2026 Dirt Triple Crown
2025.12.4 大井 1,200mジェムストーン賞(SIII)【1,2着馬】ニューイヤーカップ 出走権付与

2024年優勝馬 プリムスパールス号
2歳・3歳短距離重賞

ジェムストーン賞とは
2024年に新設された「ジェムストーン賞(SIII)」。
前年の2023年までは準重賞として実施されていた大井1,200m戦が重賞に昇格した形だ。
2023年までの6ハロン重賞は「ゴールドジュニア(SIII)」が担っていたが、
2024年からゴールドジュニアは1,400m戦での実施となった。
ジェムストーン賞は、これと入れ替わるように重賞に昇格、
開催時期が12月となることから「2歳スプリント王」を決する意味合いもあるだろう。
ジェムストーン賞のあとは「ニューイヤーカップ(SIII)」「ネクストスター東日本(SIII)」「兵庫チャンピオンシップ(園田・JpnII)」と
続くスプリント路線。
スプリント界の頂点を狙う若きスプリンターたちの戦いに是非ご注目頂きたい。
予想<ケイシュウNEWS・海野秀徳>
ダート体系の整備により各地で将来のスプリンターが集うネクストスター競走が新設。
南関東では2歳ネクストスター競走こそないものの、このジェムストーン賞がその役割を担っているといっても過言ではない。
将来のトップスプリンター候補16頭が初冬の大井で火花を散らす。
◎12.ワナハヴファン
ホッカイドウ競馬の1,100mの新馬戦を3馬身差で逃げ切って勝利。
勝ち時計1分8秒0は良馬場で行われた同距離の新馬戦としては今年3番目に早い時計だった。
(最速はエーデルワイス賞勝ちのリュウノフライトなどが記録した1分7秒9)
その後は勝ち切れなかったが、大井(小林分厩舎)・荒山厩舎へ移籍して素質が開花。
移籍緒戦となった前走のひばり特別では2番手追走から軽く促しただけでグングンと差を広げて終わってみれば6馬身差の圧勝。
ノーステッキで1分12秒8を記録する衝撃的な走りだった。
逃げ差し自在に立ち回れる競馬巧者だけにメンバー強化の今回も勝ち負けになる公算が高い。
血統面も魅力があり、父モーニンは主にダートのスプリント~マイル路線で活躍し、
フェブラリーステークスやコリアスプリントも勝利。
産駒は地方競馬で活躍馬が多く、今年も2歳リーディングサイアーでトップを走っている(11月30日時点)。
今開催も初日に2レース組まれていた新馬戦に5頭の産駒が出走して1勝2着2回と今の大井ダート相性も抜群。
米国で育まれた伝統的な母系で、一族には米ケンタッキーダービーを制したファーディナンドなどがいる。
本馬の兄姉を含め近親は1,400m以上で結果を残す傾向にあるが、同父を迎えることによってCaroの5×4クロスが発生。
これによってスピードが優勢なタイプになっていると考えられる。
パワーとスピードを両立した血統背景だけに、大井1,200mは絶好の舞台。
強敵は揃っているが、外目からスンナリ先行できれば勝ち負けになるとみた。
〇15.ハンデンドレイク
所属はワナハヴファンと同じく荒山厩舎で、
デビューから2連勝と地元1,200mでは抜群の安定感を見せているこの馬が逆転の筆頭候補。
デビュー2戦目のニューホープ特別(2歳一・二組)では1分12秒8の好時計を記録して5馬身差で快勝、
前走鎌倉記念は初の1,600mや初遠征など諸々の条件をクリアしてベストグリーンの2着に好走。
これまでの戦歴、素質ともに◎と遜色ないレベルといえる。
京都4歳特別(GIII・芝2,000m)を勝利した曾祖母ケイウーマンから続く母系で、中距離で活躍する近親は多いが、
叔母シャドウダッチェスは新潟ダート1,200mで勝利を挙げるなど幅広い距離に対応できる下地があるのは魅力。
また、安田記念を制した父モズアスコット産駒は南関東競馬との相性が抜群にいい。
産駒デビューとなった24年シーズン(現3歳世代)には鎌倉記念馬ベアバッキューンを、
現2歳世代からも平和賞を勝ったスマトラフレイバーなど重賞馬も多数輩出している。
スプリントからマイルまで対応できる素質はこのメンバーの中でも上位レベルなだけに、この馬がアッサリ勝ち切る可能性も十分。
外枠をこなせれば一気に主役の座へ名乗りを上げそうだ。
▲13.ドキドキ
能力試験で50秒3を記録し注目されたデビュー戦は不良馬場で砂を被り、気難しさが顔を覗かせて大敗。
その後は先行タイプにモデルチェンジ。
1,200m3戦2勝2着1回、1,400mの重賞・ゴールドジュニアでもチリンドリベントに終始マークされる厳しい展開の中、
最後まで粘り通して勝ち馬ゴーバディから0.2秒差の2着と外コースの短距離戦では抜群の安定感を見せている。
前走ハイセイコー記念では早々に失速したが、強敵相手に見せたスピードはスプリンターとしての素質を改めて感じさせた。
祖母レディルージュはダート1,000mで新馬勝ちを飾り、芝のスプリント重賞でも度々上位を賑わせたスピード馬。
伯父ロードラズライトもJRAで1,200m3勝(芝1勝・ダート2勝)を挙げているように、母系はスピード優勢のタイプ。
父にモーニンを迎えたことによって本馬はかなりスピード優勢なタイプになっている。
今回は同型馬も多いだけにスピードがカギになりそうなレース。
短距離の持久力に関しては前述のゴールドジュニアで証明済みだけに、積極的にハナを叩けば粘り込む可能性も十分。
適距離に戻ったと考えれば見直していいだろう。
△4.ベイビークエスト
新馬戦こそ2着惜敗も、続く一組挑戦の2戦目はゴールドジュニア勝ちのゴーバディにマークされる厳しい展開を粘れずブービー。
休養を挟んだ前走はプラス21キロと馬体が大幅にボリュームアップ。
レースも2番手追走から抜け出す王道の競馬で7馬身差の圧勝劇を披露した。
勝ち時計こそ1分14秒2と目立たないが、終いは流したためで手応え自体は抜群。追えば更に時計を短縮していたことは明白。
一気の相手強化となるが、好枠を生かせれば一気に浮上してくる存在。
伯父に武蔵野ステークス(GIII、東京ダート1,600m)を勝利したナムラタイタン、
近親にJBCスプリントを含む重賞6勝のスターリングローズがいるようにマイル以下の活躍馬が目立つ母系。
父フィレンツェファイアも米国でマイル以下の重賞を9勝とダートのスピードに特化している配合。
ネクストスター金沢で3着となったケーズコマクサを輩出しており、日本の砂との相性も良好。
叩いた良化も見込める今回は引き続きマークが必要な伏兵候補だ。
△14.プレストエンペラー
記念すべき重賞格上げの昨年に勝利したのは船橋所属のプリムスパールス。
今年の船橋所属馬はこの馬に注目。ここまで1,200mでデビュー2連勝。
前走は実力馬ヤギリアイビスを差し切って勝利するなどメンバー随一の末脚の持ち主で実力は有力馬と遜色ない。
祖母ヒシナイルはフェアリーステークス(GIII・中山芝1,200m)勝ち、
近親にはスプリンターズステークスを勝ったスリープレスナイトがいる母系。
そこへ香港スプリントを制したダノンスマッシュを父に迎えて超が付くほどのスプリント配合が完成。
末脚を持続できる能力も高く、前が流れる展開になればこの馬が大外一気を決めるシーンまで考えられる。
△11.ミライヘノヒーロー
ホッカイドウ競馬でのアタックチャレンジ勝ちを含めてここまで1,400m以下で3勝。
前走は内ラチ沿いを通ってスルスル伸びて来る競馬を披露。
時計は平凡だが、相手なりに走れるタイプでメンバー強化にも対応してきた点は評価できる。
レース経験豊富な点も有利に働くはずで初の一線級との対戦でも侮れない存在だ。
祖母クィーンロマンスは中山ダート1,200mの新馬戦を勝ち、笠松移籍後には重賞2勝と活躍。
早期から短い距離をこなせる母系だし、ダート適性も高い。
父イスラボニータはダート短距離馬バトルクライ(オープン3勝)を輩出しており、ダートスプリント適性の高い配合。
大舞台に強い配合で一発の魅力は十分。
△16.ナギサノルナ
祖母は米ダート1,800m(9F)GII・デムワーゼルSを制したトゥーアイテムリミット。
父に菊花賞キセキを迎えたものの、
母方フォーティナイナー譲りのスピードが優勢なタイプでここまで1,400m以下を走って4戦2勝2着2回と連対パーフェクト。
前走は1,200mで後続に5馬身差を付けて逃げ切り勝ちとスプリンターとしての資質は十分。
鞍上も魅力的なだけにおさえに必要だ。
データ分析
参考レース
-
- 8/20
- 浦和
- 1,400m
- ルーキーズサマーカップ(SIII)
- ロードレイジング
-
- 9/4
- 大井
- 1,400m
- ゴールドジュニア(SIII)
- ゴーバディ
-
- 10/15
- 川崎
- 1,600m
- 鎌倉記念(SII)
- ベストグリーン
-
- 11/5
- 船橋
- 1,600m
- 平和賞(SII)
- スマトラフレイバー
-
- 11/12
- 大井
- 1,600m
- ハイセイコー記念(SI)
- ゼーロス
レース後分析<ケイシュウNEWS・取材部>
★当日の馬場状態・馬場傾向
逃げた馬は2勝、2着3回、外2・3番手で運んだ馬が6勝、2着2回。
内外に偏りは見られず、前有利な馬場傾向。差し勢は2・3着に食い込む程度だった。
※左回りのレースを除く
★地元トラックマンによる舞台ジャッジ
大井1,200mは2コーナー付近からの発走でワンターン。
外回りコースを使用し、直線は386m。
フルゲート16頭で行われることもあるため、逃げたい馬が大外枠に入ると前半で脚を使わされるケースが多い。
逆に内枠で後手に回ると包まれるリスクもある。
基本的には先行有利だが、当然ペースアップした際は末脚を生かすタイプの台頭も考えられる。
キャリアの浅い2歳馬たちにとっては枠順もポイントになる。
★レース回顧
ゴールドカグヤヒメの枠入りに時間を要して、ほとんどの馬がゲート内で待たされる。
レースは内枠からズルタナイトの逃げ。2ハロン目が10秒8とラップが上がって前半34秒7のハイペース。
ベイビークエストが2番手につけてハンデンドレイクは外枠から3コーナーではインの3番手に潜り込む。
人気のワナハヴファンはスタートで躓いて想定よりも後ろからの競馬。
4コーナーでベイビークエストが後続を突き離し、
ハンデンドレイクの笹川騎手は相手は前の1頭という雰囲気だったが、追ってから思ったほど弾けず3着。
逆に前半から後方で運んでいたデンテブリランテが、直線鋭く伸びて2着。
勝ったのは4コーナー先頭からそのまま押し切ったベイビークエスト。
管理する田中正人調教師は今年7月に岩手で重賞を勝っていたが、南関東では嬉しい重賞初勝利となった。
★各馬の評価・次走狙い馬
1着ベイビークエスト【成長顕著】
8月14日のレース後に放牧に出したことで前走時(2歳(三)(四))は21キロの馬体増。
ただし、馬体に重目感はなかったし、今回もパドックでは落ち着いて周回していて気配は良かった。
レースはスムーズに2番手を奪って4コーナー先頭から押し切り。
重賞挑戦で一気の相手強化だったが、ハイペースに動じることなく押し切った。
『休養で約20キロ馬体が増えていい方に変わってくれました。
結果は出せなかったけど、2戦目にハイペースで逃げた時にスピードがあることは確認できていましたが、
御神本騎手が本当にうまく乗ってくれました。出走できたことも含めて運を味方につけられたと思います。
ベイビークエストはこれからも成長してきそうな感触がありますし、テンのスピードは1,000mでもと思うくらい。
今後が楽しみです。次走はひと息入れて、来年3月のネクストスター東日本を予定しています』と田中正人調教師。
予備登録の発表時点では出走が確約されていた訳ではなく、回避馬が出たことで出走に至った経緯。
運も味方につけたし、初コンビの御神本騎手のエスコートもさすが。
レース後の場内インタビュー内でも
『勝負処は後続を引きつけるより、そのままスピードに乗せていった方がいいと思って促していった』とコメント。
パドックで初めて跨ってから、返し馬の雰囲気で馬の特性を把握して結果に結びつけた好騎乗と言える。
2着デンテブリランテ【新味発揮】
パドックでは冬毛が目につき、見た目に強調できる感じではなかったが、レースでは後方から末脚勝負で2着。
ここまで1,400mで2勝しており、距離も1,700mまで経験。距離への対応がカギとみていたが、
振り返れば兄ヒロシゲゴールドはダートグレードの北海道スプリントカップを勝っているダート短距離のオープン馬。
後方から37秒1の上がりを繰り出して新たな一面を見せたレースだった。
『特にプランはなく、周りが速くて進みも悪くてあの位置取りになりましたが、
脚を溜めていけばキレるなと思いました。割と競馬は上手かもしれませんね。
1,200mだと少しスピード負けする印象ですが、今の身体つきだと距離を延ばさなくてもいいかなと感じます。
操作性は凄く良かったです。成長すれば今後もっと良くなってくると思います』と騎乗した藤田凌騎手。
今後の選択肢が広がったのは確か。
次にどの舞台を選択してくるかで今後の陣営の展望が見えてきそうだが、
この走りなら短距離路線でもう一度同じ脚を使えるのか見てみたいと感じた。
3着ハンデンドレイク【見限れない】
デビューからの2戦はパドックで馬っ気を出してイレ込んでいたが、前走の鎌倉記念では落ち着いて周回。
今回もパドックでは落ち着いた姿。馬場に出てから気合が乗っていたが、気性面の成長は見込めた。
レースは外枠から先行策。
3コーナー手前でラチ沿いに潜り込んで盤石の態勢に見えたが、いざ追い出してからジリジリ。
ベイビークエストを交わせず、デンテブリランテに差されてしまい3着。
56キロの斤量でレースを走ったのは初で多少なりとも影響があったか…。
『4コーナーの手応えも良く、笹川騎手も勝ちを意識していたようだけど、追ってから思ったほど伸びなかった。
レースが終わってみて思うことは、デビューから徐々に負担重量が増えて今回は56キロ。
他馬と斤量差もあったので、そのあたりが響いたのかもしれない。川崎で左回りや距離は問題なかったので、
次走は年明けに浦和で行われるニューイヤーカップに向けて調整を進めていきたい』と荒山調教師。
コメントにある通り、初めて背負った56キロの影響が出てしまった可能性はある。
鎌倉記念の内容が良く、南関東馬同士のニューイヤーカップでの巻き返しに注意が必要だ。
4着ワナハヴファン【次走狙い目】
パドックでは2人引きでパシュファイヤー着用。気合乗り良く勝った前走と遜色ない気配。
レースはスタートで躓いてしまい中団からの競馬。
転入緒戦は好位抜け出しで楽勝を決めていただけにこれは誤算だったはず。
4着まで押し上げて力は示したが、悔いも残る一戦。
『ゲート内で待たされてしまったことで、ゲート内でうるさくなってしまい2回立ち上がってしまうシーンがあった。
本田騎手も「ゲートで待たされて、立ちあがる仕草も見せた上、ゲートで躓いてバランスを崩してしまった」と話をしていた。
担当者も本田騎手と同じことを話していたのに加えて、「立ち上がった後に馬の目つきが落ち着いた感じになってしまった」と
話していたので結果として悪い方に変わってしまったのだと思う。それでも差す形で脚を使って力は見せてくれた。
今後はひと息入れて立て直したい』と荒山調教師。
普段の取材から距離を延ばしても対応できそうという話は耳に入っており、
復帰の舞台がどこになるかは未定だが、復帰戦から積極的に狙っていきたい1頭だ。
5着ブラックエックス【地元で巻き返す】
初コースだったが、落ち着いて周回。
前走で増えた体から更に馬体増だったが、迫力ある体つき。気配の良さが目についた。
レースは出遅れて後方からの競馬。
インコースでロスなく立ち回ったが、4コーナー手前と最後の直線で馬込みをスムーズに捌けなかった印象。
それでも最後は5着まで押し上げて力を見せた。
『ゲートで待たされ、馬が気を抜いた時にスタートを切られてしまった。
出遅れたし、右前の落鉄もあってとにかくあそこが不運だったね。
道中も内で包まれ、外へ出そうとしても行き場がないといった苦しい展開。そんな中での5着だから力は示したと思う。
今後はニューイヤーカップを目指すけど、地元の1,400m、1,500mの方が行きっぷりが断然違う。
平和賞馬の産駒でも姉たちは短距離志向。
現段階では適性に関して何とも言えないけど、クラシックを目指して高いモチベーションの下で仕上げてきていることは確か。
能力の高さで、一歩ずつハードルを乗り越えて行って欲しい』と担当する渡会厩務員。
落鉄やスムーズに捌けなかったと敗因は明らか。
馬っぷりの良さが目につくだけに走り慣れた地元に戻る次回は巻き返しに注意が必要だ。
6着ゴールドカグヤヒメ【期待繋ぐ】
前走からプラス4キロだったが、見た目の印象は2連勝時と遜色なかった。
枠入りに時間を要してしまったが、レースは五分の発馬から好位集団の後ろを追走。
直線で進路ができてから思ったほど伸びなかったが、自己ベストに近い時計では走れていた。
『砂を被らず単調な競馬で勝っていたので、馬群に入れて器用な競馬ができたのは収穫でした。
年末の東京2歳優駿牝馬を見据えて、そこまで前目に行かせたくなかったので、あの位置取りとなりました。
レースを使っていくうちにテンションが高くなっていて、ゲート入りを嫌がったのは初めてです。
ゲートから出れば素直で良い仔なので1,600mでも大丈夫そうです』と騎乗した鷹見陸騎手。
今回は牡馬混合の重賞。一気に距離は延びるが、年末は牝馬同士の争い。
鷹見騎手からは距離に関してポジティブなコメントがあり、距離さえ克服できれば上位進出の可能性もありそうだ。
レース回顧
レース概要
| 実施日 | 12/4(木) |
| 競馬場 | 大井競馬場 |
| 距離 | 1,200m |
| 出走条件 | サラ系2歳 |
| 負担重量 | 牡馬55kg 牝馬54kg |
| 優先出走権 | 1,2着馬に「ニューイヤーカップ(SIII)」の優先出走権付与 |


