コラム”

「速さだけではない、琉球競馬」
2017年2月6日

1月29日の日曜日、いつもとはちょっと違う競馬を見に行ってきました。
会場は沖縄県沖縄市にある「沖縄こどもの国」。
そこで琉球競馬が開催されるのです。

たしか7年くらい前に琉球競馬の番組をやったことがあるのですが、しかし実際のところを見たことがなかったんですね。
それが頭に引っかかっていて「早いところ行かなきゃいかんだろう」と考えていたわけでありました。
しかしタイミングが合わず……の連続で、これまで13回もスルー。
やっと14回目となる今回、見にいくことができたのであります。

ちなみに「琉球競馬」はカタい呼びかたで、ここでは「ンマハラシー」という名称。
琉球王朝の時代から続いていた“競馬”で、直線コースを2頭立てで走り、スピードとともに走りの優雅さと美しさを競うものでした。
ただ、それも太平洋戦争を機に行われなくなってしまうことに。

馬は日本のどこでもそうだったように、沖縄でも物資の運搬や人を運ぶための動力として活躍していたのですが、
自動車や農業機械の普及とともに馬の数も減少。
宮古馬、与那国馬といった在来種は保護されていますが、現在の沖縄本島でそれを復活させるのは大変だったことでしょう。

案内板

(案内板)

今回の出場馬は28頭。
沖縄こどもの国に繋養されている馬のほかに、琉球大学馬術部や県内の乗馬クラブ、さらには久米島からの遠征馬も来場と、
なかなか賑やかな顔ぶれになりました。

そのうち2頭がシードされ、1回戦は全部で13戦。
その走りを審査するのは、琉球競馬を実際に見たことがあるという長老、照屋寛得さん、宮里朝光さん、そして沖縄県馬術連盟理事長の花城薫さん。
正面から審査する3名に加え、横から見る安藤泰幸さん(北海道東部の乗馬クラブ代表)と岡部幸雄さん(元JRA騎手)の5人が、
赤か白か「優れている」と判断したほうの旗を上げます。

もう13回も開催しているものだから、出場馬の序列はある程度ついている感じで、
事前の予測では前回の覇者である「どぅなん」号が最有力とのこと。
本来は“側対歩”という同じ側の前脚と後ろ脚が同時に前後する形で走るのが理想なのですが、
沖縄ではその調教をするのが技術不足で難しいとのこと。
ということで、ほとんどの馬が普通の“斜対歩”で走りました。

でも「走る」といっても、馬術用語的には「速足」。
4本の脚すべてが地面から離れたら減点されてしまいます。

という第14回ンマハラシーは、雨のなかで競技開始!
第1回戦は初出場の人馬が多かったこともあって実力差が大きく、審査員全員から同じ色の旗が上がる勝負が続くことに。
しかし雨が上がった2回戦目以降は、徐々に甲乙つけがたいという勝負が増えてきました。

こうなると勝負は白熱。
トーナメントは徐々に絞られていき、準決勝で琉球大学馬術部員が乗る「あおぞらつばさ」号が敗れたことで、
決勝戦は沖縄こどもの国の所属馬同士の戦いに。
ディフェンディングチャンピオンの「どぅなん」号と、芦毛で側対歩もちょっとできる「ななみ」号との対戦は、馬場を2往復して競います!

実力者どぅなん号

(実力者どぅなん号)

なみ号は側対歩の使い手

(ななみ号は側対歩の使い手)

その結果は、
4対1で「ななみ」号が優勝!
なかなか文字ではその面白さが伝わらないかなという気はするのですが、速さだけが勝敗の要素ではないという競馬はとても興味深いもので、
また観に来たいと思えるイベントでした。

ななみ号が優勝

(ななみ号が優勝)

ただ、これまでは年に3回実施されていましたが、来年度は2回になる予定。
今までは「沖縄市伝統文化観光推進事業」として市から助成金が出ていたのですが、それが今年度で終わってしまうということで、
来年度からは沖縄こどもの国の独自事業として実施していくそうです。

でもこれは立派な観光資源になりますよ。
なのに今の状況では、琉球競馬の大会があるということを知らない人が多そうなのがなんとも。
これが目的で沖縄に行った私でさえ、沖縄こどもの国のホームページの探さないとわからないところで開催告知を発見しましたし。

実際、今回の観客数は50名くらい。
雨の影響は大いにあったとは思いますが、それでも本当にもったいないという感じでしたね。
競馬ファンが沖縄旅行をするときに、ちょうどこのイベントがあったらメチャメチャ思い出になりますよ。
ということは逆もまた然り。
もっとたくさん告知をすれば、これが沖縄に行く目的のひとつになりうるくらいのパワーがあると思うんですよ。

そうやって観客が増えていくことが、琉球競馬の再興につながっていくはず。
独自事業でするにしても開催費用はバカにならない金額だろうし、沖縄県観光協会あたりから公的資金を引っ張れないものでしょうかねえ。
それにしても、今や47都道府県のうち2つだけになった「紙の投票券を売っていない」沖縄県と長野県で草競馬が行われているのは不思議!
というわけで、次回の「ンマハラシー」は時期未定だそうです。
沖縄旅行を予定されているかたは、ぜひこちらにもアンテナを向けておいてください!

でも我々が親しんでいるのは、すべての脚を地面から離してもいい競馬。
水曜日の報知グランプリカップも上位拮抗、甲乙つけがたいメンバー構成になりましたね。

◎10.タイムズアロー
〇1.イッシンドウタイ
▲9.アサヤケ
△11.エンパイアペガサス
△2.モンサンカノープス
△12.ムサシキングオー

タイムズアローは埼玉新聞栄冠賞以来となる、西村栄喜騎手での臨戦。
船橋の1800mでは3戦2勝で、日本テレビ盃でも5着という実績ならば、このレースの連覇が濃厚とみます。

強敵は真島大輔騎手が乗るイッシンドウタイ。
アサヤケは重賞初挑戦となりますが、相手なりに走れるタイプで、冬場のほうが向く感じがある点を含めて3番手に抜擢してみます。

エンパイアペガサスは岩手所属時の主戦である村上忍騎手を呼んできたところに要注意。
差し脚を長く使えるモンサンカノープスも連下の候補として挙げておきます。
しかし川崎記念での予想コーナーはハズレましたからねえ。
やっぱり前に行く馬は押さえなきゃ。
というわけで、大外枠でも単騎逃げができそうなムサシキングオーにも要マーク!

プロフィール

プロフィール

浅野 靖典

1969年8月1日生まれ

1998年にグリーンチャンネル「中央競馬中継」のキャスターから競馬関係のキャリアをスタート。
現在は各種媒体に原稿を寄稿し、競馬関係のメディアにも出演。
JRA、青森、九州のセリ市場の司会進行役も担当している。
ときどきグリーンチャンネルの番組「競馬ワンダラー」で、ワゴン車の運転手として全国を放浪。
各地の地方競馬場には1~2年に一度以上は訪問している。

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