
クイーン賞と聞いて個人的に思い出すのは2010年。
その2010年12月8日に私がいた場所は北海道。
その年の秋に、海外発日本行きの往復航空券を買ったはいいのだが、
値段が同じだからという貧乏根性で、行き先を羽田経由千歳空港にしていたのだ。
往路は北海道で仕事があったからちゃんと使ったのだが、帰り(つまり海外行き)は北海道から乗る理由がひとつもなかった。
しかし私が手に入れた航空券は「順番通りに使わないとダメ」というルールがあって、
千歳空港から羽田空港の分を捨てて、最後の区間から使用開始ということはできなかったのだ。
というわけで12月9日に日本を出国するために、前日は日帰りで北海道。
その往路分は少しでも安くしようと、スカイマークの早朝便をバーゲン価格で買った。
でも1万円ぐらい。
その当時にバニラとかジェットスターとかがあったらなあ……。
ともあれ北海道に行くのだから、千歳空港から一歩も出ないで帰ってくるのは忍びない。
というわけで、知り合いのレンタカー屋さんで小型車を2100円で借り(ちなみにこれが通常価格)、
新冠の牧場にちょっとした用事があったので、それを口実に日高地方に向かった。
するとどうやら、グリーンチャンネルの取材チームが静内にいるらしい。
ということでライディングヒルズ静内に向かい、撮影中の取材チームと合流。
たしかサクラユタカオーが死亡したというネタだったと思う。
撮影が終わり、昼食は静内の街なかにあるラーメン店。
そのあとマクドナルドでコーヒーを飲みつつ、コンビニで専門紙を買ってきた担当プロデューサーと、クイーン賞の検討から始めた。
当日の船橋競馬は、最終レースが「総の国オープン」。
いま考えると、その日はどうやら予想の神が私の頭上に降臨していたらしく、
人の予想になんでも乗っかるディレクターが総の国オープンの買い目を聞いてきたので、軽い気持ちでこう言ったのである。
「キングスゾーンとジョインアゲンが強いですよ。
あとはメンバー的に、差し脚があるサムデイシュアーとエーシンエヴァンかなあ」
船橋のレースで名前を挙げたのが、愛知、高知、高知、笠松の4頭なのだから、予想としては攻めすぎ。
そして「総の国オープン」で推奨した馬券は、3連複でたったの5点という暴挙。
しかしそれが的中するのだから恐ろしい……。
夕闇迫る4時すぎ、新冠の山のほうにある牧場に行って用事を済ませたところで電話が鳴り、
「言うとおりに買ったら当たりましたよワオー!!」
という叫び声にビックリした。「何倍ですか?」「よくわからないけど3万円以上です」
そりゃ、愛知、高知、高知、笠松の4頭のうち3頭で決まったら、どえらい配当になるはずですよ。
うわあ、しかしこれで飛行機代とレンタカー代とガソリン代が全部出たわ~。静内に来てよかったぁ。
でも…………、えーと、払い戻しをどうしよう。
今から静内場外に行ってもナイター開催がないから閉まっているし……。
当時の北海道で売っていた馬券は、裏が黒い磁気券。というわけで、北海道で買った馬券は北海道でしか払い戻せない時代だった。
ということは、60日以内にまた北海道に来なければならんのか……。
さらに千歳空港に着いてケータイを見ると、トウホクビジンの厩務員さんからメールが入っていた。
「(クイーン賞の予想コラムで)ビジンさんに印をつけていたのは浅野さんだけでしたね\(^o^)/」
その文面にビックリしてレース結果を確認してみたらさらにビックリ。
トウホクビジンが3着に入っとる!!!
JRAのミラクルレジェンドが勝ち、2着が船橋のザッハーマイン。
そこから6馬身差の3着に10番人気のトウホクビジンが食い込んでいたのだ。
3連複の払い戻しは26720円。
げげげ、まじですか。いつ払い戻しに来よう……
(トウホクビジンの引退レース)
という悩みを抱えて北海道を離れ、的中馬券を自宅の棚にしまい、その翌日に日本を出国。
そして帰ってきたら世間は年末年始。
航空券は高いし自分のスケジュールは詰まっているし、北海道に払い戻し以外の用事もないし。
ということで、私の予想に乗っかって当てた担当ディレクターに「近いうちに北海道に行かないですか?」と聞いてみた。
すると、翌週に行くという返事。
すかさず渋谷まで当たり馬券を持っていき、払い戻しの代行をお願いした。
ちょっと大きめの金額だし、馬券をなくすリスクはあるけれど、あなたも儲かったんだから頼まれてくれるよね♪
というわけで、年明けの渋谷で諭吉先生をゲット。
3連単も買っていたら金額が6ケタだからさすがに自分で払い戻しに行くけれど、今回はこれでうまいこと宿題が片付いたなあ。
そして馬券の有効期限が近づいてきた1月中旬。
いきなり「いまススキノです~」という電話がかかってきた。
なんでも私の馬券を払い戻すために静内場外に立ち寄って、
ついでに浦和の第8レースだかの3連単を買ったら20万馬券が当たってしまい、宵越しの金は持たねえの勢いで豪遊中なのだとか。
なんじゃそりゃ、わらしべ長者かっ!!
その夢よ再び、のクイーン賞。今年のメンバーなら、56.5㎏でもトロワボヌールが軸不動でしょう。
◎トロワボヌール
○フォローハート
▲パワースポット
△セイカフォルトゥナ
△タッチデュール
△ノットオーソリティ
△ブラックバカラ
フォローハートは初のオープンクラスのレースで、左回りもナイターも初めてでも、力量的に好走の可能性が高そう。
パワースポットは3年前の10月を最後にダートでの勝ち星はないのだが、
スズカマンボ産駒でグランド牧場といえば、チャンピオンズカップのサンビスタと同じ。
それを思うと無視できない。
そして軽ハンデ組をチョイスするのが予想の要。
セイカフォルトゥナはJRA時代の活躍の場が新潟と福島という成績なら、高低差ゼロメートルの船橋コースは大歓迎。
昨年の4着馬、タッチデュールも押さえねばなるまい。
さらに「逃げの赤岡」を手配したノットオーソリティの残り目にも要注意。
一昨年は大井所属のサクラサクラサクラが7番人気で2着に粘り込んだという歴史もある。
流れ込みを狙うブラックバカラにもマークしておきたい。
JRAのもう1頭、ディアマイダーリンは期待より不安のほうが大きいというイメージ。
実際の馬券上では穴で押さえておく手があるかもですが、シルシの上では何もなしで!
浅野 靖典
1969年8月1日生まれ
1998年にグリーンチャンネル「中央競馬中継」のキャスターから競馬関係のキャリアをスタート。
現在は各種媒体に原稿を寄稿し、競馬関係のメディアにも出演。
JRA、青森、九州のセリ市場の司会進行役も担当している。
ときどきグリーンチャンネルの番組「競馬ワンダラー」で、ワゴン車の運転手として全国を放浪。
各地の地方競馬場には1~2年に一度以上は訪問している。