
今回の「南関道中膝栗毛」はフランスのパリの近くの街で作成しております。
いろいろとご縁をいただいたことをきっかけにしてフランスに行くことにしたのですが、インドより西に行くのが22年ぶり2回目なので、
到着直後のアウェー感はかなりのもの。
フランスの雰囲気をつかむまで時間がかかってしまいました。
その22年前はフランスとイギリスに行ったのですが、フランスは朝5時にパリの空港に到着して9時のロンドン行き特急列車に乗ったので、
パリ滞在はたったの4時間でした。
インターネットもなく、クレジットカードが使える施設も限られていた時代に初めてパリに足を踏み入れた若かった頃の私。
そんなワクワクドキドキ状態でパリ北駅行きの電車に乗ったら、途中の駅からでっかいドーベルマンを連れたおっさんが乗ってきたんですよ。
早朝の電車だから客は数人。
もうね、ここで身ぐるみ剥がされるなと思いましたね。
勝ち目ないですもん。
でもドーベルマンおやじはおとなしく数駅先で下車してくれたので、私は無傷で助かりました。
という洗礼を受けてイギリスに脱出しましたが、旅行自体は楽しかったですよ。
宿はすべて当日手配というのも、アドベンチャーっぽくて面白い経験でした。
それと比較すると、今は旅行するのが本当に楽ですね!
しかしながら、そのおっかない記憶は多少なりとも残っているわけで、東南アジアでは真夜中でもプラプラしている私ですが、
フランスでは日が暮れたら室内に入ることを心がけております。
でもそこは自称「激安旅行評論家」。
空港から1泊目の宿までは、ショッピングモール行きの無料バス+徒歩15分で、お金をかけずに行きましたぜ!
その翌日、つまり先週の金曜日はサンクルー競馬場に突撃。
名前はよく知られている競馬場ではありますが、スタンドがとても小さくてビックリ。
浦和の半分もなくて、門別よりすこし大きいかなという感じですよ。
エルコンドルパサーがG1を勝った競馬場がこんな規模というのには、ちょっと意表を突かれました。
(写真:サンクルー競馬場の客エリアはガラガラ)
でも、場内に入ると「これでも大きいかな」という感じ。
ざっと見たところ、馬券おやじは100人程度。
それよりも明らかに多い人数がスーツを着て、ハイソサエティなエリアでワイヤイガヤガヤとやっていました。
さすが場外馬券売場が7000か所ぐらいあるというフランス。
競馬場に来て馬券を買うのは少数派なんですな。
ちなみに入場料は5ユーロ(約650円)。
それだけでもけっこうなハードルがあります。
もちろん無料バスなんぞ運行されていません。
よおし、それならいつものとおり「現地でパドック診断した者だけが得られるアドバンテージを活用しよう」作戦でガッツリ勝つぞ~。
と思ったら、これがどの馬も良く見えるのだからやんなっちゃう。
うーむ、つまりこれがフランスのホースマンの水準なんですな。
2歳戦のパドックを見たら、メンコをつけている馬はゼロ、バンテージを巻いている馬はゼロですよ。
こんなの日本ではまずお目にかかれない!
(写真:サンクルー競馬場の2歳戦のパドック)
さらにパドックで馬を曳く人は全員ノーヘルメット。
スカートにパンプス姿の女性厩務員もいました。
レース終了後は全馬が場内を横切ってウイナーズサークルに行き、そこで勝った馬も負けた馬も曳き運動。
結果が確定したら負けた馬は厩舎に帰っていきますが、なかには客エリアをショートカットしていく馬もいました。
じつは私、欧州の競馬場に行くのが初めて。
「ヨーロッパは人と馬の距離が近い」というのはよく聞く話として認識していましたが、なるほどこういうことですかと勉強になりました。
かねてから私は不勉強ながらも「日本の厩舎スタッフの多くは、馬との距離が遠すぎるか近すぎるかのいずれか」
という印象を持っているのですが、なんとなくそれは正解かなと感じました。
馬は放任主義でも過保護でもダメ。
「ちょうどいい」を自然と実践できるスタッフを多く抱える厩舎が好成績を挙げているように思っていたのです。
馬を曳く人が普段着で、耳を覆って音を遮るメンコを馬につけないのは、そこに信頼関係があるからこそ。
しかしこれは厩舎スタッフだけの話ではなく、生産牧場や初期馴致、中期育成そして鞍をつけての後期育成すべてで、
馬と人との距離が「いいあんばい」なんだろうなと思わされました。
ただ、競馬の予想をする限りではそこまでを網羅することは無理。
でもそこは「厩舎力」である程度の補完はできるかと思います。
今週の重賞もそこを考えつつ、まずは東京盃からレッツゴー。
◎14.ブルドッグボス
○6.ニシケンモノノフ
▲12.トウケイタイガー
△13.ナックビーナス
△7.コーリンベリー
△4.ショコラブラン
ブルドッグボスは前走がプラス17㎏。
2走前は盛岡遠征でマイナス16㎏でしたから“戻った”という見方はできますが、パドックでの歩きには元気さがなかったような。
でもそこから中1週で出走するということは、厩舎側が「イケる」と判断したと推測。
その「厩舎力」を加味して本命にします。
ニシケンモノノフの前走はレコードタイムでの圧勝でしたが、メチャメチャ時計が出る馬場でのもの。
それでもスピードの破壊力は魅力的で、ここでも押し切りが狙えそう。
3番手のトウケイタイガーは、スミマセン、単なる応援です。
それでもソルテの全弟ですからね。
その血の力に期待します。
続いて木曜日はレディスプレリュード。
◎5.ホワイトフーガ
○15.クイーンマンボ
▲16.ララベル
△9.ジュエルクイーン
△10.アンジュデジール
昨年は2着同着だった兵庫のトーコーヴィーナス(9番人気)を本命にしたのに、馬券の買い方がヘタで不的中だった重賞。
今年はその同着のもう1頭、ホワイトフーガを中心にします。
クイーンマンボはブリーダーズゴールドカップのあと、
角居勝彦調教師が「秋華賞を目指そうかと思っています」と話したので期待しましたが、前走のローズステークスが12着。
それを受けてのダート戻りという条件なら、中17日でも対抗視。
3番手にはララベル。
このレースは「グランダム・ジャパン古馬シーズン」の最終戦でもあって、現在のトップはプリンセスバリューで33ポイント。
ララベルは15ポイントなのですが、ここでララベルが3着に入って地方所属馬最先着ならば、
25ポイント加算で優勝の可能性が高くなります。
その渾身の仕上げには要注目でしょう。
ジュエルクイーンも27ポイントを持っていますから、結果次第で優勝も十分。
逆にプリンセスバリューは馬体重が減少傾向という点を考えて無印にしました。
アンジュデジールは相手関係的に微妙かなという気はしますが、立ち回り次第で上位争いに加わってきそう。
逆にマイティティーは大井までの輸送が心配なので、無印で勝負します!
浅野 靖典
1969年8月1日生まれ
1998年にグリーンチャンネル「中央競馬中継」のキャスターから競馬関係のキャリアをスタート。
現在は各種媒体に原稿を寄稿し、競馬関係のメディアにも出演。
JRA、青森、九州のセリ市場の司会進行役も担当している。
ときどきグリーンチャンネルの番組「競馬ワンダラー」で、ワゴン車の運転手として全国を放浪。
各地の地方競馬場には1~2年に一度以上は訪問している。