戦で矯正用の馬具を使っている馬がけっこう多い。
そういう馬は内枠よりも外枠のほうが安心だろうし、他馬の関係者にとってもデンジャラスな馬がインコースにいないほうが安心できる。
もちろん、馬券を買っているファンにとっても。
逆に、昨年の有馬記念では抽選で選ばれた出走馬の関係者が、希望の馬番を選んでいく形式を採った。
香港の国際競走でもゲート番号は公開で決めるのだが、その決め方は「クジ」。
自分でチョイスできる方式は、なかなか画期的だった。
ただ、それはビッグレースだからできること。
一般戦でそこまでの手間はかけにくい。
でも、川崎競馬場の場合は事故防止の観点から、事前の外枠申請というのはアリなのではと思うのだ。
しかしながら、競馬開催の事情をいろいろと聞くと、それを実現するためにはいくつかの難しい問題をクリアしなければならない様子。
となれば、馬券を買う側としては与えられた条件を織り込んで考えるしかない。
でも、だからこそ面白いという部分はあるのよね。
いやしかし、今年の鎌倉記念は、他地区からの遠征馬3頭が1番から3番までに入るとは!
でも、この3頭は先行タイプではなさそうだから、2011年のような事態になる確率は低いかな?
遠征馬3頭はいずれも北海道デビューで、左回りの実戦経験があるのは1番のシャイニーネームだけ(7走前がJRA中京)。
成績的にみて最上位といえそうなのは3番のナイスヴィグラスだが、
初距離初コース、そして前走で火曜日に門別で出走するリンダリンダに完敗した内容から考えると、ここでは少々荷が重そうだ。
となれば、南関東デビュー組を中心とするのが妥当だろう。
注目を集めそうなのが、デビューから4戦4勝のポッドガイ。
母はダーレー・ジャパンが日本で誕生させた持ち込み馬(母が海外で受胎して日本で誕生)で、JRAでは8戦して2着2回。
2011年秋に競走生活から引退して、2012年秋の繁殖牝馬セールでこの馬がおなかのなかにいる状態で取引された。
夏休み明けの前走は初の大井遠征だったが快勝しており、5連勝の可能性は高いとみる。
逆転が狙えそうなのが、前走で大差勝ちを見せたアンサンブルライフ。
ドロドロの馬場もあっての圧勝だったが、前走後の的場文男騎手のテンションは上々。
御年28歳の父、アジュディケーティングに朗報を届けたいところだ。
ワイヤトゥワイヤーは大井遠征で見せ場なく敗れたが、初コースでも左回りなら巻き返しが十分。
デビュー2連勝中のシャークカイザーも押さえておきたい存在といえる。
あとはやっぱり、北海道のナイスヴィグラスにはマークしておかないと不安だなあ。
ということで、鎌倉記念のシルシは、
◎6ポッドガイ
○5アンサンブルライフ
▲11ワイヤトゥワイヤー
△9シャークカイザー
注3ナイスヴィグラス
今度こそ的中を!!
浅野 靖典
1969年8月1日生まれ
1998年にグリーンチャンネル「中央競馬中継」のキャスターから競馬関係のキャリアをスタート。
現在は各種媒体に原稿を寄稿し、競馬関係のメディアにも出演。
JRA、青森、九州のセリ市場の司会進行役も担当している。
ときどきグリーンチャンネルの番組「競馬ワンダラー」で、ワゴン車の運転手として全国を放浪。
各地の地方競馬場には1~2年に一度以上は訪問している。