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「ジョッキーベイビーズ九州地区予選」
2016年8月29日

ここ数年は、夏にJRA宮崎育成牧場で実施されている「馬に親しむ日」の手伝いに呼んでいただいております。
流鏑馬やポニーショー、乗馬体験会などで楽しんでいただくこのイベントで、長い時間が割かれているのが「キャラクターショー」と「競馬」。
競馬はサラブレッドが出場する「草競馬」と、
10月9日に東京競馬場で実施される「ジョッキーベイビーズ」の出場者を決める「ポニー競馬」の二本立てで行われています。

昨年も「南関道中膝栗毛」で紹介させていただいたこのイベント、ここから未来のスタージョッキーが現れる可能性があるわけですね。
ここでの結果が今後の人生を左右するかも、というのもあながち大げさではないような気がしますわ。
という大舞台への予選だから、出場騎手……よりも親のほうが気合たっぷり。
決勝戦はJRAが用意する馬に乗るのだが、予選の馬は自前で用意するのがルール。
だからスピードがある馬を準備して、勝負カイバを食べさせて、
予選の日をピークに仕上げていく、という準備過程には、家族の力がとても重要になるわけです。

さて、今年の出場騎手は12名の予定が直前の取消があって10名に。
まずは午前中に10名から6名に絞り、午後に予選の決勝戦を行うという段取りで進められます。
ということで、まずは3頭立てが2レースで、4頭立てが1レース。
それぞれ2着以内に入れば、午後の決勝戦に出場できます。
条件は予選も決勝も直線300m。
予選を経て決勝戦の出場資格を得た6名は、小学5年生から中学1年生。
6名すべてが、将来は騎手になりたいとのこと。

しかしながら、そのなかにはこれから背が伸びそうという人も。
騎手になるためには、運動神経のよさと騎乗技術の高さだけではどうにもならない部分があるんですよねえ。
そう考えると、いま騎手のライセンスを持っている人は、それを大切にしてほしいという気もするなあ。
その決勝戦、1着を勝ち取ったのは、小学6年生の上薄龍旺(かみすき・りお)くん。
内枠からのスタートでも馬のダッシュ力で一気に外ラチ沿いまで寄せていき、最後は昨年の覇者、福元くんに1馬身差をつけての優勝となりました。

優勝の記念撮影

(優勝の記念撮影)

しかし毎年思うのは、みんなちゃんと勝負服を用意してくるものだなあということ。
今年の決勝戦に進んだ佃隆太くんが着ていた服は、佐賀競馬の騎手だった下條知之騎手のもの。
さらに福元くんは、同じく佐賀の元ジョッキー、青柳健一騎手の勝負服を着ていた。
もしかして、本人からもらったのかな?

鹿児島県と宮崎県の育成場には、佐賀、荒尾、中津の各競馬場で働いていたホースマンがいることも多い。
「馬に親しむ日」に行われる1800mの草競馬でも、元騎手が手綱を取っていたことがある。
ちなみに今年の草競馬を制した日高勇さんは、ノーザンファームで働いていた人らしい。

昨年に続いてゲストとして来場した木之前葵騎手(愛知所属)も宮崎県出身。
南九州出身のホースマンはとても多いんですよね。
ただ、九州の馬産は昭和の頃に比べるとかなり縮小してしまって、種牡馬のラインナップも寂しくなりました。
現在はカンパニー、ミスキャスト、ラブイズブーシェ、ダノンゴーゴー、ストラヴィンスキー、ダンツシアトルあたりが主だったところ。
宮崎県はいつの間にか、種牡馬がゼロの県に……。


木之前騎手と上簿くん

(木之前騎手と上薄くん)

そんな状況でも「馬に親しむ日」の前日に小倉競馬場で行われた、
九州うまれの2歳王者決定戦「ひまわり賞」での様子をみると、九州の牧場の人はみんな夢を持っているんですわ。
「また新しい繁殖牝馬を買ったよ」とか、「北海道のセリでいい値段がついてくれたよ」などと言う、その表情が明るくて。
その一方で、馬産から撤退してしまった牧場は確かにあるわけで、それをカバーするまでには至っていないのが現状といえば現状。
でもそれを逆手に取れば、牧場を居抜きで借りるなりして、新たに馬産に参入できる余地があるということなのですよ。
これから脱サラしたい、または田舎暮らしをしたいと考えていらっしゃるかた、九州で競走馬を生産するという道がありますよ!

さて、8月31日に行われるのは、アフター5スター賞。
副題はJBCスプリント指定競走となっております。
ところで佐賀競馬場でJBCが実施される日は、果たして来るのでありましょうか?

◎ルックスザットキル
○アメージングタクト
▲ラクテ
△プラチナグロース
△サトノタイガー
△アドマイヤサガス

台風の影響がありそうな雰囲気で、前に行った馬が有利と推測。
で、このメンバーならルックスザットキルが逃げられるんじゃない???
成績が示すとおり、楽に逃げられなければ残念、というタイプ。
ただ、鼻出血の経歴がある馬だから、血管が硬くなりやすい冬よりは夏のほうがいいはず。
ということで狙ってみます。

相手筆頭は、距離短縮がプラスのアメージングタクト。
ラクテもスピード的に通用するかなとは思うのだけれど、過去にこのレースを制した3歳馬は、斤量が50㎏か51㎏だったのですよ。
その分を少し割り引いて3番手に。
連勝中の勢いがあるプラチナグロース、地力上位のサトノタイガーは連下に。
アドマイヤサガスも実力的に無視できないのだけれど、さすがに59㎏はちょっと厳しそうとみて押さえまでにとどめておきます。




 

プロフィール

プロフィール

浅野 靖典

1969年8月1日生まれ

1998年にグリーンチャンネル「中央競馬中継」のキャスターから競馬関係のキャリアをスタート。
現在は各種媒体に原稿を寄稿し、競馬関係のメディアにも出演。
JRA、青森、九州のセリ市場の司会進行役も担当している。
ときどきグリーンチャンネルの番組「競馬ワンダラー」で、ワゴン車の運転手として全国を放浪。
各地の地方競馬場には1~2年に一度以上は訪問している。

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