
ただいま北海道に滞在しておりまして、いろいろな場所を見学中。
これまで北海道にはわりと来ているほうだと思っていたのですが、まったく知らなかったことがたくさんありまして、
“人生老い易く学成り難し”を実感しているところであります。
そんななか、とある牧場で聞いた、大ベテランのスタッフの話は衝撃的でしたね。
昭和40年あたりまでは、北海道への集団就職というシステムがあったそうなんですよ。
高度成長期に地方の学生が“集団就職”で大量に東京に来た、というのは有名な話。
上野駅に到着した列車から学生服を着た若者がゾロゾロと降りてくるニュース映像が頭に浮かびます。
しかし、東京と逆方向に向かうケースもあったとは!
その話をしてくれた人は秋田県出身。
農家だと長男以外は家業を継ぐことができないことが多く、そうなると中学または高校を出たあとは自力勝負。
その選択肢のひとつとして、北海道の牧場があったそうなのです。
その人は、とある牧場が開設した研修所に30名ほどの同世代とともに入所して、牧場で働くためのノウハウを得たとのこと。
実家から列車に揺られ、青函連絡船を経て函館からまた列車に乗り、苫小牧から国鉄日高本線という道のりですから、
おそらく出発してから24時間以上。
今みたいに“検索”ができない時代ですから、まさに地の果てに向かうという道中は不安だったことでしょう。
(鹿が大量に放牧中)
そして連れていかれた「研修所」は、まさに地の果て。
宿舎と3度の食事は完備されていたそうですが、月の給与というかお小遣いは3千円ほど。
「バスで街まで行くと片道10円」だったとのことなので、待遇がよかったのかどうかについては微妙なところです。
山の中ですから娯楽も乏しい状況で、休みは月に3日程度。
そういった日々を乗り越えたその人は70歳近くになった現在でも牧場作業を続けていますから、
『若い頃の苦労は買ってでもしろ』という言葉が実感できました。
そして同時に、現在の日本の繁栄はそういった人たちによってもたらされたんだなあと思いましたね。
全員が頭脳労働者では、世の中が成り立つのは不可能。
また、全員が楽な仕事に流れて“ソコソコの生活”を目指しても、経済は停滞してしまいます。
牧場は所有者が変わり、
現在の経営者いわく「若い人が来てくれても、ちょっとキツいことをさせると辞めちゃうんですよ。だから相当に気を遣っていますよ」と、
ボヤくことしきり。
この業界に共通する慢性的な人手不足もまた、実感することができました。
浦河のBTC(軽種馬育成調教センター)には、1年間の全寮制で馬のことを学ぶ「育成調教技術者養成研修」という制度がありまして、
カリキュラムを修了した若者の就職率は100%が続いているとのこと。
「なんかわからないけど紹介されたから牧場に来た」という人は絶滅しましたから、最近は志願してくる人たちだけが頼り。
となると、競馬に興味をもってくれた若者に対して、もっとソフト面での施策を考えないとダメですね。
牧場巡りをもっとしやすくするとか、厩舎見学会をひんぱんに実施するとか、そのあたりがまず改善点として浮かびます。
牧場巡りって、個人ではなかなかできないんですよね……
だからなのでしょう。
競馬業界において、日常から馬に親しんでいる人の割合が増えているのは。
つまり、牧場主の子供や騎手、厩務員の子供。
そういえば大井でデビューした今年の新人騎手2名は、両方とも二世ジョッキーでした。
先週日曜日に行われた「浦河競馬祭」のポニーレース、浦河ダービーも二世がたくさん出場していました。
この子たちの大半は、馬に携わる仕事をすることになるのでしょう。
そんな頼もしい子供たちが争う16頭立て。
でもそのなかに、明らかに大人の姿が混ざってる!
さらにその出馬表に「五十嵐冬樹」という名前があるからまたビックリ!
おいおい、子供のなかにプロが混ざるっていうのは反則でしょ?
でもまさか、子供たちを相手に本気追いはしないよなあ。
きっと空気を読むはず。
(中央の水色の服が五十嵐騎手)
ということで勝ち馬投票は別の馬にして、距離ハンデありの600m戦を観戦。
すると最後の直線で、馬場のど真ん中を通って一気に伸びてくるあの馬、あれは五十嵐騎手ではないですか!
じつは、事前に出走馬の関係者や騎手に出走馬についての聞き込みをしておりまして、
その情報からはひとつも出てこなかった五十嵐騎手の馬。
それがまさか、子供を相手にガチ追いしてくるとは!
しかしビデオ判定の結果、追込みはわずかに届いていなかった模様。
おとなげねぇ~と思うと同時に、やっぱり鞍上は重要なんだなと実感しました。
それを受けて、サンタアニタトロフィーに出走する騎手について、今年の大井実績をチェックしてみました(短絡的……)。
騎乗する13名の騎手で、大井での勝率がもっとも高いのは御神本訓史騎手で28.7%(先週末までの数字)。
連対率は39.9%で、南関4場のなかでも大井での数字がトップになっています。
同じく大井での数字がもっともいいのが藤本現暉騎手。
勝率8.3%、連対率13.7%ですが、南関4場のなかでは数字的に大井がもっとも得意。
的場文男騎手は大井での連対率がほかの3場よりも上。
やはり「大井の帝王」はデータ上でもそれを実証しているようです。
あとは森泰斗騎手が勝率17.5%、連対率32.3%と好成績。
笹川翼騎手も勝率11.1%、連対率21.8%という数字を残しています。
それを踏まえて検討すると、
◎1.モンドアルジェンテ
○5.ゴーディー
▲13.ヒガシウィルウィン
△7.リコーベルリネッタ
穴11.バルダッサーレ
穴3.グランディオーソ
穴4.カンムル
モンドアルジェンテがJRA時に挙げた5勝はすべて1800m以上。
マイル戦になる今回はそこがちょっと心配ですが、最内枠と鞍上がカバーしてくれることでしょう。
ゴーディーは昨年の予想で無印にした記憶がおぼろげながらあるのですが、先手を取れそうな今回は逃げ切りが視野に入りそうです。
ヒガシウィルウィンは59kgを考慮して3番手に。
大井が得意な藤本騎手もマークしましょう。
穴に挙げた3頭は、今年の大井で連対率が20%を超えている騎手が騎乗。
というわけで、今回は騎手に注目してボックス買いを敢行します!
浅野 靖典
1969年8月1日生まれ
1998年にグリーンチャンネル「中央競馬中継」のキャスターから競馬関係のキャリアをスタート。
現在は各種媒体に原稿を寄稿し、競馬関係のメディアにも出演。
JRA、青森、九州のセリ市場の司会進行役も担当している。
ときどきグリーンチャンネルの番組「競馬ワンダラー」で、ワゴン車の運転手として全国を放浪。
各地の地方競馬場には1~2年に一度以上は訪問している。