
1月15日(金)は前々回に書いたとおり、
テスタマッタなどの日本で育って韓国・済州島で暮らす種牡馬たちと面会、
そして午後は済州(チェジュ)競馬場に突撃!
ここは済州の在来馬を保護育成するという目的を含めて設立された競馬場で、在籍馬はすべてポニー。
ただ、純粋な在来馬のほかに、血統的に別の種類と混ざっている馬がいるので、レースは2本立てで行われている。
新聞の成績欄を見てみると、やはりというか、在来馬はそうでない馬よりもスピード的に微妙という様子。
というわけで、興行として成り立たせるには別々のレース体系にしないと厳しいのだろう。
ただし上級条件になるとハンデ戦になるケースが多く、場合によってはハードな斤量で出走する馬も。
ちなみに1月29日に65㎏で出走した馬は、当日の馬体重が289㎏……。
そりゃブービーに負けるのは仕方ないよなあ。
でもそのレースで勝った馬は63.5㎏のハンデ。
済州競馬はけっこう難しいのですよ!
(残り150m)
そういう特殊な競馬だから、普段どおりの戦いかたでは調子が出ない。
だから私はこれまでまともに勝ったことがない(キッパリ)。
というわけなので最初から弱気モード。
まずは「長いものには巻かれろ戦法」でオッズと新聞のシルシに頼る買い方をするも、やっぱりというか当たらない。
こりゃパドックを見なきゃ、ということで第4レースは最前列で出走馬を凝視。
そこで選んだ10頭立て9番人気の馬が3着に入って3連複88倍が当たったものだから調子に乗って、
次のレースも寒いなかパドックに臨場したのだが、そこで「じつは、ポニー競馬ではパドック診断が通用しないのでは?」という空気を感じたのだ。
そう思った理由は、
●パドックを歩く馬のスピードがすごく遅い。
●馬を曳いているのは厩務員さんではない。
ということから。
2番目の件に気づいたのは、第4レースのパドックで1番の馬を曳いている太目の兄ちゃんが、あまりにヤル気ゼロの態度だったからなんですね。
馬を曳きながらアクビするし、見た目に「だりぃ……」という香りを発散しているから、「あんなヤル気のなさじゃ、馬にもそれが伝わるよ」
と思っていたら、次のパドックでも1番の馬を曳いているのはその兄ちゃん。
その次も、その次も!
(1番の係員)
ということはあの兄ちゃん、今日はパドックでゼッケン1番の馬を曳く係なんだな。
そして年齢から察するにアルバイトではなかろうか。
しかしながら、明らかにメンドクセー的な態度を表に出しているのは1番だけ。
ほかの兄ちゃんは与えられた仕事を可もなく不可もなく処理しているように見える。
こんな負のオーラを出している兄ちゃんと一緒にいたら、走る気なんか失くなるよな?
と思って、第5レースで1番の馬を外して買ったら、2着に来よった!!
3番人気馬だったから、負のオーラより馬の力量が上回ったということなんでしょうか。
ちなみにその馬の名前は「マニア」。
うーむ、深い……。
でも、済州競馬の謎が少し解けた気がしたので、気を取り直して外国人専用席に行こう。
と、ゴール前のスタンドの3階に行ってみたら「場所が変わったよ」だって。
ということで連れて行かれた先は、ゴール前ではないスタンドのいちばん4コーナー寄り。
個室で料金無料なのは変わらないけれど、以前の席よりダウングレードだなあ。
いやいや、贅沢を言ったらいかん。
などと思いつつひと休みしていたら、制服を着たお姉さんが我々のテーブルに来た。
そして日本語で「済州競馬のご案内をさせていただきます~」
いや、あの……、こちらは馬券の買いかたとか、完全に把握しているんですけど……
と言う前に、お姉さん(カン・ヨンジュさん)の説明が始まってしまった。
話の途中で職員さん?と聞いたら、チェジュ大学で日本語を学んでいて、インターンで働いているとのこと。
それなら日本語の練習に付き合ってあげなきゃな~。
済州競馬場は、地方政府からは観光ポイントのひとつとして考えられているようで、日本語ができる人がいることが多い。
そしてなんと、日本語の出馬表も用意されていた。
需要なんてほとんどないように思えるのだけれど……
(日本語の出馬表)
実際、場内にいた日本人は3人組の我々のほかに、あと2人組がいたような?
という程度。
しかし新聞売りのオバチャンは(雑な)日本語で呼び込みしてきたんですよ。
なんで我々が日本人だとわかったの?
そうそう、私が考える済州競馬の必勝法(暫定版)。
それは、馬場入場時の歩様を見ること。そこで軽やかだなと感じた馬は、高確率で首位争いをするようだ。
ただ、これはサラブレッドに応用するのはむずかしいかなあ。
ましてユングフラウ賞は冬に行われる3歳牝馬限定戦だし。
◎モダンウーマン
○リンダリンダ
▲ラッキーバトル
△タケショウメーカー
△クライフターン
モダンウーマンを門別競馬場で見たときは、ここまでスゴイと思わなかったけれど、
今になって勝ったレースを振り返ってみると、まだまだ余裕があるという印象。
脚質的に浦和コースも悪くないとみて、再度の押し切りに期待したい。
東京2歳優駿牝馬で2着だったリンダリンダは、本来ならば先行できるタイプ。
それでも自在の脚がある点は、プラスと考えていいだろう。
割って入る候補として、前走の末脚に光るものがあったラッキーバトルを指名。
タケショウメーカーは前走から中11日という点が気になるが、コーナー4つの競馬場でまくり脚が使えるタイプとみる。
穴はクライフターン。
前走の8着は3コーナーでバテた馬のインを突こうとしたら、その馬が邪魔になってブレーキをかけざるを得なくなったのが原因。
本来の先行力が発揮できれば、ここでも好勝負ができそうだ。
浅野 靖典
1969年8月1日生まれ
1998年にグリーンチャンネル「中央競馬中継」のキャスターから競馬関係のキャリアをスタート。
現在は各種媒体に原稿を寄稿し、競馬関係のメディアにも出演。
JRA、青森、九州のセリ市場の司会進行役も担当している。
ときどきグリーンチャンネルの番組「競馬ワンダラー」で、ワゴン車の運転手として全国を放浪。
各地の地方競馬場には1~2年に一度以上は訪問している。