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「円周率と競馬」
2019年2月18日

ここ2週間ほどですが、どうも予想が絶不調でして。
予想がまったくのトンチンカンな方向になっていることもあれば、
上位入線馬は網羅しているのにその順番が違うという惜しい系のハズレもあるのですが、結果としては同じ不的中。
いくつかあるわが座右の銘のひとつには「惜しいとハズレは同じ意味」があるわけでして、偶然だろうが必然だろうが当たれば官軍。
でもこれがペーパーテストだったら実力がわりと結果に現れるので、不合格=勉強不足と捉えられますが、競馬の予想は別なんですよね。
理詰めで“コレ以外はない”と絞り込んでも、実際のプレイヤーは自分じゃないわけですから。

それでも予想が当たらないのは、自分の感性が現実とズレている、ということなのでしょう。
調子がいいときは、どんなヘンテコな予想でも、結果として当たることも多々。
今は各種のバイオリズムが下の位置にあるのだと思います。ということで、ひたすら頭を低くして被害低減に励みます……
野村克也さんは「負けに不思議の負けなし、勝ちに不思議の勝ちあり」という名言を残しています。
勝負ごとには勝ち負けがついて回るものですが、でも競馬の世界でそれが適用されるのは、騎手と厩舎関係者だけでしょう。
予想する側には「負けに不思議の負け」があるんですよね。
落馬とか。

しかしですよ。
私の2019年の馬券収支はそこそこプラスになっているのです。
予想は当たらなくても馬券は当たるとはこれいかに。
その理由は秘密にしたいんですけど書いちゃおう。
それは「馬場」を重視しているからなのです。
昨年12月のJRA「阪神カップ」で3連複5万馬券を的中させましたが、買った馬券は内枠重視のボックス馬券。
JRAの芝コースは、芝の品種と生育管理が進化して、さらに馬場造園技術も向上。
馬場造園課の仕事は“きれいな芝コースを作る”ことですから、好タイムが出ることはイコール「グッジョブ」になります。
しかし“良すぎる”というのは考えもの。
そうなると内枠の先行馬が断然有利になるのは必然、ということで、私は単にそれを利用しているだけなのであります。

結果は2-3-5で大的中

(結果は2-3-5で大的中)

だってみんな、円周率3.14は小学校か中学校で習っていますよね?
そして円の外周を計算する式は、直径×円周率。

ここで問題!
●コーナー4つの競馬で内ラチから3mの位置を最初から最後まで通ったら、
内ラチピッタリを走った馬より走る距離は何メートル長いでしょうか?
答えは18.84m。
つまりだいたい9馬身。

はたしてその馬は、それだけ長く走っても勝てる実力があるのでしょうか?
その答えは、だいたいの場合はNOでしょうねえ。外を回るのなら、それだけ損する覚悟が必要だと思うのです。
それがメチャメチャ顕著なのが香港競馬。
昨年の香港スプリントでは、大外枠を引いたファインニードルを、私は1ドルも買いませんでした。
香港競馬の短距離戦は、多くの場合、馬と馬との間隔が日本より左右も前後も狭くなりますから、
そこで外枠を引いたらノーチャンスになる可能性が大。
たとえばコーナー2つの競馬で、
内側に3頭いる、その外側(内ラチから約4m)をスタートからゴールまで通らされた場合の距離ロスは、4×3.14=12.56m。
つまりおおむね6馬身。
香港の1200m戦で6馬身の不利があったら、G1を勝てる馬でも馬券圏外ですよ。

香港競馬の様子

(香港競馬の様子)

そういったことを根拠に、私はインコースを通ることが重要だと思っているのです。
そこで思い出されるのが、報道などでよく見られる「いい位置を取れなくて」とか「外に出してからはいい脚を使ったんですが」などの文字。
これは野村監督の言葉を借りれば「負けに不思議の負けなし」の典型例だと思います。
競馬には当たりハズレ以外の要素がたくさんあるというのは承知していますが、
馬券からの視点だけで言えば「もうちょっとだったのに」や「負けて強しの内容」などというのは、
結局のところ、敗者の慰め以上でも以下でもないのです。
そりゃ私もハズレたときはそんなことを言うけどさ。

それは地方競馬も同様。
とくに、きついカーブがある大井、川崎、浦和の中距離戦は、2コーナーで先頭から最後方まで50mくらいの差がつくことがあります。
その要因のひとつには、各騎手の頭に「逃げ先行が有利」が刻まれているから、があるように思います。
そこで問題になるのは、先頭を走っている馬が、楽に行けているのか、それとも無理しているのか。
前者なら逃げ切る可能性があり、後者なら差し馬台頭という結果になりがちです。
それと同時に考えなければならないのは2番手以降の馬のコース取り。

水曜日の報知グランプリカップもそこを考える必要があると思います。 ただし、船橋コースは南関東のなかでは特殊。
1コーナーと3コーナーのカーブがゆるくて、2コーナーと4コーナーのカーブは急。
そして報知グランプリカップが行われる1800mは、スタートから1コーナーまでの距離が500mほどあります。
なので、某ベテラン騎手の評価は「日本でも有数の公平なコース」。
ならば力量比較をキッチリやれば、トンチンカンな予想にはならないんじゃないかな~と思うのですが?

◎3.タービランス
○1.ワークアンドラブ
▲11.ゴールデンバローズ
△7.シュテルングランツ
△12.キングガンズラング
△10.エンパイアペガサス

それでもやっぱり、いい位置を取りやすいのは内枠。
タービランスは報知オールスターカップがハナ差負けでしたが、この条件で3番枠なら今回も主導権が取れそう。
最内枠から単騎逃げが狙えそうなワークアンドラブにもチャンスあり。
ゴールデンバローズは前走の大師オープンが完勝で、ここでも好位からの差し切りに要注意。
シュテルングランツはこの距離でも先手主張が叶えば残り目が考えられそうです。
キングガンズラングは前走がいまひとつでしたが、実力的に無視できない存在。
エンパイアペガサスは一昨年の覇者ですが、今年の顔ぶれでは押さえまでが妥当かなと思います。
ちなみに私の現在地は熊本県。今日の昼食はラーメンでした!

浅野さん

プロフィール

プロフィール

浅野 靖典

1969年8月1日生まれ

1998年にグリーンチャンネル「中央競馬中継」のキャスターから競馬関係のキャリアをスタート。
現在は各種媒体に原稿を寄稿し、競馬関係のメディアにも出演。
JRA、青森、九州のセリ市場の司会進行役も担当している。
ときどきグリーンチャンネルの番組「競馬ワンダラー」で、ワゴン車の運転手として全国を放浪。
各地の地方競馬場には1~2年に一度以上は訪問している。

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