
高知所属のユメノホノオが4月20日に韓国・ソウル競馬場で行われる「YTN杯」に出走する予定で、
栃木県は那須の地方競馬教養センターで輸出検疫を受けている、と発表されたのは4月初旬。
あらら。4月20日は水沢競馬場で取材する予定になっているのよね……と思っていたら、
グリーンチャンネルの「アタック!地方競馬」の制作チームが取材に行くことに。
そこに私も加わる流れになりました。(※4月20日の取材は別の人が担当してくれました)
しかしですよ。ユメノホノオは輸送に問題があるから高知でしか走っていなかったんじゃなかったっけ?
それで初めての遠征が海外って、だいじょうぶなんですかね???
とりあえず、高知から那須までは無事に移動できた模様。
これから、成田空港まで陸路→ソウル仁川空港まで空路→競馬場まで陸路という難関がありますが……
それが心配だから、航空券はユメノホノオが韓国に着いてから買うかな。
と考えていたら、無事にソウル競馬場に到着したという知らせ。
それを受けて、4月13日に行きの航空券を買いました。あとは出走取消にならないことを祈るのみ。
そんな心境で出発準備を進めていたら、釜山所属のファンタスティックマンでYTN杯に遠征してくる上田将司騎手から木曜日に、
「スミマセン、今朝の調教で歩様が悪くなったので出走取消です(泣)」と連絡が来ました。
ということは、ソウルに来ないってこと?
レース後にメシに行く予定だったのに、それも取消とは……(涙)
(幻となった上田騎手のソウル遠征)
ちなみに韓国の競馬は「金曜日の釜山で騎乗→ソウルに遠征」はダメというルール。
なお、週末の出走馬と騎手は水曜日に決定します。
だから木曜日に遠征取り止めが決まった上田騎手は、その週の騎乗予定がゼロ。
うわ~、ツイてないなあ。収入ゼロはきっついわ~
そんなわけで上田騎手は、4月末で日本に帰ってくる予定を1週間だけ延長しました(笑)。
がんばって稼いでちょ!!!
でもユメノホノオは出走メンバーに名前がありました。
馬番=ゲート番号は3。じゃあ、帰りの飛行機も予約しましょかね♪
そんないろいろがありまして、4月19日(土)の夕方にソウルに到着したわけであります。
したらばスゴイ雨。聞いてないよ~
(ソウル仁川空港に到着)
でも日曜日は朝から晴れでありがたや。
競馬場に着いて、まずは浅野一哉騎手(所持している騎手免許はニュージーランド)に「初めまして」とごあいさつ。
(浅野騎手)
その後は打ち合わせがあったり交渉があったりで時間が過ぎて、
昼メシをたべたらパドックの時間まであと少し。さあ、どんな感じで登場するのかな?
ちなみに私が番組のスタッフに送った予想はコレでした。
◎12.グローバルヒット
○9.サクセスベクパ
▲15.スピードヤング
△11.ナットプレイ
△3.ユメノホノオ
穴4.ティズバローズ
グローバルヒットは昨年のコリアカップで3着。ライトウォーリアに先着しているわけですよ。
そのグローバルヒットといい勝負をしている馬が上位ではないかしら。
そしたらビックリ。パドックに出走馬が入ってきたときの単勝オッズは、ユメノホノオが1番人気で1.6倍。
誰ですか、こんなにたくさん買ったのは!
(ユメノホノオと吉原寛人騎手)
たぶん馬主さんかなあ。韓国は前売りで買うという文化がなくて、締め切り5分前くらいからオッズが大きく変わります。
10年くらい前まで前売りで馬券を買える窓口が限定されていた名残かも。
しかしユメノホノオの単勝オッズは最後まで低いままでした。
おそらく韓国の競馬ファンには、コリアカップで日本馬が上位を独占しまくった記憶が刻まれているんでしょう。
でもちょっと待て。コリアカップで馬券圏内に入っているのはすべてJRA所属。
ユメノホノオは高知競馬所属で、しかも招待競走のコリアカップと違って、この遠征費用は自分持ちですよ!!!
(締め切り8分前のユメノホノオは2.1倍で2番人気)
ちなみに現地の競馬新聞には、そういう情報はゼロと同等といえるレベル。
だから脊髄反射で「日本のウマ=つよい」となった人が多かった模様です。
でもレースはオッズとは無関係。
ユメノホノオは好スタートから2番手につけて、最後の最後まで頑張って3着に粘りました!
(勝ったのはグローバルヒット=昨年のコリアカップでライトウォーリアに先着)
「大敗も覚悟していましたが、こんな走りを見せてくれるなんて。最後も差し返そうとしていて、感動しました」と吉原寛人騎手。
それは私も同じですよ。展開的には大負けしてもおかしくないもの。
(レース後は上機嫌でサイン会)
こんな内容での3着だったら、追加の取材をしないともったいない。
というわけで韓国馬事会の職員に交渉して、国際厩舎の近くまで行くことにしました。
そこで田中守調教師、長旅をともにしてきた山頭信義調教助手といろいろ雑談。
とにかく高知所属馬の海外遠征は初めてだから、ノウハウもほとんどありません。
でも山頭助手が騎手デビューしたのは船橋競馬。
そこで、同じ船橋の川島正一厩舎のマネージャー、川島光司さんと旧知の仲だったことが助太刀になりました。
そこから得た情報を整理して、手配や調整をしたのは山頭助手。
慣れない環境、できることに制限があるなかで3着という結果を出したMVPは、山頭助手だと思います。
(山頭信義調教助手)
「ゲートを出た瞬間、もうそこで感動。そして最後まで頑張る姿を見て、また涙が出てきました」
山頭さんは船橋所属時代に高知に期間限定騎乗で修業して、そのあと高知に移籍。
2019年の夏に騎手から調教助手に転身して、たくさんの活躍馬を送り出しています。
「僕が船橋にいたとき、父が『船橋から世界へ』という応援幕を出してくれていたんです。
韓国に着いて飛行機から降りたとき、その文字が蘇りました。これまでいろいろあって高知に来て、
今は騎手ではないけれど、僕が選んだ道は間違っていなかったのかなって」
船橋から高知を経由して世界へ。
山頭助手のお父さんは天国からしっかりと見てくれていたことでしょう。
そして改めて感じるのは「高知競馬の底力」。
オヨヨ、水曜日の浦和・しらさぎ賞にも高知の馬が出走しているではないですか!
◎6.フェブランシェ
○11.マーブルマカロン
▲9.パウオレ
△10.シトラルテミニ
△8.カレンチャンキー
穴3.ダノンミカエル
スミマセン、高知のダノンミカエルは「穴」で。
でもJRA所属時は左回りだけで3勝しているから、一発があるかも?
本命は、YTN杯の3コーナーで後続にマクられそうになりながらもマクらせなかった、吉原寛人騎手のフェブランシェです!
浅野 靖典
1969年8月1日生まれ
1998年にグリーンチャンネル「中央競馬中継」のキャスターから競馬関係のキャリアをスタート。
現在は各種媒体に原稿を寄稿し、競馬関係のメディアにも出演。
青森、九州のセリ市場の司会進行役も担当している。
ときどきグリーンチャンネルの番組「競馬ワンダラー」で、ワゴン車の運転手として全国を放浪。
各地の地方競馬場には1~2年に一度以上は訪問している。