コラム”

「高齢化問題」
2017年4月17日

今年も4月第2週は西から北へと大移動。
まず、4月11日の火曜日に佐賀競馬場で「九州トレーニングセール」が行われるということで、その司会進行の業務で行ってきました。

しかし昨今の日本は馬不足!
いわゆる老舗という感じで日本の競馬を支えてきたオーナーブリーダーが姿を消していく一方で、
最近になって馬主資格を得た若い人たちが急増。
ここ最近はセリ市場の売却率が以前とは比べ物にならないくらいに上昇しています。

そういった人たちは牧場に行って直接交渉して馬を買うよりは、
セリ市場を通して買ったほうが簡単だし明朗会計だしと、メリットを感じている様子。
多くの人が「ダビスタ」などで馬を競ったことがあるということも、
セリ市場に参加する心理的ハードルを下げているのかもしれません(笑)。

しかしその影響は、九州に大きく及ぶことになりました。
というのも、九州にいる2歳馬がけっこう減ってしまったのですよ。
もちろん、昨年の九州トレーニングセールの直後に発生した大地震の影響もあります。
しかしそれ以上に、昨年までに九州うまれの馬の多くが売却済みで、すでにデビューに向けて北海道などで鍛錬されているのです。

そのため、まだ馬主さんが決まっていないという2歳馬が激減。
昨年は21頭が登場した九州トレーニングセールも、今年は13頭のエントリーとなってしまいました(そのあと1頭が欠場)。
「今年も九州トレーニングセールをやります」という連絡を受けたのは3月14日。
本来は3月に入ったら上場馬が発表されるスケジュールでしたから、個人的には「中止かも……」と思っていました。

しかしながら5月に札幌競馬場で行われる「HBAトレーニングセール」には、今年も200頭以上が上場されるんですよね。
もうホントにこの差はいったいなんなのよ……
とは思うのですが、ボヤいても仕方がないこと。
それよりも12頭しか出てこない九州トレーニングセールにどれだけお客様が来てくれるのか、心配でした。


セール前日は雨

(セール前日は雨)

しかし開けてビックリ玉手箱。
なんと昨年とほとんど同じという50名ほどの購買登録者があり、セリ会場のパドックを囲む人たちも昨年並み。
そして12頭のうち8頭に買い手がつき、昨年は1頭だけだった500万円超えの馬が、なんと4頭も誕生したのです!

雨が降ったり止んだりというコンディションのなか、本当にありがとうございました。
この場を借りて御礼を申し上げます。
と同時に、もっと馬をたくさん揃えてお客様をお迎えしたいなと思いましたね。
上場される馬にしても、札幌のトレーニングセールで目立つのはなかなかむずかしいですが、九州に来れば相対的な注目度は高くなります。
その点を北海道の牧場の人やメディアなどにアピールしているのですが、なかなか打てば響くという感じにはならなくて。

確かに、北海道から九州まで馬を運ぶことにはリスクがあります。
それでも北海道で育成された馬が、少ないながらも九州トレーニングセールで購買されている事実はあるのです。
その点を含めて市場関係者一同、なんとか九州の馬産の灯を絶やさないようにという思いで頑張っております。

という「やってよかったですね!」と思えた九州トレーニングセールを終え、福岡空港から羽田空港を経て新千歳空港にレッツゴー。
北海道上陸後はレンタカーを運転して、日付が変わる直前に静内に到着。夜が明けると「産地馬体検査」の取材です。
産地馬体検査とはJRAが実施するもの。
これを受けるとJRAの競走馬登録が完了して、美浦または栗東のトレセンを経由しないで函館、札幌競馬場に入厩できることになります。

ということで検査会場には大量の2歳馬が集まるので、
2歳馬の本(いわゆるPOG本)を作るメディアは、取材者をそこに送り込んでいるわけです。
そのメンツがまったく代わり映えしないんですよ。

つまり、1年たつと平均年齢が1つ上がるという状況。
それがもう10年以上も続いています。
私が初めて産地馬体検査の会場に行ったのは30代前半でしたが、
そこを起点にしても取材者の平均年齢は15前後も増えていることになります。
おー、こわ。


高齢化が進むマスコミ陣

(高齢化が進むマスコミ陣)

カメラマンさんは最近になって参加するようになった人が2名いて、1人が40歳手前でもう1人が30歳くらい。
しかしライター陣はいつもと同じなので、高齢化が止まりません。

競馬マスコミは、ほかにもそういうところがありますね。
たとえば競馬新聞。
私が競馬を覚えたころにバリバリとメディアに出ていた人が現在でも一線級。新しい人も入っているのでしょうが、
なかなか飛び抜けていけないところがあるのかもしれません。

競馬ライター業界も同様かも。
「我々っていつまで北海道で吹雪に打たれて取材しなきゃならないんでしょうかねえ」という話が、
様式美のように語られてしまうわけです。

東京スプリントもそんな感じ!?
ダート界は以前から「力量的に突き抜けると、その地位は簡単に揺るがない」という傾向がありました。
でもその一方で、南関東のB1クラスではときどき「このメンバーで星のつぶし合いをするのはもったいない」
と思えるハイレベルなレースがあったりします。
そこをクリアするのって、どの業界でもむずかしいのかしら?

◎4.ドリームバレンチノ
○10.キタサンサジン
▲2.ブライトライン
△9.レアヴェントゥーレ

そんな文章の流れとは関係なく、東京スプリントの本命は10歳馬のドリームバレンチノ。
黒船賞では「3コーナーでは勝ちパターンやと思ったんだけど……」と首をひねりながら検量室に入っていった岩田康誠騎手。
それだけを聞くと「やはり年齢的なものが」と思いがちですが、58kgで大井の1200mなら話は別。
東京盃で見せた直線一気の再現が濃厚とみます。

キタサンサジンはここならベテランのカベを突破できそう。
ブライトラインは重賞実績がいまひとつでも、メンバー的に再度の流れ込みが狙えるでしょう。
レアヴェントゥーレは相手強化となりますが、メンバー的に先手主張が可能。ということで、残り目に警戒して押さえておきます。




プロフィール

プロフィール

浅野 靖典

1969年8月1日生まれ

1998年にグリーンチャンネル「中央競馬中継」のキャスターから競馬関係のキャリアをスタート。
現在は各種媒体に原稿を寄稿し、競馬関係のメディアにも出演。
JRA、青森、九州のセリ市場の司会進行役も担当している。
ときどきグリーンチャンネルの番組「競馬ワンダラー」で、ワゴン車の運転手として全国を放浪。
各地の地方競馬場には1~2年に一度以上は訪問している。

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