
先週水曜日の埼玉新聞栄冠賞。
タイムズアローが1着で、手綱を取った西村栄喜騎手はものすごくうれしそうに表彰台に立ちましたね。
これが今年の6勝目。
インタビューでは「荒尾から来て、表彰台に上がるのは初めて」と言っていましたが、そうだったのか……と、こちらも感慨深いものがありました。
タイムズアローは主戦の真島大輔騎手がケガの治療があるらしく、この浦和開催はまるまるお休み。
ということで、普段の調教を担当している西村騎手に白羽の矢が立ったということになるのですが、
こういうときってすごく緊張するんでしょうなあ。
だって、負けたら自分のせいになってしまうわけなのだから。
という状況のなか、大外枠からうまく流れに乗って好位につけて、勝負どころから徐々にスピードを上げての差し切り勝ち。
外から見ている限りでは、残り100mあたりでセーフティリードかなと思えたのだけれど、
西村騎手は最後までけっこう気合を入れて追っていましたね。
こういうところからも「勝ちたい」という気持ちよりも「勝たなければ」という思いのほうが強かったのではないかという感じがします。
ということで、西村騎手は2009年のKRAカップマイル(釜山)以来の重賞勝利。
韓国では短期免許を2度受けており、重賞を勝ったのは1回目のとき。
その後、所属の荒尾競馬は2011年の年末を最後に廃止されてしまい、
西村騎手はその翌年の2月まで韓国で騎乗してから船橋にやってきたというプロフィール。
日本ではもうすぐ1000勝という成績ではありますが、2014年が4勝、2015年が5勝と、メモリアルになかなか近づかないという成績です。
ちなみに韓国では497戦60勝の成績を残しているので、全体では1000勝を達成済。
でもここまで来たなら日本だけでも大台に乗ってほしいと思うところであります。
(西村栄喜騎手=7年前の写真です)
ただ、なんというか、南関東に限らない話ではありますが、勝ち星が上位の騎手に偏る傾向があるのが厳しいところ。
その反面、歯車がかみ合い始めたらその回転速度が一気に上がるという面もあります。
矢野貴之騎手はその最たるところで、2002年に高崎でデビューして、2004年の廃止後に大井に移ったという経緯はあっても、10年強で200勝少々。
それが2014年に98勝、2015年が204勝と一気に増えて、それまでの10年は何だったのよという状況に。
これは騎乗技術が急に巧くなったというよりも、良い縁に恵まれて軌道に乗って、そこから好循環が好循環を呼んでいる。
それが大きな要因だと思います。
そういった例は以前から南関東ではよくあったことで、戸崎圭太騎手もそのひとり。
2003年までは年間40勝に届かない中堅グループにいたのに、そこから一気に成績を上げて今の活躍にまで発展しているのだからすごいこと。
その当時は客として南関競馬を見ていた私にとっては「いつの間にこんなに勝つようになったの?」というビックリ感がありましたね。
それだけ、南関東では好循環の波をつかんで、それに乗るということが重要なのでしょう。
でも、どうすれば波に乗れるのかという、必勝法みたいなものはないわけだから難しいところ。
芸能界でも長い下積み生活から一気にブレイクする人がよくいますが、本当にこれは運と縁。
仮に、ブレイクしていない人より才能的に劣っていても、周辺環境から学んで成長していくというケースはよくあることですし。
南関東には所属騎手が100名くらいいますが、そのなかにはちょっとのきっかけでブレイクできる人も多いように思うんですよね。
そのための第一歩といえば、やっぱりまずは日々の仕事をきちんとやることになるのかなあ。
あとは貪欲さなのかもしれないですね。
このあたりは向き不向き、運不運があるので難しいところですが……。
ともあれ、重賞タイトルを西村騎手がゲットできたのは喜ばしいこと。
縁の下の力持ちも必要だけれど、やはり騎手なのだから表舞台で活躍するのが本望でしょう。
今は成績がいまひとつという騎手のみなさんも、一気に成績を伸ばすときが来ることを期待しております!
水曜日のマイルグランプリも下剋上が期待できそうなメンバー。
出走馬のなかに重賞ウイナーは半数以上もいるけれど、1800m以上のほうが向いているタイプもいるような?
◎コンドルダンス
○グランディオーソ
▲セイスコーピオン
△ムサシキングオー
△ハッピースプリント
△ゴーディー
というわけで、あえて重賞未勝利のコンドルダンスから。
2走前の千葉日報賞は外枠優勢の傾向に乗った感がある勝利でしたが、前走のフリオーソレジェンドカップはハナ差勝ちとはいえ、
地力で相手を負かしたという印象。
この馬は夏から秋にかけていい成績を残すタイプという点も加味して抜擢します。
グランディオーソも重賞未勝利ですが、一昨年のマイルグランプリで2着に入って、浦和記念でも2着だから、実績的には同等以上。
昨年はソルテに離されての4着でしたが、今年は展開的に落ち着きそうで、この馬の差し脚が届くとみます。
3番手は前走圧勝のセイスコーピオン。
母のスコーピオンリジイは2004年のローレル賞の優勝馬ですよ。
なつかしい。
それを含めて単勝込みでの3番手。
あとは、昨年の2着馬ムサシキングオーを連下に。
ハッピースプリントは久しぶりの南関重賞なら実績と実力は断然でも59㎏は微妙かも、というところで押さえまで。
ゴーディーは力量的に劣勢でも、なんとなく流れに乗ってきそうな気がするので穴として挙げておきます!
浅野 靖典
1969年8月1日生まれ
1998年にグリーンチャンネル「中央競馬中継」のキャスターから競馬関係のキャリアをスタート。
現在は各種媒体に原稿を寄稿し、競馬関係のメディアにも出演。
JRA、青森、九州のセリ市場の司会進行役も担当している。
ときどきグリーンチャンネルの番組「競馬ワンダラー」で、ワゴン車の運転手として全国を放浪。
各地の地方競馬場には1~2年に一度以上は訪問している。