コラム”

「ワールドオールスタージョッキーズへの道」
2016年5月16日

今年も昨年に続き、8月末にJRA札幌競馬場で「ワールドオールスタージョッキーズ」が開催される。
以前から実施されていた「ワールドスーパージョッキーズシリーズ」が昨年からリニューアルされたもので、
JRAのトップジョッキーと海外の名手が競い合う舞台だ。
そこには地方競馬所属騎手も参戦していて、過去には4名の優勝者がいる。
(石崎隆之騎手(1994年)、川原正一騎手(1997年)、鮫島克也騎手(2001年)、岩田康誠騎手(2005年=兵庫所属時))

昨年は金沢の藤田弘治騎手が1勝を挙げ、総合4位という結果を残した。
世界と渡り合える大舞台に出場することは、地方競馬のリーディングを争う騎手のモチベーションのひとつ。
各地区でトップを取れば、そこへの挑戦権が得られるのだ。
当初は南関東4名、そのほかの10地区から各1名というメンバーで行われていたが、
荒尾競馬が廃止になったことで、2012年からは「ワイルドカード」が創設された。
各地区のリーディング第2位と、南関東は第5位の騎手が出場するのが原則で、
そこに「出場騎手選定委員会」が選んだ騎手が加わることになっている。
その「ワイルドカード」が、5月15日(日)の佐賀競馬場で開催された。

帽子をかぶって記念撮影

(帽子をかぶって記念撮影)

南関東からは昨年のリーディング第5位の左海誠二騎手が出場。
左海騎手は長崎県の琴海町(現在は長崎市)が出身地で、金曜の川崎開催が終わってから実家に立ち寄り、そして佐賀競馬場に来たとのこと。
さっそくこのシリーズへの意気込みを聞いてみると、「地方競馬の騎手は誰もが目標にするところでしょうからね」との答え。
そこにはJRAの重賞を3つ勝っている余裕というものがあるように感じた。

しかしながら、なかには「トップジョッキーとの交流戦」が初めてという騎手もいる。
今年の成績が好調となっている、兵庫の下原理騎手は「こういう舞台に出られるのはうれしいし、楽しみですね」と語っていた。
園田競馬場では通算2000勝以上の騎手だけが出場できる「ゴールデンジョッキーカップ」が名物行事のひとつだが、
下原騎手はまだそこに出られる資格がない。
ハイレベルな技術をもつ騎手たちによる戦いは、レースの流れも普段とは違う感じになるらしく、
それを体験することはさらなるモチベーションの向上につながることだろう。

という、前のめり気味な気持ちで臨む騎手も多いから、このシリーズでのレースはハイペースになりがち。
今年の「ワイルドカード」も例外ではなく、
第1戦の1400m戦では、私の横にいた地元ファンのグループから「速いよ」という声が何回か聞こえてきた。
ということで、このシリーズは人気どおりに決まらないのが普通。
左海騎手は1番人気のエイシンアルマイトに騎乗して、激しい流れを好位で追走したものの、粘り切れずに5着という結果だった。

右回りのパドックでの左海騎手

(右回りのパドックでの左海騎手)

次の第2戦は、単勝上位人気馬と下位人気馬の差が大きいというメンバー構成。
それでも各騎手は「一発やったろう」という気持ちでいるから、レースの中身は激しくなった。
単勝1番人気馬に騎乗したのは、高知の赤岡修次騎手。
しかし5連勝中のその馬は、ワイルドカードに出場している地元所属、鮫島克也騎手のお手馬だったのだ。
というわけで鮫島騎手は、赤岡騎手を徹底マーク。その執拗な競りかけかたには「さすが鮫島騎手」と思わずうなってしまった。
しかしながら、残り600m付近で鮫島騎手の追撃を振り払った赤岡騎手が1着に。

向正面では離れた後方にいた岩手の山本政聡騎手、
村上忍騎手が最後の直線で猛然と追い込んできたシーンでは、佐賀競馬場が大きな歓声で包まれた。
結果としては、単勝1番人気馬から3番人気馬までが人気順どおりに入線したことになるのだが、その中身はものすごく見ごたえのあるものだった。
この結果、「スーパージョッキーズトライアル」第1ステージに進めることになったのは、岩手の山本政聡騎手と、高知の赤岡修次騎手。

ワイルドカード突破はこの2名

(ワイルドカード突破はこの2名)

山本騎手は、
出場予定だった愛知の安部幸夫騎手が落馬負傷したことで「本当に急でしたね」という繰り上がりの幸運を存分に生かしての本選進出となった。
赤岡修次騎手は一昨年、盛岡競馬場で行われた第1ステージに、暴風雨による飛行機欠航のため、高知から車と夜行バスと鉄道を使ってたどりついた。
「今年は川崎から行くので、そんなことにはならないでしょう。でも第1ステージは、南関東での騎乗期間の初日なんですよね……」と、苦笑い。
じゃあ、期間限定騎乗の開始日を1日ずらしたらいいんじゃない?
と赤岡騎手に言ってみたが、さてさてどうなりますことやら?

ワールドオールスタージョッキーズにつながる第1ステージは、6月13日(月)に盛岡競馬場で行われる。
南関東からは、森泰斗騎手、真島大輔騎手、矢野貴之騎手、的場文男騎手の4名が出場予定。
なお真島騎手は負傷休養中だが、5月末から復帰する予定となっているそうだ。
その盛岡での第1ステージはSPAT4でも発売される予定になっている。
ド平日の昼間開催ではありますが、一筋縄ではいかない激戦を目の当たりにしていただきたいと思います!

さて水曜日のメインレースは、帝王賞につながる大井記念。ここはダートグレード競走の覇者、ユーロビートでいけるでしょう!

◎ユーロビート
○ジャルディーノ
▲ケイアイレオーネ
△スコペルタ
△ナリチュウドラゴン
△ムサシキングオー

相手筆頭には、一気に上昇してきたジャルディーノを指名。
鞍上は勢いに乗る赤岡修次騎手だ。ケイアイレオーネは前走の時計は微妙なのだが、ダートグレードレースを勝っている実績を評価したい。
スコペルタとナリチュウドラゴンは、オープンで善戦止まりという馬よりは斤量も軽いし狙えそうという判断。
好位から粘り込みを図るムサシキングオーも押さえておきたい存在だ。

※最後にイベントの告知をさせてください!
5月24日(火)に、大阪道頓堀の「ロフトプラスワンウエスト」にて、
『来年のダービー馬を探そう!』というトークイベントを開催します。
大阪ですが、みなさまのご来場をお待ちしています。

日時:5月24日 19時30分~(開場は18時)
場所:ロフトプラスワンウエスト(地下鉄なんば、日本橋より徒歩5分)
http://www.loft-prj.co.jp/west/

出演:浅野靖典、乗峯栄一(作家)、岡山一成(サッカー選手・POG愛好家)
(司会:ケチャップ河合)
料金:前売1500円、当日1800円(飲食別)
(前売はイープラス、または06-6211-5592=ロフトプラスワンウエストへお電話で)



 

プロフィール

プロフィール

浅野 靖典

1969年8月1日生まれ

1998年にグリーンチャンネル「中央競馬中継」のキャスターから競馬関係のキャリアをスタート。
現在は各種媒体に原稿を寄稿し、競馬関係のメディアにも出演。
JRA、青森、九州のセリ市場の司会進行役も担当している。
ときどきグリーンチャンネルの番組「競馬ワンダラー」で、ワゴン車の運転手として全国を放浪。
各地の地方競馬場には1~2年に一度以上は訪問している。

コラム一覧