
いやはやまあ、なんといいますか。
デビュー9年目、25歳の中野省吾騎手が、地方競馬の名手たちの戦いで圧勝するとは!
8月26、27日にJRA札幌競馬場で行われる「ワールドオールスタージョッキーズ」の出場権をかけた「スーパージョッキーズトライアル」。
盛岡競馬場で行われた第1ステージを1着、2着とした中野騎手は35ポイントを獲得。
例年なら優勝ラインはだいたい45~50くらいになることが多いので、すでに2位の真島大輔騎手に14ポイント差をつけている中野騎手は、
園田競馬場の第2ステージで5着(10ポイント)に1回入れば最低でも46ポイントになるわけで、圧倒的に有利な状況となっていました。
(写真:2017SJT第2ステージ出場騎手)
以前、舞台は違いますが、同じくレースの着順によるポイント数で優勝を争う「ゴールデンジョッキーカップ」で、
某騎手が第3戦を終えたところでポイント2位ということが判明し、「よし、セコく乗ってこよう」と宣言して、
そのとおりインをピッタリ回って5着に入り、優勝を手にしたことがありました。
同じように、中野騎手も大きい着順を取らなければこのまま首位を守れる……
と個人的には思っていたわけですが、中野騎手は大物ですわ。
騎手紹介式のときに「ポイントとかは関係なく、勝ちにいきます」と言いましたからね。
自分がその立場だったら、きっと2戦とも5着前後を狙う乗りかたをするだろうなあ……
そこが、オッサン化が進行する私と若武者との違いなのでしょうか。
そして中野騎手は2戦とも有言実行で勝つのだから恐ろしい!!!
最初のレース「シルバーブーツ賞」は1400m。
中野騎手の騎乗馬はそれまで1700m戦を中心に出走していて、そのために前半は流れについていけない様子。
しかし2コーナーあたりから徐々にスピードが乗ってきて、4コーナー手前では2番手つけて、ゴール前ではアタマ差で勝利。
ここで最終戦を前にして総合優勝を決めてしまいました。
園田競馬場では2戦とも表彰式があるので中野騎手はスタンド前で壇上の人になり、
差し出されたマイクに向けて「次も勝ちにいきます」と宣言しました。すると……
最終戦のシルバーホイップ賞、中野騎手が乗る馬の単勝人気がぐんぐん上がっていき、一時は6倍を切るくらいになったのですよ!
その乗り馬、ゴッドバローズは、JRAで新馬戦を勝つもその後は大敗続きで、3歳秋に岩手に移って盛岡で1勝、水沢で3勝。
兵庫移籍後は24戦してC級で1勝という成績。
B級では23戦して2着と3着が各1回で、今年に入ってからは11戦連続で5着以下という、
そんな馬がB級戦で単勝6倍を切るなんて、こりゃ「中野騎手人気」というしかないでしょ!
最終的には9.2倍の4番人気。しかしそれで勝っちゃうわけだから、これはもう「神ってる!」という言葉でしか説明不可能!
(写真:中野騎手が優勝!)
これまで、スーパージョッキーズトライアルの第2ステージ連勝したのは、
2009年の的場文男騎手、2015年の藤田弘治騎手(金沢)、2016年の永森大智騎手(高知)。
でも設定上、本命対抗レベルの馬に2回乗ることは基本的にないんですよ。
だから連勝騎手がこんなにいるのは、ちょっと謎。つまり「勢い」がこのシリーズには重要ということなのかしら?
中野騎手は総合優勝の表彰式が終わっても、わかりやすく喜びをあらわにするわけではなく、
いつものひょうひょうとした笑顔で「いやあ、なんか勝っちゃいましたねえ」などとコメント。
デビュー当初から「感覚を大切にして乗るタイプ」と個人的に思っていましたが、
初めての園田競馬場でそれがよりハッキリしたように感じられました。
ならば初コースの札幌競馬場でも、いい騎乗を見せてくれるのではないかしら?
中野騎手はレースの合間に「馬とうまく会話して」ということも話していました。
それも“感覚”のひとつなのでしょう。
馬に乗るためには体力はもちろん、馬を御す技術が必要なのですが、それに加えて重要なのが“センス”。
これはなかなか後付けできるものではありません。
言うなれば“天賦の才”。
デビューからしばらくは低迷しましたが、昨年が159勝で一気にブレイクし、
つい先日、通算400勝を達成したばかりという中野騎手ですが、
ようやく歯車がかみ合って、一気に加速がついたというところなのだと思います。
というところで火曜日の優駿スプリント。
発売が始まったばかりの月曜日の12時半頃の話ですけど、中野騎手のアイアンハートが4.8倍で1番人気ってどういうこと?
だってアイアンハートは5戦連続で2着という成績ですよ。
失礼ながら、単勝向きじゃない感じがしますよね。
つまりこれも中野騎手効果?
◎9.サブノジュニア
○3.ハッピーブーケ
▲1.アイアンハート
△5.オーブスプリング
△16.ジョワラルム
穴2.バンドオンザラン
穴14.ソッサスブレイ
多頭数でも4連勝中のサブノジュニアがスピード上位とみるのが妥当でしょう。
ハッピーブーケも4連勝中で、今回も先行してしぶといところを見せてくれると思います。
アイアンハートは……単勝も買っておこうかなあの3番手。
オーブスプリング、ジョワラルムも展開ひとつで上位食い込みが狙えそうです。
穴は距離短縮の2頭。
続いて帝王賞。
雨の影響がどこまで残るかがカギですが……
◎2.アウォーディー
○10.クリソライト
▲7.オールブラッシュ
△15.サウンドトゥルー
△8.ウマノジョー
△6.アポロケンタッキー
帝王賞は逃げ先行タイプが上位に入ることがほとんど。
そうなると、内枠から先行できるアウォーディーが最有力と考えていいでしょう。
相手筆頭には、一昨年の2着馬クリソライトを抜擢。
この馬はきついカーブがあるコースは合わないと思うんですよ。
前走は最後方から追込んで2着でしたが、今回は前に行くとみて対抗視します。
オールブラッシュは条件クラスを勝ってすぐに川崎記念を勝ちましたが、名古屋大賞典では流れにのれぬまま5着。
こちらも大井コースのほうが向きそうです。
あとは昨年3着のサウンドトゥルー、上昇の勢いがあるウマノジョーにマーク。
アポロケンタッキーは東京大賞典の再現まではどうかなあ。
超大型馬でもありますし、ここは押さえまでにして妙味と考えてみます。
浅野 靖典
1969年8月1日生まれ
1998年にグリーンチャンネル「中央競馬中継」のキャスターから競馬関係のキャリアをスタート。
現在は各種媒体に原稿を寄稿し、競馬関係のメディアにも出演。
JRA、青森、九州のセリ市場の司会進行役も担当している。
ときどきグリーンチャンネルの番組「競馬ワンダラー」で、ワゴン車の運転手として全国を放浪。
各地の地方競馬場には1~2年に一度以上は訪問している。