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「第1回 韓国国際競走」
2016年9月14日

園田競馬場で的場文男騎手のお誕生日を祝ったあとは、韓国に移動。
9月11日に実施される「第1回韓国国際競走」を観るための訪問であります。
といっても私は、木曜日と金曜日はプロ野球を観に行ったくらいだから気楽なもの。
馬に携わっている人たちは、日本からの遠征馬が4頭いても、けっこうな緊張感に包まれていることだろうなあ。
という雰囲気を感じ取ったのは土曜日。
韓国馬事会(KRA)主催の夕食会に出席していた調教助手さんたちの表情には、なんとなく硬い感じがありました。
唯一、リラックスした表情を見せていたのが吉原寛人騎手(グレープブランデーに騎乗)。
やはりジョッキーは、オンとオフをハッキリさせられることが重要なのかもしれないなあ。

レース前日のレセプション

(レース前日のレセプション)

でもこれから未知の世界に挑むのだから、心のなかにはおそらく不安があったかと。
どんなペースになるのかわからないし、さらにフルゲートとなる16頭立て。
個人的にもレースのことをいろいろ聞かれましたが、予想のしようがないというのが正直なところでしたわ。

韓国で初めて国際競走が行われたのは、2013年9月1日。
大井と韓国の馬による「日韓交流戦」で、勝ったのは的場文男騎手騎乗のトーセンアーチャー。
ビックリするようなハイペースになって、ほとんど最後方から直線だけで差し切ったという内容でした。
その翌年もどえらいハイペースになって、シンガポールのエルパドリーノが直線一気の脚で勝利。
韓国の競馬はいろいろな事情があってハイペースになりがちなのですが、
しかしそれが世界各地から7頭の遠征馬が含まれた競走でも同じようになるのかしら?
それでも事前の戦力分析で、1800mのコリアカップに出走するクリソライトは超有力、
コリアスプリントに出走するグレープブランデーは善戦までかな、というイメージはつかめていたんですけどね。
そして結果もそのとおりになるとは、めでたしめでたし。
では各レースの着順です。

第1回 コリアスプリント(韓国G1・1200m)
1着 スーパージョッキー(香港) 1分11秒4
2着 マチョンボルト(韓国) 4馬身
3着 グレープブランデー(日本) 1/2馬身

第1回 コリアカップ(韓国G1・1800m)
1着 クリソライト(日本) 1分52秒3
2着 クリノスターオー(日本) 6馬身
3着 トリプルナイン(韓国) 10馬身

コリアカップのゴール前

(コリアカップのゴール前)

となりました。
第2回以降はこれがモノサシになるわけで、出走馬の選定から予想から難しくなっていくのかも。
カップはとくに「1着賞金が約5千万円ならウチも行こうか」などという思惑が出てくることが予想されるわけで。
日本テレビ盃とならぶJBCへのステップ競走と捉える陣営が出てきてもおかしくないですからねえ。
今後はともかく、まずは試行錯誤の始まりとなる第1回は、それほど大きな事故や事件も起きずに終了。
むしろ問題はこれからでしょう。
韓国の競馬ファンのほとんどは「番号が走っている」という感覚で、むしろ馬券ファンと言うべき状況。
その意識をどうやって変えていくのか。
これが当面の課題だと思うんですわ。
だいたい、ゴール前で馬や騎手の名前を叫んでいるオッサンなんて全くいませんからね。
そうです、みんな番号。
今年は3歳三冠路線が現在の体系になってから、初めて三冠馬が誕生したのですが、あんまり話題になっていないっぽいし……。

クリソライト優勝

(クリソライト優勝)

これは「競馬をハデに広報してはイカン」という、韓国政府側の意向によるところが大きい様子。
というわけでKRA側もそれをなんとかしようと、競馬場のスタンド内にミニテーマパークを作ったり、内馬場にきれいな公園を作ったりして、
イメージアップに努めている。
釜山の競馬場は「世界最高の馬テーマパーク」というキャッチコピーをつけたりして。
その反面、以前はあった競馬グッズ売り場がなくなるという残念なことも。
いわゆる「競馬本」はほとんどないし、競馬文化はまだまだ未発達だなあと思いますね。
日本に置き換えれば、かつての「コワイおじさんたちがいっぱいいる場所」というイメージ……
でも日本と違い、場内には子供がたくさんいるんですけどね。

しかしそんな状況なので、2つの国際競走の馬券売上高は、韓国馬しか出ない平場のレースよりも下でした……。
いやしかし、そういう馬券ファンに支えられているなかでの国際競走だからこそ、千載一遇の儲けるチャンスだったんですよ!!!
だってスプリントは、勝ち馬の単勝を持っていて、3着が日本馬。
だったらその2頭から3連複で総流ししておけば、黙って15万馬券が取れたのに!!!
カップもそうですよ。
一応、馬券は単勝も馬連も取ったけれど、日本の力を信じていれば、馬連6.1倍がさらに美味しくなったのに!!!
そしたら飛行機はLCCじゃなくてフラッグキャリア、宿は学生寮じゃなくて4つ星5つ星がついてるホテルになったのにさあ(涙)。
ま、一応はそこそこプラスになったんですけどね。
でも、あとで考えると本当にもったいないことをしたなと大反省。
次の海外遠征のときはビシッと勝負してやるぞ!!!

その前に控えているのは木曜日のテレ玉杯オーバルスプリント。
韓国で不向きな展開のなか3着にまで押し上げた吉原騎手で決まりでしょう!

◎ソルテ
○ニシケンモノノフ
▲レーザーバレット
△リアライズリンクス

……とシルシを打ってみたものの、逃げ先行馬ばかりじゃないですか!
となればハイペースは必至。
しかしソルテは最近こそ逃げて結果を残していますが、昔は追込みタイプだったのよね。
ならば先行争いをする馬たちの外で様子を見ながら、多少の距離ロスはあっても全速ターンで押し切れると想像します。
展開的に有利になりそうなニシケンモノノフが強敵。
レーザーバレットは小回りで馬群を縫うようにして伸びてくる競馬で真価を発揮しそうです。
あとは流れ込みタイプのリアライズリンクスを押さえにマーク。
ということで、ここは絞って妙味かと!?




 

プロフィール

プロフィール

浅野 靖典

1969年8月1日生まれ

1998年にグリーンチャンネル「中央競馬中継」のキャスターから競馬関係のキャリアをスタート。
現在は各種媒体に原稿を寄稿し、競馬関係のメディアにも出演。
JRA、青森、九州のセリ市場の司会進行役も担当している。
ときどきグリーンチャンネルの番組「競馬ワンダラー」で、ワゴン車の運転手として全国を放浪。
各地の地方競馬場には1~2年に一度以上は訪問している。

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