
いろいろと事情がありましてちょっと放浪中という昨今。
まもなく冬を迎える尻屋崎に行ってきました。
尻屋崎は、青森県の下北半島。
地図で言うと右上にある突端なので、つまりいわゆる本州の陸地が尽きるところである。
というわけで、三沢空港からはおよそ90km。
私も6年か7年前に1回行ったきりで、ここは思い切らないとなかなか訪問する機会が巡ってこない。
でも、この岬は普通の岬とはちょっとちがうのですよ。
なんてったって、野生の馬がいるのだから。
尻屋崎の車両用ゲートを通過して1kmほど車で走ると、いきなりお馬さんたちが道路で待機。
馬体重は見たところ800kgから1トンぐらいか。
大半が妊娠中で、どこかに種牡馬もいるようだから、全員が温厚な性格というわけではないらしい。
(行く手を阻む馬たち)
しかしこれでは車が進めないのことですよ。
というわけで仕方がないから、以前にちょっと学んだ馬の誘導法を使って移動してもらい、馬の密集地域を通過して灯台のたもとへ行ってみる。
さすがに距離的に遠いところにあるので観光客の姿はまばらだったが、そのうちに観光バスが1台やってきた。
でも乗っていた人たちは、馬のエリアでは車窓観光だったっぽい。
こちらは灯台とか岬とかの観光よりもお馬さんが目当てなので、そちらに移動。
雰囲気的にはのんびりムードがただよっているが、やはりこういうところでもリーダー格の馬はいるらしい。
推定1歳ぐらいの馬もおり、野生の世界だと離乳は自然とできる模様。
考えてみれば当たり前の話なのだけれど、改めて馬は自然とともに生きてきたということを感じさせてもらった。
(海をバックにお食事中)
さて、尻屋崎といえば、近くに南関東の競馬と関連が深い場所がある。
尻屋崎があるのは青森県下北郡東通(ひがしどおり)村。
この村には「下北砂丘」という日本最大の砂丘があって、そこから採取された砂が大井競馬場と川崎競馬場に敷き詰められているのである。
その砂丘があるのは、東通村尻労。
尻が労すると書いて「しっかり」と読む。
下北砂丘は鳥取砂丘よりもはるかに広いのだけれど、大半が防衛関係やらのエリアになっているので、ビュースポットがほとんどない。
ということもあって下北砂丘は全く観光地化されていないので、私も下北砂丘が広さ日本一とは、つい先週まで知らなかった。
果たしてこの砂丘のどのあたりが大井と川崎の砂のふるさとなのかしら……?
そのことに後ろ髪をひかれつつ南下すると、次の自治体は六ヶ所村。
ここにも砂を採取する現場があって、こちらは船橋と浦和の砂の供給地となっている。
東通村から六ヶ所村に入り、3kmほど走ったあたりがその現場。
すると国道338号線の道路わきに、山と積まれた砂が見えるではありませんか!
(六ヶ所村にあるダートのふるさと)
この色だと砂の状態は「重」かな。
なんでもこのあたりの砂は粒が細かく、光を受けるとキラキラするらしい。
ということもあって、JRAの競馬場およびトレセンなどでは、ほぼ100%の砂が六ヶ所村から運ばれているらしい。
馬場の砂を全面入れ替えするためには、どうやら1500トン程度は必要らしいから、10トン積みのダンプカーで150台……。
馬場を維持管理するのはとても大変なこと。
「砂でしょ?」などと侮ってはいけないのだなあ。
というわけで、南関4場の砂のふるさとを訪問することができて個人的に満足。
このあたりは人家がほとんどなく、砂の上に育った松林が延々と続いている。
だからこそ、砂を遠慮なく採取できる場所になっているのかも。
これが九十九里や大洗だと、競馬場には近いけれども海岸近くまで人家があるから、ごっそりと砂を持っていくのは難しそうだ。
ぜひ皆様も機会を作って、三沢空港でレンタカーを借り、六ヶ所村と東通村の砂丘ロードを通り、
尻屋崎で馬とたわむれるツアーを体験してみてください!
ただし、冬はおすすめできません。道路は凍るし、場合によっては地吹雪に遭遇する可能性も。
以前、2月中旬の夜8時頃に国道338号線を通ったとき、上り坂がツルンツルンで進めなくなってしまったことがあったのですよ。
そのときは偶然たまたま、どでかいタイヤを履いたRV車が停まってくれて、牽引してあげるよと助けてくれたので生きて帰れたのだけれど。
こちらはもちろん、スタッドレスタイヤを履いていましたよ。
しかしそれでも冬の田舎道は死に直結する可能性があるのだから恐ろしい……。
そういう場所に住む尻屋崎の馬は、別名が「寒立馬」(かんだちめ)。
厳しい冬を乗り越える唯一の手段が「耐える」という、過酷な運命を背負った馬たちである。
火曜日のローレル賞に出走する馬も、全員が寒い土地で誕生した馬。
そして冬に近づくこの時期となれば、やはり北海道で暮らしてきた馬に注目するのがスジだろう。
◎モダンウーマン
○スアデラ
△カシマミルキー
△ジェイエレガンス
△マックスガーデン
モダンウーマンは前走のエーデルワイス賞で逃げ切りならずの2着だったが、これは勝った相手が強かっただけ。
通算6戦6連対の実績を含めて、マイル戦でも問題なしとみる。
スアデラは母が2007年のエーデルワイス賞を制したマサノミネルバ。
エーデルワイス賞に関連するこの2頭を軸にして、相手を手広くという考え方で攻めてみたい。
続く水曜日はロジータ記念。
来週は水沢競馬場でダービーグランプリがあるが、こちらは3歳牝馬による秋の女王決定戦。
しかしこれは相当に難解ですよ。
とりあえず一応の中心として、北海道のジュエルクイーンに注目してみる。
レディスプレリュード5着のサンバビーンに食い下がっている実績なら、2100mでも頑張ってくれるだろう。
戸塚記念で強烈な印象を残したミスアバンセにも注目大。
休み明けの前走を制したララベルも、条件的に互角以上が狙えそうだ。
穴は単騎逃げが見込めそうなトーコーヴィーナス。赤岡修次騎手に依頼したティーズアライズにも少々警戒しておきたい。
◎ジュエルクイーン
○ミスアバンセ
▲ララベル
△トーコーヴィーナス
△ティーズアライズ
△フジノドラマ
浅野 靖典
1969年8月1日生まれ
1998年にグリーンチャンネル「中央競馬中継」のキャスターから競馬関係のキャリアをスタート。
現在は各種媒体に原稿を寄稿し、競馬関係のメディアにも出演。
JRA、青森、九州のセリ市場の司会進行役も担当している。
ときどきグリーンチャンネルの番組「競馬ワンダラー」で、ワゴン車の運転手として全国を放浪。
各地の地方競馬場には1~2年に一度以上は訪問している。