
7月13日に大井競馬場で行われたジャパンダートダービー。
先行グループの一角を追走していったキョウエイギアが最後の直線で一気に伸びて、2着に4馬身差をつけて優勝を飾りました。
そのキョウエイギアは青森県うまれ。
青森県出身馬としては2004年2月4日に川崎記念を制したエスプリシーズ以来となる、G1級レースの優勝であります。
という久々の快挙なので、先週の水曜日に八戸市でおよそ50名の参加者を集めて祝宴が開かれました。
(祝賀会開始前)
キョウエイギアは父がディープスカイで、母がローレルアンジュ。
母は2006年のエンプレス杯の優勝馬で、母も青森県うまれ。
で、いま気がついたんですけど、ローレルアンジュはJRAの南田美知雄厩舎から南関東に移籍して2戦目にエンプレス杯を勝利した模様。
つまりこれって、今年の東京ダービー馬、バルダッサーレとだいたい同じパターンやんけ!
という話は余談で失礼。
ともかく地元の競走馬の生産牧場にとっては、悔しいながらも喜ばしいというところ。
この会に参加した牧場関係者のみなさんは「次はウチが」という気持ちを強くしたことでしょう。
キョウエイギアの生産者は村上幹夫さんとなっているが、うまれた場所は村上さんファミリーが経営するワールドファーム。
八戸の市街地からみると南東にある牧場で、近くには石灰岩の大生産地、通称「八戸キャニオン」がある。
というわけで、この地域の水や草木にはカルシウム分がたくさん。
八戸にある家の多くはその成分が水道管に付着して詰まってくるから、
3年に1回ぐらいは取り換える必要があるそうで、1日に10リットル以上も水を飲む馬は、そのカルシウム分が骨の密度を濃くする素になる。
これって、丈夫な馬をつくるためには、かなりのアドバンテージですよ。
たとえば英国の馬産地は石灰岩がゴロンゴロンしているところが多いし、アメリカのケンタッキーには世界一長い鍾乳洞がある。
ちなみに「八戸キャニオン」は、日本でいちばん標高が低い場所。
石灰岩を掘り進んでできた窪みは、すでに海抜マイナス170mを超えているらしい。
というわけで、私が青森県八戸の競走馬市場をセールスするときにときどき使う「足は遅いかもしれませんが、体はものすごく丈夫です!」
というキャッチフレーズは、あながち間違った話ではないのですよ!
そう、競走馬は丈夫がいちばん。
骨が弱かったらそもそも競走馬になれません。
というわけで、青森のサラブレッドはもっと注目されてもいいはずなのですよ。
ただ、青森は北海道にくらべて、時計の進みかたが遅いというかなんというか……
まだ昭和っぽい香りが漂っている牧場がたくさんあるんですよね。
そういった牧場のなかには、競走馬をスッパリとあきらめて、野菜や養鶏、さらにはダチョウの飼育に転身したところなどもある。
そういった状況ながらもサラブレッドを続けている牧場はたくさんあるのだが、タイプが2つに分かれているような感じがする。
ひとつは「向上心をもって、改善の情報収集と試行錯誤をしている」牧場。
もうひとつはいわゆる「旧態依然」の牧場。
競走馬市場にはその2タイプの牧場が両方出てくるわけですが、しかしながらすべての牧場に向上心と改善を要求するのは難しいところなんですよ。
その理由は、高齢化と後継者難。
市場がアラブを含めて4日間開催だった時代を知っている大ベテランは、今のやりかたを変えようという考えにはなかなか至らない。
かつての八戸市場には、ハナセールとかシャマードシンボリとかタイガーチャンプなどなど、
かなり渋い種牡馬の産駒が出ていたのだが、しかし今は北海道在住の種牡馬の産駒が多くなっている。
そういったチャレンジをするかしないかというところにも、意識の差が出ているといえるんですよね。
それでも育つ環境がすばらしいから青森の馬は丈夫。
その素材に上級の馴致と育成を施していけば、きっと大輪の花を咲かすはず……
(優勝レイ)
ということで、馬主資格をお持ちのみなさまは、来年7月の八戸市場にぜひぜひご来場くださいませ!
ところでキョウエイギアは、市場取引馬ではなく、牧場と馬主さんのマッチングがうまくいった例。
先日のシリウスステークスでは休み明けの影響か、大敗してしまいましたが、
ジャパンダートダービーで負かしたケイティブレイブをモノサシにすれば、巻き返しの可能性は十分にあるはず。
古馬の壁は厚いけれども、年末の東京大賞典に出走してくれることを期待したいものです。
さて、今週の鎌倉記念は残念ながら青森県出身馬は不在。
いちおう、千葉県出身馬はいますが……。
◎ストーンリバー
○ゴーフューチャー
▲マルボルクシチー
△ラペルドゥリデュ
△キャンドルグラス
△サイバーエレキング
ストーンリバーは馬主が石川さんで、JRAでも馬主資格をお持ち。
そういう人がここでその名前を使うってことは、相当な期待馬に相違ない!?
というのは憶測だけれど、逃げ差し自在の脚質と実績は、初めての左回りも遠征競馬も克服できると判断してみた。
相手筆頭は休み明けでも上位のスピードがあるとみてゴーフューチャーを指名。
マルボルクシチーは先行力があるタイプで、台風の影響が心配される空模様なら再度の押し切りまで狙えそうだ。
まくり脚があるラペルドゥリデュが連下の筆頭。
キャンドルグラスは叔父にテレグノシスがいるなど、活躍馬多数の一族だけに侮れない。
穴はエンプレス杯つながりでサイバーエレキング。
混戦必至のレースですから、合言葉は「流すな・ボックス」で!!
浅野 靖典
1969年8月1日生まれ
1998年にグリーンチャンネル「中央競馬中継」のキャスターから競馬関係のキャリアをスタート。
現在は各種媒体に原稿を寄稿し、競馬関係のメディアにも出演。
JRA、青森、九州のセリ市場の司会進行役も担当している。
ときどきグリーンチャンネルの番組「競馬ワンダラー」で、ワゴン車の運転手として全国を放浪。
各地の地方競馬場には1~2年に一度以上は訪問している。