
先週は「一芸に秀でることには価値がある」と、改めて感じさせられました。
先週は門別競馬場でエーデルワイス賞を見てきまして、その結果を受けての率直な感想がコレでした。
結果は3頭出ていたサウスヴィグラス産駒のうちの2頭で決着。
勝利したのはグランド牧場で誕生したストロングハートでした。
グランド牧場の生産馬はご存知のとおり、最近の勢いにはすごいものがあります。
エーデルワイス賞では昨年2着のアップトゥユー、3着のピンクドッグウッドがグランド牧場産。
一昨年は1着のタイニーダンサー、2着のモダンウーマン、3着のディーズプラネットと、3頭出しで上位を独占。
今年の3歳世代はヒガシウィルウィンが地方競馬の年度代表馬を狙い、バンドオンザランは優駿スプリントを制覇と、
もうグランド牧場は地方競馬のダート界では無視できない存在になっています。
(写真:エーデルワイス賞のパドック)
グランド牧場は90年の歴史がある老舗なのですが、10年くらい前まではこう言ったらナンですけれど、
あまり目立つ感じがしない牧場でした。
活躍馬はスマートボーイとかフェスティバルとか、G3は勝つけれどそれ以上は……というところ。
創業以来、初めてのG1馬となったスズカマンボだって優勝した天皇賞(春)は13番人気でしたから「偶然たまたま」という印象で、
実際に2001年の天皇賞(春)以降は、目立った活躍馬はそれほど出てきませんでした。
しかしそれが2007年に誕生したラブミーチャンから、だんだん風向きが変わることに。
最近はサンビスタがダートグレードレースを6勝し、チャンピオンズカップを制覇。
そしてここ数年は門別と南関東で「またグランド牧場か」「またサウスヴィグラスか」というケースが増えてきました。
全国行脚でおなじみのトウホクビジンもグランド牧場うまれ。
今年はJRAでカデナが芝の重賞を制しましたが、
やっぱりグランド牧場は「ダート特化型」の牧場というキャラが明確になっているように思います。
今年の9月に初めてその敷地に足を踏み入れさせてもらいました。
整えられた緑に感心し、自然の傾斜を利用できるところも活躍の源になるのだなと感じました。
(写真:グランド牧場=中央にいるのは馬像です)
とはいえ、その原動力となっているのは、生産と育成の方針の合致。
前出の馬でカデナなどを除くほとんどの馬が、自前で育成されたということがその証明になります。
そりゃもちろん「オールマイティー」が最強なんですけれど、それは「すべてが中途半端になる」危険性を秘めているもの。
受験勉強だって全部の教科がよければいいですが、それができない人がそこを目指しても厳しいですよね。
だったら得意の教科で満点を取って、平均点を上げるほうが得策。
日本の牧場や育成場は、そのあたりが徹底されていないように思うんです。
キャラ特化型牧場といえば、代表的なのが「2歳戦のマイネル&コスモ&ウイン」。
ノーザンファームもじつはキャラ特化型で、芝の中長距離の重賞には育成馬がたくさん顔をそろえるものの、
ダート重賞では出走馬がゼロということがけっこうあります。
なんとなく、マイネル&コスモ軍団に芝向きの晩成型が入っても素質が開花されない可能性は大きいような気がしますし、
ノーザンファームで筋肉ムキムキのダート馬というのもイメージ的に微妙。
実際の育成プログラムも基本的に「マイネル&コスモは早期デビュー」で「ノーザンファームはクラシック」を目指す方向性になっていますが、
しかし馬と人とのマッチングがイマイチになっているケースは、わりと多くある気がするのです。
このあたりはホンモノ馬主さんや、いわゆる一口クラブの会員さんが主に考えるべきところだとは思いますが、
馬券勝負のときにも重要。意外とそれで当たりを引くことも多いですからね。
という文章の流れだと、今週の埼玉新聞栄冠賞はグランド牧場のイッシンドウタイに注目、ということになるのですが……。
はたして8カ月ぶりの実戦で大丈夫かしら?
◎4.オウマタイム
○7.イッシンドウタイ
▲8.カンムル
△6.セイスコーピオン
△5.タマモネイヴィー
イッシンドウタイは左回りでの勝利が東京のダート2100mと川崎の2000mの2回。
その点から1900mは歓迎材料になりますが、これまでの成績を考えると8歳の休み明けはちょっと微妙。
しかし無視もできないので、対抗の位置に置きました。
中心視するのはオウマタイム。
キャラ特化型という意味では、この馬が育成された山口ステーブルは「南関東特化型」。
インサイドザパーク、ラッキープリンスと東京ダービー馬を2頭も出し、2015年は育成馬がワンツー。
オウマタイムはその2015年の東京ダービーで6着でしたが、単勝は1番人気。
最近は脚元の関係もあって善戦止まりが多かったのですが、それも今年になって良好に。
休み明け2戦目での上積みにも期待できるでしょう。
ということでグランド牧場のイッシンドウタイは2番手。
カンムルは3歳馬で58㎏はどうよと思うのですが、こちらも山口ステーブルの育成馬。
戸塚記念はワイルドな走りでしたが、浦和コースならその再現が考えられそうです。
先行力があるセイスコーピオンにも要警戒。
タマモネイヴィーは差し脚を長く使えるタイプで、こちらも仕掛けひとつで上位に食い込む可能性があるでしょう。
でも上位は拮抗。馬券はボックス!
浅野 靖典
1969年8月1日生まれ
1998年にグリーンチャンネル「中央競馬中継」のキャスターから競馬関係のキャリアをスタート。
現在は各種媒体に原稿を寄稿し、競馬関係のメディアにも出演。
JRA、青森、九州のセリ市場の司会進行役も担当している。
ときどきグリーンチャンネルの番組「競馬ワンダラー」で、ワゴン車の運転手として全国を放浪。
各地の地方競馬場には1~2年に一度以上は訪問している。