コラム”

「この時期に限る考察」
2020年5月11日

先月から週末のJRAで個人的に実行している作戦がありまして、その名前は
「前半戦でチマチマ増やしていくぜ作戦」

3月10日に高知競馬場で行われた黒船賞を取材しに行きまして、そのレースを逃げ切ったラプタスに騎乗していた幸英明騎手が、
勝因のひとつとして「無観客」を挙げていたことを「南関道中」の3月16日付けで書きました。

パドックで人間が動いているのが気になってしまうタイプ、
さらにはパドックで “これからレースだ”と察してムダに気負ってしまうタイプは、
その実力をレースでフルに発揮できないことが多いと思います。

これと似たようなことがたとえばプロ野球でもありまして、練習では素晴らしいパフォーマンスを見せるのに、実戦になるとカラッキシ。
そういう投手のことを“ブルペンエース”と呼びますが、野球ファンのかたなら思い当たる選手がすぐに浮かんでくるかと思います。
2軍では無双状態なのに、1軍に上がるとイマイチという選手が……(涙)

そうなってしまう理由の多くは「気持ちの問題」だと思うのです。
サラブレッドにもそういうタイプがいまして、これまでの私の取材からでも「調教だけならG1クラス」という馬が何頭か思い浮かびます。

サラブレッドは基本的に繊細で怖がりなもの。
これを克服させ、体力をつけさせるために、生産牧場では“昼夜放牧”という、昼すぎから翌朝まで放牧するのが普通になっています。

放牧されている馬たちは、夜になると神経をとがらせます。
遠くにいる敵が見えないのですから、気配や音に注意するしかありません。

昼夜放牧中

(昼夜放牧中)

でも夜の闇に慣れてくると、たいていのことでは動じないというメンタルができてきます。
もちろん、臆病な面が残ってしまう馬もいますし、なかには「キタキツネにビックリして走ったら牧柵にぶつかって大ケガ」という事例もあります。
でもそれ以上のメリットを牧場側は感じているのです。

しかしそういった経験を経ていても、サラブレッドはやっぱり繊細なもの。
競馬場に着いて装鞍所に行ったら、ケンカが強そうな馬にビビっていきなり下痢になってしまい、断然人気で大敗してしまった馬もいます。
ただ、それは例外中の例外。
全体的に考えて、静かなパドックと静かなスタンドは出走する各馬が実力をフルに出せることにつながると感じたのです。

黒船賞のラプタスは普通に歩いていました

(黒船賞のラプタスは普通に歩いていました)

その直感ははたして本当なのでしょうか。

それを検証するために、JRAのレースの大半を占める平地の未勝利と1勝クラスでチェックしてみました。
すると過去数年の同時期より、無観客時の単勝1倍台の勝率と連対率が1割ほど上昇していることが判明したのです。

これをもとにして、私は4月に入ってから「前半戦で明らかに実力上位と思われる馬の単勝を買う」作戦を実行しているわけです。
基本的には単勝1倍台がターゲットで、“押し出された1倍台”と感じたらパス。
これがけっこう当たるんですよ。
でも欠点もあります。

それは、
●馬券を買えるレースがとても少ない
こと。その反面、
●的中率が高いので、アドレナリンはそれなりに出る
のは確かです。ただし、
●払い戻し発表までのワクワク感がほとんどない
のがビミョー。
なにごとも長所と短所はあるものです(笑)。

その作戦でチマチマと残高を増やしているのですが、それはJRAでの話。
地方競馬では実行していませんでした。

というわけで今さらですが、南関東ではどうなっているのか、調べてみました。

対象とするのは3歳または4歳限定の下級条件と4歳以上のC級戦(JRA交流を除く)。
上級条件になると、ラプタスのように“実力はあるけどそれを発揮できなかった”タイプが激走することが多くなります。
だからこそ、実力差がハッキリしていることが多い下級条件が狙い目だと思うのです。

☆2月27日から3月27日までの南関東で、上記の条件で単勝1倍台の支持を受けた馬は72頭。
その結果は、
1着=30頭(勝率41.7%)
2着=17頭(連対率65.3%)
3着=12頭(3着内率81.9%)
4着以下=13頭

※手作業での集計なので、間違いがあったらゴメンナサイ。

一方、無観客で実施されたJRA中山&阪神開催における、未勝利&1勝クラスで単勝1倍台だった馬は89頭。
その結果は、
1着=49頭(勝率55.1%)
2着=22頭(連対率79.8%)
3着=5頭(3着内率85.4%)

南関東のほうが、単勝1倍台の信頼度が低い!

この理由を推察すると、
●出走馬に関する情報が少ないために、過去の成績に頼る人の率が高い
●JRAよりもオッズに左右されて買う人の率が高い

というところでしょうか。

そのなかで気になったのが「単勝1倍台で4着以下に敗れた馬には、デカイ馬が多い」という件。

該当馬は13頭いましたが、そのうちの7頭の馬体重が510㎏以上だったのです。
そのあたりを含めて分析すると、興味深い結果が出てきそう。
でもそれをやるには時間と労力が必要……。
しかしながら、その結果から言えると思われることがあります。
それは、
「南関東ではやっぱり、流すなボックス」
でしょ!!!

さあ、では上級条件のレースですが、川崎マイラーズも基本はボックスで行きまっしょー!

◎13.カジノフォンテン
○2.リッカルド
○8.アンサンブルライフ
○9.クリスタルシルバー
○10.クインズサターン
△5.サルサディオーネ
△1.ワークアンドラブ

こんなヘンテコなシルシにしたのは、過去5年の川崎マイラーズでは
「2~3走前に、南関東のレースで単勝2番人気だった馬が1頭だけ連対する」という謎データがあるため。
つまり、本命を4戦連続1番人気のカジノフォンテンにした場合は、馬複の相手がそのデータに該当する4頭になるのです!
そのうしろの2頭は3連勝式の候補になります。
まずはこれで3連複ボックスにするつもりですが、馬複と3連単も考えてみようかな!?

プロフィール

プロフィール

浅野 靖典

1969年8月1日生まれ

1998年にグリーンチャンネル「中央競馬中継」のキャスターから競馬関係のキャリアをスタート。
現在は各種媒体に原稿を寄稿し、競馬関係のメディアにも出演。
JRA、青森、九州のセリ市場の司会進行役も担当している。
ときどきグリーンチャンネルの番組「競馬ワンダラー」で、ワゴン車の運転手として全国を放浪。
各地の地方競馬場には1~2年に一度以上は訪問している。

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