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「金子正彦騎手が引退!」
2017年3月6日

先週はちょっと遠方に行っていたのですが、なんと往復はクルマ。
火曜日は朝3時に起きたのにもかかわらず、真夜中におよそ800kmの道のりの半分くらいを運転してヘロヘロに。
それでも出資した馬が初めてダートグレードレースに出るのだから、徹夜明けでも気合と根性で川崎競馬場に突撃!
と、半分寝ながら川崎駅に着いたところで、「金子正彦騎手は、3月3日の第10レースを最後に引退します」
というニュースを知ってビックリ。
こりゃ最終日はその姿を見に行かなければ!

ということで、先週は川崎競馬場に2回行きましたですよ。
個性的な騎手だもの、思い出はいろいろありますから。
金子騎手の代表的な勝ち鞍といえば、それはやはり東京ダービー。
前崩れの展開がハマったとはいえ、直線だけで十数頭を抜き去る競馬は、なかなか見られないものです。
3月3日の最終レース後に行われた引退報告式。
川崎ドリームビジョンで放映された東京ダービーのレース映像を見て、
列席した川崎所属騎手から「あれで届くんだ」「すげえ」「ミラクル」などと、期せずして声が上がっていました。

そして金子騎手の代名詞といえば「猫背」。
パドックの騎乗周で背筋を伸ばした騎手がいる一方で、背中を丸めたその姿はひときわ目立っていて、
そこからきたのか金子騎手のことを「ネコさん」と呼ぶファンも少なからずいたように思います。
かく言う私も「ネコさん」ファン。
グリーンチャンネルの番組「競馬ワンダラー」で、兵庫県の三木ホースランドパークを訪問したとき、
馬に乗ることになってつい、馬の上で「金子騎手のマネ」をしましたなあ。
放送後に南関東の競馬場で知らない人からお褒めの言葉をいただきました。

金子ファンからサイン攻め

(金子ファンからサイン攻め)

私の友人にも熱烈な金子騎手ファンがいまして、
あるとき本人に「なんでそんなに猫背なんですか?」とメチャメチャ失礼な質問を単刀直入にしたことがあるそうな。
すると金子騎手、そのときはお酒が入っていたためか上機嫌で「新幹線の先頭車両と同じだよ。
空気抵抗を減らすことを追求していったら、この形になったんだ」と答えてくれたそうです。
それが本当なのかどうかはさておいて、金子騎手は職人魂を持っていることは間違いなさそう。

1979(昭和54)年11月19日に17歳でデビューしてから37年半。
引退の理由のひとつには「だんだん騎乗数が減ってきたこと」があるそうですが、しかしそこは大ベテランの人望。
引退シリーズとなった川崎開催では、初日から4日までが毎日4鞍、最終日は6鞍の依頼がありました。
そして現役ラストの金曜日。
騎手時代は後輩だった河津裕昭調教師から依頼を受けたコスモロザラムで逃げ切って、1227勝目を挙げました。
引退レースとなった第10レース後のインタビューでそのことを聞かれると
「勝ちましたねって言われても、つかまってただけですよ。あの馬なら誰が乗っても勝てる」と笑顔。
家族や親せきのみなさんが集まっての記念写真では、ちょっと照れているような表情も見せていました。

ラストラン直後は花束攻勢

(ラストラン直後は花束攻勢)

いやしかし金子騎手が引退してしまうのはさみしいですなあ。
これで川崎所属騎手は、高知に行っている郷間騎手と中越騎手を除くと14名。
来月からは新人騎手が1名加わるとはいえ、現時点では川崎ジョッキーズ競走のフルゲートと同じとは。
そのなかには5月4日で62歳になる森下博騎手も含まれているわけで……。

引退報告のあとは胴上げ

(引退報告のあとは胴上げ)

ところで現在、大ベテランと呼べる騎手は、どんな状況になっているのでしょう?

1位 森下博騎手 1955(昭和30)年5月4日生まれ 1973(昭和48)年11月デビュー
2位 石崎隆之騎手 1956年1月29日生まれ 1973年7月デビュー
3位 的場文男騎手 1956年9月7日生まれ 1973年10月デビュー

ここまでが還暦を迎えた超ベテラン。

ばんえい以外の地方競馬でこのビッグスリーに続くのが、
早田秀治騎手 1960年1月5日生まれ 1976年11月デビュー
内田利雄騎手 1961年10月5日生まれ 1978年10月デビュー
見澤譲治騎手 1962年3月13日生まれ 1978年10月デビュー

という大ベテラン。

ちなみに見澤騎手より年上の現役騎手(ばんえいを除く)はほかに、 兵庫の川原正一騎手が1959年3月14日生まれなので、間もなく58歳。
名古屋の丹羽克輝騎手が1959年3月16日生まれで、もうすぐ58歳。
となっています。

これからも年長騎手のみなさんには、豊富な経験値からのインサイドワークが光る活躍を見せてほしいものですね。
以前、名古屋競馬場でベテラン騎手を集めた「名人戦」が行われましたが、
そのときは名古屋競馬場の馬場を大きく使うというワザで、的場騎手が2連勝。
そのレース運びには衝撃的なものがありました。
今年は「ヤングジョッキーズシリーズ」が開催されますが、ベテラン限定戦も見たいぞ!
だからこそ、54歳の金子騎手の引退には残念という思いがあるのです。
でもそれは本人が決めたこと。
これからもお酒を飲み過ぎず、競馬界を見続けていてください!

という流れならば、フジノウェーブ記念の本命は当然、金子騎手で重賞を2勝したソルテにするしかないでしょう。
引退報告式には手綱を引き継いだ吉原寛人騎手も出席していましたよ!

◎10.ソルテ
○4.サトノタイガー
▲6.サクラレグナム
△9.タイムズアロー
穴11.カリスマサンスカイ
穴12.ドレッドノート

このレースがフジノウェーブ記念という名前になったのが2014年。
それ以来、3年連続で「2ケタ馬番」の馬が1頭だけ連対しているというデータがあるのですよ。
今年も信じていいのかしら?
と悩むところですが、信じちゃいますよ!
ソルテは2年前が12着でしたが、16番枠から発走した上に、距離ロスを少なくすることができなかった形。
3年前は3番枠で2着に入っていることだし、休み明けでも力を発揮してくれると期待します。
相手は内枠で先行できるタイプを選んで4頭。
穴に記した2頭は、追い込みタイプだから枠は気にしなくてよさそう。
後方からどれだけインを突いて伸びてこられるのか、楽しみにしておきます。




プロフィール

プロフィール

浅野 靖典

1969年8月1日生まれ

1998年にグリーンチャンネル「中央競馬中継」のキャスターから競馬関係のキャリアをスタート。
現在は各種媒体に原稿を寄稿し、競馬関係のメディアにも出演。
JRA、青森、九州のセリ市場の司会進行役も担当している。
ときどきグリーンチャンネルの番組「競馬ワンダラー」で、ワゴン車の運転手として全国を放浪。
各地の地方競馬場には1~2年に一度以上は訪問している。

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