
昨年は4月24日に大井競馬場で世代最初の新馬戦が実施された。
2歳戦が多く組まれている門別競馬場の新馬戦が4月22日に始まったのだから、以前とはまったく違うといえるほどの早まりかただ。
ちなみに一昨年は、5月30日の浦和が南関東での最初の新馬戦。
続いて大井、川崎、船橋の順で新馬戦が行われていった。
といっても、昨年は新馬戦を早くしたのは大井だけ。
ほかの3場はそれ以前と同様のスケジュールだった。
それに対応して、昨年4月24日の大井でデビューした2歳馬は7頭。
その新馬戦で走った7頭は、次の選択肢が“休養”または“5月19日の2歳戦”のどちらかになってしまうのは、これは仕方がないところといえるだろう。
というわけで5月19日の2歳戦は、最初の新馬戦に出走した7頭のうち最下位だった馬以外の6頭が出走し、
3着までが新馬戦と同じ順序で入線という結果になった。
その配当は、単勝1.2倍、3連複2.4倍、3連単4.5倍。
考えようによっては、馬券を買う側にとってのボーナスレース。
今年も逃さないようにしなければ(笑)。
という2015年が終わり、さて今年はどういうふうにするのかなと思っていたら、
どうやら大井以外の3場も新馬戦のスタートを早めることにしたようだ。大丈夫?
と思ったら、北海道ではそれに向けて始動を早めていた。
先週、浦河の某育成場に行ってみたら「船橋デビューの馬は、先週出発しました。
大井の馬も来週には入厩させますよ」と聞いたのでビックリ。
しかしながら、あまり頭数が揃わないであろう時期に始動させるのは、勝つ可能性が高くなるという意味で戦略的に間違っていない。
それができる背景には、日本の育成技術の進歩がある。
私が馬産地に行きだした15年ほど前は、9月だと放牧地でのんびりしている1歳馬がほどんどだった。
それが今は、9月に鞍をつける練習を始め、11月には馬にまたがって運動している馬が多い。
その時期に坂路調教をバリバリやっている1歳馬もいる。
昔は年が明ける前に坂路に入れましたよと聞いたら、早いですね~なんて言っていたのに。
これは、多くの育成場の馬場に屋根がついたことも大きいだろう。
馬場に雪が積もっては、スピードを出して走ることに危険が伴う。
また、雪からの水分が馬場を凍らせて、蹄に悪影響を及ぼすケースが考えられる。
もうひとつには、馬のプロの見る目が上がったという点がある。
早い時期から走らせたほうがいいのか、それともじっくり待つべきか。
その選別を的確にできるようになったからこそ、早い時期を目指して仕上げることもできるわけだ。
とはいえ、それができる育成場はまだ少数派。
昨年の南関東では、6月までの新馬戦はすべて出走頭数が8頭以下だった。
また、南関東でデビューするためには、北海道からの移動と、それに伴う環境の変化をクリアする必要がある。
という条件があるわけだから、早い時期の2歳戦は当てやすいという面があるのは確か。
そして素質とともに、育成牧場の技術の差も大きいような気がする。
専門紙などにはどこで育成されたかという記載はないが、その手がかりがネット上にある馬もいる。
そういう部分にも目を配りながら、まもなく始まる新馬戦に備えていきましょう。
しかしながら、今年は暖冬だったためか、どの牧場でも馬の毛艶がとてもいいのには驚きましたわ。
(2歳馬取材の風景)
気温としては、3月下旬でも昼が5度前後で、朝晩は氷点下という数字。
でも冬の間の雪が例年に比べるとものすごく少なかったというのは、2歳馬の仕上がりにとって何よりの援軍になっているようだ。
ということで、今年は南関東でも早期始動タイプが増えるかも。
門別は2歳馬がとても多く、レベル的にも高い状況が続いているから、それを避けて早めに津軽海峡を渡るという選択をする陣営も多いことだし。
それを思うと、最近の南関東の2歳秋や3歳春のレースで、
門別デビューの馬で上位独占という結果が減ってきたように感じるのは、あながち間違っていないのかもしれない。
今週水曜日のクラウンカップでは、門別デビュー馬が4頭だけ。
JRAからの移籍馬が2頭で、あとの8頭は南関東でのデビュー組だ。
そのなかで、もっとも早くデビュー戦を迎えたのが、4月22日のプレイザゲームとヤマノカミで、続いて5月14日のウワサノモンジロウ。
南関東組は5月29日の浦和で初陣を迎えたワールドプリンス、6月12日(川崎)のケイエスソードとなっている。
という原稿の流れからすると、早期デビュー組から選ぶべきという気はするが、やはりそれとこれとは別の話。
ここは逆に、デビューまで時間をかけた馬のほうに注目してみたい。
◎ディーズプリモ
○ガーニーフラップ
▲シャークカイザー
△ウワサノモンジロウ
△プレイザゲーム
△アンビリーバボー
△ヤマノカミ
中心視するのは牝馬のディーズプリモ。
同じグランド牧場出身のモダンウーマンが浦和の桜花賞を制したが、そこに向かわなかったのは陣営の戦略だろう。
2番手には連勝中のガーニーフラップを抜擢。
川崎は初めてだが、これだけ逃げ先行タイプが多いと展開がハマるような気がする。
3番手には今回が6戦目のシャークカイザーを指名。
休養明け3戦目での末脚爆発に警戒したい。
そのあとには、早期デビュー&門別デビューの4頭をマーク。
しかしまあ、クラウンカップは昨年の3連単が600万馬券だったんですよね。
こういうレースこそ、節操なくボックスで網打ちという戦法が合っているのかも?
浅野 靖典
1969年8月1日生まれ
1998年にグリーンチャンネル「中央競馬中継」のキャスターから競馬関係のキャリアをスタート。
現在は各種媒体に原稿を寄稿し、競馬関係のメディアにも出演。
JRA、青森、九州のセリ市場の司会進行役も担当している。
ときどきグリーンチャンネルの番組「競馬ワンダラー」で、ワゴン車の運転手として全国を放浪。
各地の地方競馬場には1~2年に一度以上は訪問している。