コラム”

「そのだ・ひめじの吉田勝彦アナウンサー」
2020年1月14日

わたくしが敬愛する競馬界のレジェンドのひとりが、吉田勝彦アナウンサー。
園田競馬と姫路競馬でレース実況を担当する大ベテランです。

吉田先生(ここ数年はそう呼ばせていただいています)と知り合ったのは15年くらい前。
「廃競馬場巡礼」という本を出すにあたって、昭和49年に廃止された大阪府の春木競馬の話を聞かせていただいたのが始まりです。
お会いするにあたってまずは電話をしたのですが、こちらは日時を決めるだけでよかったのですが、吉田先生の話が長いのなんのって。
その当時の話が始まって、20分くらいの電話になってしまったのでした。

これはもう、お会いして話を聞かなくてもいいんじゃないかというレベル。
でもそれでは失礼ですから園田競馬場に伺うと、大阪府にもうひとつあった長居競馬場の話を含めて、
たっぷり聞かせていただくことができました。
そして「浅野君、今日は時間がありますか」とお誘いが。
このときはまったく知らなかったのですが、先生は飲みに行くのが大好きなのです。
園田競馬が終わり、ダイジェスト番組の収録が終わると任務完了。
その後は「珉珉」という餃子屋さんでビールをガブガブ。
さらに新梅田食堂街にある「みやけ」というカウンターバーに行ってウイスキーをガブガブ。

引退式後の懇親会でビール

(引退式後の懇親会でビール)

私が訪問したのが開催最終日の木曜日だったため、吉田先生は翌日が全休日。
というわけで、終電の時刻まで長丁場の飲みになったのでした。

それ以後も先生には酒場の席でいろいろな話を聞かせていただきまして、
そのうちのいくつかは「吉田勝彦のすべらない話」として、私の頭のなかに口述伝承されています。

高校卒業後、ラジオドラマの俳優を志して加古川から大阪の養成所に通い、そのなかで見つけた競馬実況のアルバイト。
自宅から阪和線の久米田駅まで片道3時間をかけて通い、競馬のことを知るために厩務員と一緒に汗を流して働いて、
そして徐々に自分のスタイルを確立していった……
その実況は、描写ではなくドラマ。
私の友人のひとりは「競馬の実況に物語はいらないでしょ」と言いますが、それも正論だと思います。
でも吉田先生の実況は独自の世界。
園田競馬場で実施された2008年のJBCでは、JBC競走の前後の重賞、楠賞と兵庫クイーンカップを実況されたのですが、
そのときに初めて園田競馬場に来たとおぼしき若者が「実況にシビれた!」と笑顔満面で叫んでいました。

最終レースで横断幕

(最終レースで横断幕)

観客に興奮を湧き起こさせるのが「吉田節」。
最後の実況となる1月9日は、第1レースと第2レース、そして第5レースと第6レースを語るとのこと。
その発表を受けて、第1レースを姫路競馬場で聴き、すぐに移動して第6レースを園田競馬場で聴くという計画を立てました。
となると効率的な移動方法は、夜行バス(汗)
年末の体調不良の影響がまだ残っているのは自覚していますが、これはもう仕方なし。
せめて少しは楽をしようと、3列シートのちょっとお高いバスで出発しました。
4000円ですけど。
翌朝6時に京都駅に着いて、電車で姫路駅に向かい、播但線に乗り換えて2駅の野里駅で下車。
そこから徒歩10分で姫路競馬場に到着です。

翌週から始まる「7年半ぶりの姫路開催」に向けて、場内はどうなっているのかな?
と思いながら入ったら、走路はまだ整備の余地を残している感じ。
「最後の直線に外ラチを付けてほしい」という某騎手の要望が叶えられているか確認に行くと、
残念ながら外ラチではなく、旧来の鉄柵のままでした。

姫路競馬場

(姫路競馬場)

7年半の休催期間中に姫路競馬場に来るのは3回目ですが、改めて見ると幅員があんまりないんですね。
この競馬場でどんなレースが見られるのか、楽しみにしたいと思います。
どうか事故のないように!

スタンドのなかは1年半前に来たときよりもキレイになっていました。
施設をぐるっと巡ってから食堂棟に行くと、客はゼロ。
場外発売で第1レース前だから仕方ないのかな。
でも「週末のJRA発売のときは賑わいますよ」と食堂のオバチャン。
ここに腰を据えて、レースのときだけ外に出るという楽しみかたもあるかな?

1軒しか開いてなくても食堂街

(1軒しか開いてなくても食堂街)

第1レースが終わったところで園田競馬場に向かい、到着したのは第6レースのパドック周回中。
吉田先生の最後の実況を放送席の真向かいで見守りました。
周囲には同じことを考えていた人がおよそ100人。
レース中なのにコースには背を向けて、そして実況が終わったら拍手。
さらに吉田先生が立ち上がって礼をしたところでまた拍手が沸き起こりました。
そのあとに実施されたサイン会は、長蛇の列でもう大変。
このために休みを取って遠方から来たというファンもたくさんいました。

サイン会

(サイン会)

最終レースのあとは引退式。
といっても、吉田先生が引退するのはレース実況だけ。
「来週からも競馬場には来ますので」とおっしゃっていました。
ということで現役生活は続行ですね。
今後も園田競馬場や姫路競馬場でお会いできることでしょう。

それにしても、ひとつのことに60年以上も携われるなんてスゴイとしか言いようがありません。
私はその域にまで達することは不可能ですが、先生を見習いながら楽しめたらと思います。

荘司典子さんも引退式に立ち会いました

(荘司典子さんも引退式に立ち会いました)

南関東のレジェンドといえば的場文男騎手。
昨年で38年続いた重賞勝利記録が途切れてしまいましたがまだまだ健在です。
12月21日にはウインズ汐留でのトークイベントで、観客を沸かすトークを炸裂させてくれました。
ただ、水曜日のニューイヤーカップは……、どうしようかな(汗)

◎2.グリーンロード
○3.ファルコンウィング
▲6.ヒイロメープル
△7.チョウライリン
△8.マナーザマジック
△4.マンガン

浦和競馬場の1600mは内枠が断然有利というのは周知の事実。
となれば、逃げ先行で3連勝中のグリーンロードを中心視していいでしょう。
ファルコンウィングは通算8戦2勝ですが、浦和で逃げた2回は両方とも2着に3秒差以上をつける圧勝。
重賞でも逃げられたらスゴイことになるかも!?
それでもイメージとしてはグリーンロードの相手探し。
そのなかに的場騎手のチョウライリンも入れておきます!

プロフィール

プロフィール

浅野 靖典

1969年8月1日生まれ

1998年にグリーンチャンネル「中央競馬中継」のキャスターから競馬関係のキャリアをスタート。
現在は各種媒体に原稿を寄稿し、競馬関係のメディアにも出演。
JRA、青森、九州のセリ市場の司会進行役も担当している。
ときどきグリーンチャンネルの番組「競馬ワンダラー」で、ワゴン車の運転手として全国を放浪。
各地の地方競馬場には1~2年に一度以上は訪問している。

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