コラム”

「高知競馬の底力を見た!」
2017年6月19日

今週は高知市にて「南関道中膝栗毛」を作成しております。

えーと、韓国のオークスを見たのって先週だったっけ?
もはやそのへんの記憶さえあやふや。

たしか、月曜日に激安航空券で成田空港に着いて、水曜日は川崎競馬場に突撃して関東オークスの単勝だけ的中。
木曜日は横浜スタジアムで年に1度だけのにわかベイスターズファンになって、さらに「生ビール半額デー」だったので飲みすぎました。
で、中1日を置いて土曜日の飛行機で羽田空港から出発したわけであります。

今回の業務は6月18日に行われた「高知優駿」の取材。別名が「黒潮ダービー」ですね。
今年から「ダービーシリーズ」の対象レースに組み入れられ、1着の賞金額は前年の100万円から500万円に大増額。
つい5年前は1着賞金が27万円だったのですから、高知競馬のV字回復ぶりはものすごいと実感できます。

その代わりと言ってはナンですが、レースの出走条件が「地方競馬所属ならオールカマー」となりました。
そこに名乗りを上げた馬は全部で28頭。
おそらく高知所属馬のレベルがよくわからない、もしくはそれほど高くないと考えてエントリーした陣営も多いことでしょう。

そのうちの1頭、兵庫所属のブレイヴコールもそのクチ。
兵庫所属馬ではデビュー戦から無敗の快進撃が続いているマジックカーペットがいますからねえ。
兵庫三冠初戦の菊水賞が完敗の2着だったことで、ブレイヴコール陣営は兵庫ダービーをあきらめ、
高知でダービー馬の称号を目指すことにしたわけです。
そのつもりで調整を進めていたところ、兵庫ダービーの6日前にマジックカーペットが骨折!
それで急遽、高知遠征をやめて、地元のダービーに出ることにしたそうです。

先日、園田競馬のカメラマンさんと「マジックカーペットが強すぎるから、
兵庫ダービーは5頭立てとかになるんじゃないですかね?」なんて話していたのに……

案の定、その「1強」が出走しなくなったことで、兵庫ダービーはフルゲートとなる12頭立てに。
そして高知遠征を取りやめたブレイヴコールが逃げ切り勝ちを果たしたわけですから、
競馬の神様はどういう思し召しをしていらっしゃるのか、本当に不思議です。

という流れがあっての「高知優駿」。
6月4日に発表された高知以外の出走可能馬からは、佐賀のスーパーマックスだけが出走し、
ほかは補欠からの繰り上がりで、遠征馬は佐賀2頭、名古屋と笠松から各1頭となりました。

ここで気になるのは、各競馬場間のレベル差。
南関東でも転入初戦の馬がいきなりから勝負になるのか、頭を悩ませることは多々あります。
ましてや今回は3歳戦。
そのなかである程度のモノサシになる存在としては、高知所属のタッチスプリントが挙げられます。

佐賀の花吹雪賞では、九州ダービーで3着に入ったオヒナサマの2着。
そして高知の2歳重賞、金の鞍賞ではフリビオンに続く2着。
となると、九州ダービーを制したスーパーマックス、2着のフジノカミワザが高知優駿で上位人気に推されるのは当然のことといえるでしょう。


笹川翼騎手も参戦

(写真:笹川翼騎手も参戦)

しかし結果は、高知のフリビオンが1着で、高知のバーントシェンナが2着。
3着は笠松のマルヨアキトで、名古屋のサザンオールスターが4着。
そして佐賀の2頭は、2周目の4コーナーで両方とも落馬……

人馬ともに無事だったようですが、ゴールできなかったのは佐賀の2頭という、なんともまあという結果になりました。

しかしですよ、その1着と2着は両方とも高知でデビューした馬。
高知は一昨年から2歳新馬戦が復活して、今年の3歳馬は2世代目。
一昨年、高知の新馬戦に出走した馬は18頭しかいないのですが、そのなかから高知優駿を勝ち、全国区の活躍をみせているディアマルコが登場。

そして今年は高知優駿でワンツー。
高知競馬に来る新馬は正直なところ、評価額としては低い部類に入る馬ですよ。
それでもそのなかからこれだけの活躍馬が出るのだから、なにか秘密があるのでは?
と思うわけです。

個人的には、馬場の砂厚が関係しているのではないかと思っているんですね。
発表されている高知競馬場の砂厚は、内ラチから2mが14.5㎝。
そこから1mずつ外に行くことに少しずつ減っていき、各騎手がレースで馬に通らせるのは直線部分が12.5㎝、
コーナー部分が12㎝という、内ラチから5mくらいの場所。

その砂厚はバックヤードも同じかそれ以上で、スタンドから1コーナー付近にある検量室に向けて歩いていくと、
アリジゴクにハマるような感じがします。
ヘタすると翌日にふくらはぎが張るくらい、豊富な砂が用意されているのです。

そこで日々の鍛練を積んでいる馬だから、筋肉に力がつくのは当然。
そのことはもっと評価されてもいいと思うんですよね。


インコースを空けるのが高知の特徴

(写真:インコースを空けるのが高知の特徴)

高知優駿に出ようとしていたブレイヴコール陣営は、おそらく「高知のほうがマジックカーペットと戦うよりもマシ」と考えていたことでしょう。
しかしさにあらず。
高知競馬で鍛えられた馬の多くには、かなりの底力が備わっているんです。
来年以降、高知優駿の遠征馬はどのようになるのか、気になるところです。

そういえば、船橋競馬場で実施されている「総の国オープン」は、高知からの遠征馬が好成績を残していますね。
ひょっとしたら、これからは高知からの移籍馬が南関東で活躍するケースが増えてくるのかもしれません。
京成盃グランドマイラーズは、その観点から予想するのも手かも?

◎3.コンドルダンス
○13.トロヴァオ
▲12.ジャーニーマン
△9.ミスミランダー
△5.バースフォンテン
△4.ノーキディング

コンドルダンスからミスミランダーまでの4頭は、門別でデビューした馬。
高知より厚くはないものの、底力が必要な馬場で育てられたことは確かです。

そのなかから、内枠がプラスになりそうなコンドルダンスを中心に推します。
相手筆頭は素質上位のトロヴァオ。
ジャーニーマンは船橋が初めてですが、先行押し切りを狙うタイプですから悪くないでしょう。

ちなみに水曜日の船橋競馬の最終レースは「船橋競馬場クリーン大作戦記念」。
競馬場周辺で行う清掃活動の名称なのですが、この活動の音頭を取っているうちの一人は、コンドルダンスの厩舎関係者。
その縁も含めて、ここで狙うべき馬といえるかも!?

プロフィール

プロフィール

浅野 靖典

1969年8月1日生まれ

1998年にグリーンチャンネル「中央競馬中継」のキャスターから競馬関係のキャリアをスタート。
現在は各種媒体に原稿を寄稿し、競馬関係のメディアにも出演。
JRA、青森、九州のセリ市場の司会進行役も担当している。
ときどきグリーンチャンネルの番組「競馬ワンダラー」で、ワゴン車の運転手として全国を放浪。
各地の地方競馬場には1~2年に一度以上は訪問している。

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