
私が馬券デビューを果たしたのは、たしか21歳の秋。
今となっては何月何日の何競馬場の第何レースがデビュー戦だったのか、過去の成績表を見返してもまったく記憶がよみがえってこないのだが、
たしか午後2時頃に高校の同級生だったヤツにウインズ後楽園に連れて行かれ、12番の馬の単勝を400円買い、それが1600円ちょっとになったはず。
と覚えているのだけれど、その年の秋の成績表をみると、12頭立て以上で実施されたレースってかなり少ないのね。
1日の半数近くが9頭立て以下という日も多いし、全11レースで実施されている日も多い。
今のJRAはフルゲートが当たり前という状況に比べると、なんて取り組みやすかったのでしょう!
そしてその当時の競馬は、単勝と複勝と枠連だけの世界だった。
それについて、初心者の私はまったく不思議に思わなかったし、
友人からもウインズでガヤガヤしているオジサンたちの独り言からも、不満などを聞いたことはなかった。
その当時はマークシートがない時代。
窓口のおねえさまに買い目と金額を口頭で伝える以外に馬券を買う方法はなかったから、
その3種類というのはちょうどいいあんばいだったようにも思う。
枠連の組み合わせは最大で36通り。
したがって、万馬券なんぞはめったにお目にかかれないし、そんなものを狙う気も起こらなかった。
その年の年末、オグリキャップが引退レースを飾った有馬記念は、
枠連で2、3、4、7のボックス(という表現方法も当時はなかったですが)に加えて7-7と4-4を強弱つけて買い、
結果としては3-4の7.2倍が当たったのだが、黒字はほんのちょっとだったなあ。
それから2年ほど、週に2回は競馬場に行き、買えるレースはすべて買うという状態が続くことになりまして(汗)。
そのころは今よりも直観に頼る予想をしていた気がする。
そして、今よりも馬券を買う勇気がたくさんあった。
つまり「怖いもの知らず」。
血統というファクターにも気づいていなかったその当時は、要するに騎手のヘルメットの色が走っていたようなもの。
それでけっこう楽しかったのだから牧歌的ですわ~。
その翌年、1991年9月からJRAで馬連が導入された。
競馬中毒の患者だった当時の私は、青森港を午前2時すぎに出る船に乗り、先行発売された函館競馬場まで馬連を買いに行った。
いやあ、アホですねえ。
(函館競馬場でもらった記念品)
ただ、その当時の秋の北海道開催は頭数が揃わないのが普通。
私がわざわざ行った9月1日も、全10レースのうち10頭以上が出走したのは2つ。
ほかには9頭立てが2つと、馬連発売レースは4つだけだった。
それでも若かった浅野青年は「馬連を買えた」と大満足。
その1か月後に全国で発売されることになった馬連は、あっという間に浸透しましたねえ。
続いてワイドが導入され、続いて3連複、そして3連単へと刺激度が上がっていくことに。
つい25年前は枠連しかなかったんですよ!?
それを思うと、なんて今はインフレ化が進んだのでしょう。
今の私は、たとえば40倍の馬券が当たっても「たいしてつかないなあ」と思ってしまうありさま。
それに呼応して、1点あたりの購入金額はデフレ化が進んだ。
この間、川崎の新馬戦で久々に1点あたり4ケタの馬券を買ったわ~。
刺激は慣れてしまえば、もはや日常。
それに飽き足らず、さらに強い刺激を追い求めるのは危険だと、おそらく誰もがなんとなく知っていると思う。
そんな話をここまで延々としてきたのは、つい先週、6月10日から韓国競馬にも3連単が導入されたからなんですよ!
これまでは、単勝、複勝、馬連、馬単、ワイド、3連複でファンが熱くなっていた。
そこに3連単という刺激物が与えられたわけだから、さらにアツくなることはまちがいない。
日本の3連単は、まず競艇で導入され、続いて競輪でも買えるようになった。
競艇は120通り、競輪は504通りだから、そのあたりに監督官庁の配慮が感じられる。
競馬の3連単は、2002年4月の浦和からスタート。
しかし当初は発売レースが2つだけで、しかも9頭立て以下に制限されていた。
それでも3連単を買いたくて、浦和競馬場に突撃したなあ。
しかし韓国はいきなり全レースで発売。
ただ、発売は電子投票だけという形にしていたので、窓口の混乱はまったくなかった。
韓国の3連単は、電子投票の会員になる、またはスマホに専用アプリを導入することで買うことができる。
チャージの方法は、窓口でお金を出してチャージ券を買い、その番号をアプリに入力するという形。
私もそのアプリをインストールしようと頑張ったのだけれど、韓国のケータイ会社と契約していないとできないらしい。
というわけで、記念すべき導入直後の3連単は買えず……
(モバイル投票端末)
ということもあって、3連単の売上額は3連複の2割以下。
買える人を制限するという形を取って様子見の人を作る作戦は成功したという感じがする。
しかしながら、レースが終わって払い戻しが発表されたときのファンの反応は、昔の日本を思い出しましたねえ。
6月12日(日)の釜山競馬第2レースで、金沢から遠征している米倉知(さとし)騎手が単勝63倍の馬で勝ったのだが(12頭立て10番人気)、
確定後に大型ビジョンに表示された「7528.3」の数字に、どよめくことどよめくこと。
私もかつて、そういう大きな数字をネタに、仲間といろいろ話したことを思い出しましたわ。
そうか。
今の日本は昔に比べて、友達や仲間同士でつるんで競馬をしている人の割合が減ったような感じがあるから、
どよめきの声が小さくなったのかもしれないなあ。
(今年の韓国オークスの覇者はオトゥクオトゥギ号)
韓国もおそらく、そのうちマークカードで買えるようにするのだろう。
その刺激はいかほどか、ちょっと心配という気もする。
私はすでに、3連単でないと満足できない体になってしまいましたが……。
でもときどき「25年前にタイムスリップした」と思って、枠連だけを買うこともありますよ!
その作戦を今年の京成盃グランドマイラーズでいかがでしょう。
昨年はソルテが圧勝したが、2着以下はやや混戦という感じでしたが……。
◎モンサンカノープス
○レガルスイ
▲ポイントプラス
△グランディオーソ
△タイムズアロー
△ムサシキングオー
モンサンカノープスが南関東で3着を外したのは、1800mのレースだけ。
安定感があるマイル戦なら今回も軸不動だろう。
レガルスイも1600mでは15戦して3着内率100%。
こちらも崩れるシーンは考えにくい。
ポイントプラスは昨年のこのレースで大出遅れしながら4着に食い込んだ。
今年もスタートには心配が残るが、堅実な差し脚には要注目だ。
あとの3頭は、この条件だとひと押しに課題があるかなあという印象。
ということで、枠連3-5で一本勝負!と最初は思っていたのだけれど、やっぱり3連勝式に手を出してしまうかも……
浅野 靖典
1969年8月1日生まれ
1998年にグリーンチャンネル「中央競馬中継」のキャスターから競馬関係のキャリアをスタート。
現在は各種媒体に原稿を寄稿し、競馬関係のメディアにも出演。
JRA、青森、九州のセリ市場の司会進行役も担当している。
ときどきグリーンチャンネルの番組「競馬ワンダラー」で、ワゴン車の運転手として全国を放浪。
各地の地方競馬場には1~2年に一度以上は訪問している。