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「海を渡る活躍馬」
2016年1月18日

日本のダートグレード戦線は20年ほど前に大きく整備され、それに伴ってダートの活躍馬がたくさん誕生することになった。
そして、ダート戦線でビッグタイトルを取った馬が種牡馬入りすることも多くなってきた。
20世紀は東京大賞典や帝王賞を優勝して種牡馬入りしても、人気がイマイチとなるケースが多かった。

しかし今では様相一変。
サウスヴィグラスは大成功しているし、
ヴァーミリアンを筆頭にエスポワールシチー、トランセンド、スマートファルコン、フリオーソなどが馬産地で大繁盛。
90年代に大活躍したハシルショウグンやコンサートボーイなども、今だったら種牡馬でも成功していたかもしれないなあ。
とはいいつつも、毎年ビッグレースを勝つ馬がいるわけだから、そういう全員が全員、種牡馬になれるわけではない。
ボンネビルレコードやサクセスブロッケンは誘導馬になっているわけで……。
そういうなか、オファーが届く馬もいる。
ということで、そのオファーをもらって韓国の済州島に転居したテスタマッタを訪ねてきました。

テスタマッタ

(テスタマッタ)

テスタマッタはジャパンダートダービーを制し、6歳時にフェブラリーステークスを制した稀代の追い込み馬。
そのテスタマッタは8歳となった2014年2月2日の根岸ステークスを最後に現役引退し、そしてすぐに韓国に連れて行かれて種牡馬になった。
テスタマッタの父、タピットは北米で大人気。
なんでも昨年の種付料が30万ドルだったそうだから、ディープインパクトより高いじゃないのという状況らしい。
そういう馬の産駒で結果を残しているのに8歳まで現役だったということは、
日本で種牡馬入りしてもあまり需要が見込めないという判断が馬主サイドにあったのかもしれぬ。
そういう状況下でのオファーに応えて、テスタマッタは対馬海峡を渡ることになったのである。

韓国の競馬はソウルと釜山で実施されていて、ともに開催日は週2日。
両競馬場ともダートコースのみで、最後の直線は400m以上ある。
これまでも韓国には日本からたくさんの種牡馬が渡っており、最近はメイセイオペラ産駒やイングランディーレ産駒が重賞を制している。
しかしながら、全体的にみると実績的にはいまひとつ。
これは韓国馬事会(KRA)が北米から種牡馬を購入してきて、それを無料で提供しているという点が大きいような気がする。

そういったなかで民間牧場が種牡馬を導入するのは厳しいところなのだが、
テスタマッタは種付け料が400万ウォン(約40万円)という金額でも、初年度から相当な人気になっているらしい。
検疫を経てスタッドインしたのが4月初旬。
それでも30頭が誕生して、昨年はおよそ120頭に種付けされたとのこと。
韓国の年間生産頭数がおよそ1200頭なのだから、相当な数ですよ(実際に競馬では、これに3~400頭の外国産馬が加わります)。
ということで早ければ来年の夏に、父親譲りの末脚を発揮する姿が見られるはずだ。

ノーブルボルト

(テスタマッタの1歳牡馬。母はアジアエクスプレスの半姉のノーブルボルト)

テスタマッタをオファーした緑原牧場は、日本の血統を高く評価している牧場。
現在はテスタマッタのほかに、
オーロマイスター、スパイキュール、マイネルセレクトが繋養されており、1月下旬にはサダムパテックが加わる。
韓国の競走馬の血統はレベルアップが顕著。
あとは育成の質をもっと上げれば、国際競走でも戦える馬が出てくるはず。
それが実現するかどうかは、ホースマンたちの気持ちひとつ。
今後の競馬産業の発展に期待したいところだ。

という牧場訪問を終え、次の目的地は済州競馬場!
ここはポニーによる競馬が行われていて、私は過去2回とも大惨敗を食らった競馬場。
馬は小さいし蹄鉄は履いていないし、ポニーなのに1周1600mのダイナミックなコースだし。

出走馬

(済州競馬場の出走馬。ちなみにこの馬は328㎏)

ということで、サラブレッドと同じようにパドック診断で馬を見てもサッパリわからんのだ。
でも直線400mのレースだけは、新聞上の時計比較で「これだろう」と思った馬でワンツー。
やはり短距離戦は時計ですね。
自分の馬券はお遊びモードで買ったのでハズしましたが……
だから、1000mの船橋記念も時計優先でレッツゴー。

個人的には今回が転入初戦となるワールドエンドに注目したい。
昨年の6月に名古屋でら馬スプリントを制したが、「夏に弱い」という理由で習志野きらっとスプリントを回避。
昨秋の2戦はともに善戦止まりだったが、マイル戦だったから仕方がないともいえる。
となれば、短距離戦が豊富な南関東への移籍は前向きな選択。
赤岡修次騎手が高知開催日なのに船橋に来ているのも不気味ですわ。

◎ワールドエンド
○イセノラヴィソン
▲ルックスザットキル
△スマートアレンジ
△アルゴリズム

2010年以降の船橋記念では、
3着以内に牡馬53㎏or牝馬51㎏の馬が1頭だけ入っているのだから、51㎏のイセノラヴィソンを狙わないわけにはいかんでしょう。
同じ理由でスマートアレンジも押さえに入れておく。
ルックスザットキルは前走の兵庫ゴールドトロフィーで果敢に逃げるも失速してブービーに敗れたが、
早田功駿騎手は「状態はかなり戻っています」と、今後への手応えを感じていたようだった。
ということで、この3頭の三つ巴を本線にして勝負!


 

プロフィール

プロフィール

浅野 靖典

1969年8月1日生まれ

1998年にグリーンチャンネル「中央競馬中継」のキャスターから競馬関係のキャリアをスタート。
現在は各種媒体に原稿を寄稿し、競馬関係のメディアにも出演。
JRA、青森、九州のセリ市場の司会進行役も担当している。
ときどきグリーンチャンネルの番組「競馬ワンダラー」で、ワゴン車の運転手として全国を放浪。
各地の地方競馬場には1~2年に一度以上は訪問している。

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