コラム”

「完敗から学ぶ逃げ先行有利」
2017年7月31日

サンタアニタトロフィーは完敗でございました。

もうね、スタートした瞬間にハズレを確信しましたよ。
ワタクシが「武蔵野オープンでは強いけれど、サンタアニタトロフィーでは3年連続でサッパリ」
みたいな注釈をわざわざつけて無印にしたゴーディーさんが、あんなロケットスタートを決めるんだもん。

加えて鞍上は“大井でインコースを回ったら鬼に金棒”と個人的に思っている的場文男様。
もう3コーナーあたりで白旗でしたね。
3番手に挙げたコンドルダンス(7番人気)は2着に入ってくれましたが、
3着のトーセンハルカゼ、4着のムサシキングオーは無印で、本命のグレナディアーズ(8番人気)が5着……。

まったくもって、お恥ずかしい予想になってしまいました。

しかし改めて感じてしまったのが、的場騎手の技術。
サンタアニタトロフィーでは1番枠からインピッタリを回り、3コーナー手前で後続が差を詰めてきたのを察知して、
少しだけ加速させてセーフティーリードを確保する。

競馬は騎手のインサイドワークが結果に大きく作用するという点では、プロレスと似た部分があるのかも。
どちらも現役期間が長いところが共通していますね。

と同時に改めて感じたのが、競馬は基本的に「逃げ先行」が有利だということ。
円の長さを計算する式は「直径×円周率」ですから、コーナー4回の競馬で内ラチピッタリの馬より2m外を最後まで通ったら、
インの馬よりもおよそ12.5m余計に走ることになります。

12.5mということは、単純計算で6馬身ちょっとですよ。
ゴール地点では数㎝差で明暗が分かれることもあるというのに、カーブでの位置取りでそんなにロスが生じるのですから、
外を回るってのは本当にもったいないと思います。

その一方で、かつて的場騎手は名古屋競馬場で行われた「名人戦」で2戦2勝を決めたとき、こんなことをおっしゃっていました。
「こういうコースは、ちょっとぐらい外を回るほうがいいんだよ」

その言葉に、検量室のテレビモニターで的場騎手の連勝を目の当たりにして
「すげえ」を連発していた名古屋のジョッキーズはポカーンとするばかり。
確かに名人戦での的場騎手は、2つのレースとも好位付けから差し切ったという内容でしたが、
向正面では内ラチから5mくらい外を回っていました。

私もその話を聞いてからしばらく、その意味がよくわかりませんでした。
でも最近、なんとなく「こういうことなのかな?」みたいに思うようになったのです。

そのココロは「小さい競馬場を大きく使え」ということなのではないかと。

船橋競馬場で行われたJBCのとき、船橋レジェンドの桑島孝春さんに船橋コースの特徴を伺ったとき、
「1000m戦では内ラチ沿いを通らないようにしていましたね。船橋はスパイラルカーブだから4コーナーの角度が急。
だから遠心力で外に振られないように、そこでブレーキをかけざるをえなくなることがあるんです。
馬は一度ブレーキをかけると、そこからまたトップスピードに上げていくのが難しいですからね」

という話をしてくださいました。
つまり、多少の距離ロスがあっても、スムーズに走らせるほうがトータルではプラスなのだと。

自動車の運転免許をお持ちのかたは、教習所でこんなふうに指導されたことを覚えているのではないでしょうか。
「カーブでは、アウトインアウトを心がけなさい」

直線道路からカーブに差し掛かったとき、その手前や入口でブレーキペダルを思わず踏んでしまうことがありますよね。
そうならないように、カーブでは道路のセンターライン寄りから徐々に減速して、カーブの中間地点では最内を通ってそこから徐々に加速する。

おお、これこそ名古屋競馬場で見た的場騎手の妙技の疑似体験ではないですか!

もちろん、競馬は道路よりも混みあっていますから、そのコース取りができるかどうかは運次第。
でも、そういう形は先行するほうが取りやすいでしょうし、それをどれだけの確率で実現させられるかは、
まさに「インサイドワーク」だと思うのです。

それは先週日曜日、7月23日に突撃した船橋競馬場でも思いましたね。
その日は馬が走ると砂煙が天高く舞い上がる馬場状態。
メインの第8レースでは最低人気の馬が2番手追走から4角先頭で3着に粘り込み、最終レースは4角での位置取りのままワンツースリー。


日曜日の船橋競馬場はなかなかの盛況

(写真:日曜日の船橋競馬場はなかなかの盛況)

直線一気の派手な勝利は印象に残ることが多いですが、やはり全体的にみると逃げ先行のほうが有利なのだろうなと思うのです。
いまさらですが改めて。
水曜日のスパーキングサマーチャレンジもそういう考えかたでいいのではないかしら。

◎3.ジャーニーマン
○1.オーラゼウス
▲8.コスモパープル
△7.モフモフ
△10.エールドランジュ

出走馬のラインナップをみると、後方からのレースをしている馬が多いこと。
ならばジャーニーマンが主導権を取ってそのまま、という可能性が高そう。
あとは近走で好結果を残している馬がどれだけ差を詰められるかだと思うので、シルシは付いていても均等という感じでいいでしょう。
穴は4走前に逃げ粘って3着に入ったエールドランジュ。

そしておお、水曜日の川崎は最終レースが「SPAT4プレミアムポイント賞」ではないですか!

◎7.ミヤビシャンス
○1.ミュゼマリオネット
▲6.ハイエストシルバー
△2.ボーディングパス

8頭立てですか~。
となると、前走が大敗でも叩き2走目で先行力が発揮できそうなミヤビシャンスを軸にするのが妥当でしょうなあ。
ミュゼマリオネットは3走前が早々に失速の形でしたが、前走の逃げ粘りの再現に期待します。

ハイエストシルバーは前走が大マクリで勝ちましたが、この頭数なら川崎でも再現が狙えそう。
ボーディングパスは大敗続きですが、転厩2戦目での一変に警戒しておきたいと思います。

前走4着のメテオーラビアンカとベルラトールは夏場の成績がいまひとつ。
ということで、ここは絞ってポイントゲットが妙味かも!?

プロフィール

プロフィール

浅野 靖典

1969年8月1日生まれ

1998年にグリーンチャンネル「中央競馬中継」のキャスターから競馬関係のキャリアをスタート。
現在は各種媒体に原稿を寄稿し、競馬関係のメディアにも出演。
JRA、青森、九州のセリ市場の司会進行役も担当している。
ときどきグリーンチャンネルの番組「競馬ワンダラー」で、ワゴン車の運転手として全国を放浪。
各地の地方競馬場には1~2年に一度以上は訪問している。

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