
4月12日の火曜日に佐賀競馬場にて九州トレーニングセールが開催されまして、21頭の2歳馬が登場。
そのうち13頭がセリ市場内で取引成立となりました。
売却率61.9%は、昨年の80.9%には及ばなかったものの、売却総額は2割ほどアップ。
ここ2年ほど競走馬需要が増している気配がありましたが、今年もその流れが続いていることを実感しましたね。
今年は購買登録者数が昨年よりも増えて、70名以上という人数に。
今年最初の競走馬セールということで「様子を見に来た」という人もいましたが、
「いい馬がいたら買っちゃおう」と、騎乗供覧とセリ市場を見てくださっているかたが多いように感じました。
とはいえ、セリ市場がスタートしてからしばらくは売れ行きがイマイチ。
お客様はどうしても探り探り、という感じで参加される傾向があるので、最初のうちは市場の空気が温まらないのが通例。
ということはわかっているんですけど、でも司会進行役としてはメチャメチャ焦るのですよ!!!
それでもセリの中盤には10往復ぐらいの競り上がりがある馬が登場し、
後半には再上場(いったん取引不成立となった馬が、お客様の要望で改めて上々される)の申し込みを3頭いただくという流れに。
そして再上場となった3頭が、すべて競り上がっての落札。
以前は「再上場」といえば、あっさり「ひと声」で落札するのが普通でしたが、
それが競り上がるのだから、やはり「買いたい」という意欲がたくさんあるのだなあと、改めて感じました。
そのうちの1頭が、熊本県阿蘇郡西原村にある宮村牧場から上場された、父メイショウサムソン、母シンメイジョイの牡馬。
最初に上場されたときには、どこからも声がかからず、主取りに……。
そのときは私自身、上場馬を紹介するときのセールストークに、アピールポイントを盛り込みきれなかったという口惜しさがあった。
そのときは「この馬だけ売り込みを強調すると、ほかの馬よりもヒイキしているように感じられるかな」という考えが、
頭のなかを多少よぎってしまったこともあり……。
そして上場番号21番、最後の馬に近づいてきたころ、その「シンメイジョイの2014」に再上場の申し込みがありました。
しかしその馬は上場番号5番だったために、もう馬房を片付け終わって、馬運車に乗ろうとしているところだった模様。
佐賀競馬場の馬積み下ろし場所は、高台にある1コーナーの下。
そこからセリ会場のパドックまでは、2コーナーの奥にある馬用の坂をのぼり、ぐるっと回ってこなければならない。
ということは、馬と一緒に歩くとすると、おそらく急いでも10分。司会進行係はその間、黙っているわけにはいかない。
ということで、改めて「シンメイジョイの2014」の血統背景を紹介し、
そして最初の上場時には盛り込めなかった「この馬は熊本県でうまれましたが、
1歳の夏に北海道に移動して、浦河のBTCにて育成そして鍛錬が重ねられ、再び熊本県に戻ってきたという馬でございます」ということをアピール。
しかしさすがに帰る寸前だった馬を呼び戻したのだから、それだけではぜんぜん時間が足りない。
司会屋は場をつなぐのが商売だから、表現を少しずつ変えつつ、その件も含めて3回か4回は紹介しましたね(汗)。
そうしたら、あらビックリ。再上場を申し込んだ人以外に2名のお客様がセリに参戦。
180万円からスタートして、最終的に260万円まで発展したのですよ!!!
で、買ってくれたのは、申し込み者と違う人。
最初の上場時に声がかかってあっさり落札されるよりも高い金額になったのだから、
これはケガの功名というか、メチャメチャ運がよかったということかしら?
その結果を受けてセリ市場を閉場するあいさつを言い、
パドック内にいた宮村さんに声をかけると、うれしさと同時にホッとしたという表情をされていました。
私も結果的に買い手がみつかって「ホッとした」という思いでしたわ。
今後のセリ市場では、盛り込めるセールスポイントは遠慮なく盛り込もうと思いましたね。
セリ市場には生産牧場のみなさんの生活がかかっている、
そのことは当然ながら意識してきたのだけれど、売るためにはもっともっと気合を入れないと!
(2016年九州トレーニングセール)
という「九州トレーニングセール」を終えたわずか2日と6時間後。
熊本県を中心に大きな地震が発生しました。
熊本県内には競走馬の生産牧場がいくつかあり、そのほとんどがあるのは、熊本市から阿蘇山麓にかけてのエリア。
ということは、まさに大きく揺れた場所。
もうこれはひたすら、早く沈静化されて、元の状態に戻るための作業ができる状況になってほしいと願うのみ……。
5月に再び九州に行く予定があるのだけれど、
むやみに現地に行くとジャマになるだけだろうから、復活を祈る気持ちを胸に、なるべく近くでお金を使うようにしよう。
ということで応援したいな九州産、ただ、羽田盃にも東京プリンセス賞にも出走馬がいないので、ほかのレースで見かけたら応援するぞ!
さて、羽田盃に向かう可能性もという話があったモダンウーマンは、東京プリンセス賞にエントリー。
ということもあって、羽田盃は混戦模様ですねえ。
◎タービランス
○グランユニヴェール
▲トロヴァオ
△アンサンブルライフ
△フォクスホール
△ジャーニーマン
逃げるであろうアンサンブルライフが大外枠。
それでもペースとしてはスローになりそう。
となれば、最内枠から無理なく好位付けができそうなタービランスが有利でしょう。
グランユニヴェールは堅実に差を詰めるタイプで、今回も大崩れがなさそう。
トロヴァオは前走後に福島県で疲れを取り、このレースを再始動の一戦としてターゲットにしてきました。
雰囲気的にここが狙い目とみて単穴に推します。
あとは、逃げ先行タイプを3頭置いて、粘り込みに警戒。
続いては東京プリンセス賞。
◎モダンウーマン
○リンダリンダ
▲スアデラ
△タケショウメーカー
△ラッキーバトル
△オルキスリアン
これまでのレースぶりを見る限り、モダンウーマンで盤石でしょう。
しかしリンダリンダは前走の桜花賞でもモダンウーマンを負かしに行っていましたし、
今回は北海道所属時の主戦騎手だった桑村真明騎手(東京都出身)を起用と、逆転することをあきらめていない感。
という2頭が意識しあうようなら、スアデラに割って入る余地が出てくるかも。
差し脚があるタケショウメーカーも侮れません。
ラッキーバトルとオルキスリアンは条件戦からの出走で、ここは試金石。
それでも魅力的な面を備えている馬なので、連下の候補として注目しておきます。
浅野 靖典
1969年8月1日生まれ
1998年にグリーンチャンネル「中央競馬中継」のキャスターから競馬関係のキャリアをスタート。
現在は各種媒体に原稿を寄稿し、競馬関係のメディアにも出演。
JRA、青森、九州のセリ市場の司会進行役も担当している。
ときどきグリーンチャンネルの番組「競馬ワンダラー」で、ワゴン車の運転手として全国を放浪。
各地の地方競馬場には1~2年に一度以上は訪問している。