コラム”

「2歳馬取材のシーズンです」
2017年3月27日

3月下旬は毎年の恒例行事、2歳馬の取材。
ということで先週は、まるまる北海道に滞在しておりました。
牧場への取材申し込みなどの準備は2月末から始まっておりまして、ここからがいよいよ正念場。
通常業務は変わらずあるので、牧場取材の時間を捻出するには寝る時間を減らすの一択になります。

というわけで、夜7時や8時に宿に着くとすぐに寝て、深夜0時前にいったん起きて原稿仕事。
そしてまた3時間ほど寝て6時頃からお仕事。
牧場によっては取材が朝8時からスタートするので、そういうときは昼の時間帯にスキあらば原稿を進める、という状況であります。
なので先週月曜日は、千歳空港に昼の12時に着いたのに、そこから牛丼店経由でカードラウンジに直行して、
19時半までひたすらお仕事でございました。

その日の帯広競馬場は「ばんえい記念」デー。
3年前までは帯広競馬場でばんえい記念を観ていましたが、今年もスケジュール的な事情で回避となってしまいました。
というわけで飛行機を見ながらSPAT4で馬券を買い、ビジネスコーナーが貸切状態だったのでパソコンの音をちょっと大きくして観戦しましたよ!

しかしうーむ、2着馬は買ってない……。
引退レースの11歳馬が来たのは、まさにキャリアというところなのでしょうねえ。
ばんえい競馬って、ビッグレースになればなるほどプロレス的なインサイドワークがモノを言う気します。

そんな感じで睡眠時間を削りながらの北海道なので、レンタカーのスピードは控えめに。
今回は24時間税込み1000円の激安レンタカーを借りましたが、念のため24時間あたり1080円かかる免責保障の保険に入ってしまいました。
普段は保険を追加しないのですが、1月に沖縄に行ったときに徹夜明けだったせいか、レンタカーをちょっとぶつけてしまったもので、
つい弱気に……

そうなんですよ。
私もそれなりにジジイ化が進んできているわけで、果たしてこういう生活がいつまで続くのか、続ければいいのかというのが悩みどころ。
定年がない、基本的にはいつまでたっても兵隊という立場ですから、自分でコントロールしていくしかないのですが。
しかしその反面、牧場でデビュー前の2歳馬を見ると、「これからどんなふうに成長していくのかな」と想像するのが楽しくて、
自然とテンションが上がってしまうんですよ!

2歳馬の取材風景

(2歳馬の取材風景)

そりゃ現実は厳しくて、テレビゲームのように簡単に行く話ではないんですが、この段階では夢しかないですからね。
そういう若駒の姿を見られるのは幸せなことです。
と同時に、これは北海道に来るたびに思うことなのですが、先人のみなさんは、よくここまで開拓したなあとため息が出る感覚がありますね。

本州からの入植は明治に入ってからなので、およそ140年前。
しかし当時はブルドーザーもなければダンプカーもない、もちろんホームセンターで大工道具を買えるわけでもない時代。
日高地方はアイヌの先住民たちが生活の基盤を作っていた土地でしたが、広大な原生林を牧場にしていったのは、
主に淡路島やその周辺から来た人たち。
まずは船で寝泊まりして、夜明けから日没まで木を切り倒してそれを売って、残った根っこを抜いて土地を平らにする作業……
気が遠くなりますわ。

大正末期に鉄道が静内まで来ましたが、その当時はもちろん、昭和中期までは馬産地を訪問するなんて大変なこと。
上野発の夜行列車で青森駅に着き、凍えそうなカモメ見ながら連絡船に乗って、函館から特急列車で苫小牧、そこから乗り換えて静内。
到着は出発してからだいたい24時間後でしょうなあ。

静内市街地から車で20分の牧場

(静内市街地から車で20分の牧場)

それを考えると、飛行機でパッと行ってレンタカーでヒョイと馬産地に着ける現代って、ちょっと恵まれすぎだなと思ってしまいます。
ちなみに先週金曜日は浦河を夕方5時に出て、サイタマの自宅に着いたのは0時ごろでした。
しかし今でも生産牧場の人たちの仕事内容はあまり変わっていないんですよね。
数十年前からの主な変化といえば、

●馬運車がなかったために近所に住んでいる種牡馬しか選べなかった
→選択の幅が広がった
●馬の食べ物は自宅近所で刈り取った牧草が中心
→輸入物も与えられるようになった
●馬は仲買人による庭先取引がほとんど
→昭和30年代からセリ市場で販売ができるように

というところですが、馬を育てる方法は変わっていないのですよ。
日が昇ったら放牧地に出して、馬房を掃除してカイバを作り、夕方に放牧地から馬房に戻しておやすみなさい。

とても地道な作業ですし、生き物が相手だから遠出をすることもままなりません。
でも牧場の人たちは、幼駒を見ては「どんな活躍をしてくれるのかな」と夢を描き、それが日々の活力になっているのだと思います。

というようなことを、国道235号線から見える広大な土地を見るたびに思いを巡らせます。
競馬は結果がすべてではありますが、競馬場に入るまでの手間と労力には感謝の心を持ちたいものですね。
そういったところに報いるという意味があるのでしょう。
水曜日に浦和で行われる桜花賞には「生産牧場賞」が設定されています。
しかし今年の桜花賞はかなり混戦!

◎5.グラスサファイヤ
○8.アップトゥユー
▲9.ステップオブダンス
△1.ガロ
△3.スターインパルス
△4.シェアハッピー

最近の桜花賞で好走した馬の共通点は、
☆とにかく内枠
☆前走4着以内
の2点。

2010年は11番のショウリダバンザイが勝ちましたが、2012年以降は8番以降の3着以内がゼロ。
となれば、攻めの予想で行ってもいいでしょう!

グラスサファイヤは母がJRAで4勝をマーク。
こちらはマイル戦で8着と4着となっていますが、浦和なら距離は立ち回り次第でなんとかなるでしょう。
ほかの馬が勝ちに行くために位置を取りに行くのを見ながら脚を溜めて、勝負どころからジワジワ伸びてくるシーンを想像します。

アップトゥユーとステップオブダンスは実力的に上位なので、外枠でも上位にマーク。
そこに割って入ってくる可能性がある馬として、内枠から3頭を選択します!
でもやっぱり、人気薄の台頭に警戒してボックスかな?





プロフィール

プロフィール

浅野 靖典

1969年8月1日生まれ

1998年にグリーンチャンネル「中央競馬中継」のキャスターから競馬関係のキャリアをスタート。
現在は各種媒体に原稿を寄稿し、競馬関係のメディアにも出演。
JRA、青森、九州のセリ市場の司会進行役も担当している。
ときどきグリーンチャンネルの番組「競馬ワンダラー」で、ワゴン車の運転手として全国を放浪。
各地の地方競馬場には1~2年に一度以上は訪問している。

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